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相続税の納税資金が足りない時の対処法【物納編】

私が執筆しました

小林義崇

1981年、福岡県生まれ。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、自身のYouTubeチャンネルでお金に関する発信を行っている。
【著書】
すみません、金利ってなんですか?
「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」

 

納税は、「金銭納付」が原則ですが、相続税の場合、例外的に土地などの財産を納める「物納」が認められています。今回は、たとえば遺産のほとんどが土地で、納税資金を用意できないようなケースで利用できる「物納」の仕組みや手続きについて解説します。

物納を申請できる条件

「物納」とは、その名のとおり、物で納税する方法です。所得税や法人税などは納税する際には金銭納付以外は認められていないのですが、相続税の場合は「財産に対して課される税」という性格から、物納が認められているのです。

ただし、誰でも物納を利用できるわけではなく、主に以下のとおり条件が定められています。

  1. 延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲であること
  2. 物納申請財産は、納付すべき相続税の計算の基礎となった相続財産であること
  3. 次に掲げる財産および順位であり、その所在が日本国内にあること
  4. 第1順位 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
    第2順位 非上場株式等
    第3順位 動産

  5. 物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと
  6.  ⇒こちらの要件の詳細は、国税庁ホームページ(こちらの3)を参照ください。

  7. 物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。
上記の条件1にあるとおり、まずは延納制度を利用して、それでも納税できないときに物納を利用できることに注意が必要です。延納については、下記の記事をご参照ください。

相続税の納税資金が足りない時の対処法【延納編】 相続税の納税資金が足りない時の対処法【延納編】

物納申請の手続き

物納申請をする際には。上記の条件5にあるとおり、物納申請書等の必要書類を期限までに税務署に提出することが必要です。ただし、提出期限までに書類の準備が整わない場合には、その期限までに「物納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出することにより、最長で3ヶ月間提出を待ってもらうこともできます。

この申請を行う際には、税額のうちのいくらを物納の対象とし、そのためにどういった財産を提供するのかを選定します。ここで提供する財産は、相続税の計算に基づいて査定されるため、たとえば相続税の計算上、1億円と評価された土地を物納するのであれば、基本的には1億円の納税に値すると見ることができます。

このとき、原則として、「提供する財産は、物納の対象とする税額の範囲内に収める」必要があるため、その差額については、別途金銭納付する必要があることに注意しましょう。

必要な書面を揃えて申請を行うと、物納申請期限から通常は3ヶ月以内に許可または却下の通知がなされます。この、申請から通知までの間に行われるのが、税務職員による現地調査などです。

そのため、物納許可が出される場合であっても、税務署の調査によって土地汚染が判明すれば「汚染物質の除去を条件に物納許可する」といった許可になる可能性もあります。この場合、税務署から指定された期日(5年以内)までに条件を履行できなければ、物納許可は取り消され、金銭納付を求められる事態にもなり得るため注意が必要です。

物納が却下された場合

物納申請が却下された場合は、その理由に応じてその後の対応が変わってきます。たとえば、「金銭納付困難理由がない」というもの。これは、納税をする人に定期収入があるといったケースです。

こうした場合、物納却下の日から20日以内に延納申請をして、分割納付をしていくことができます。さきほど、「延納制度を利用して、それでも納税できない場合に物納を利用できる」と説明しましたが、納税者が物納申請をしたとしても、延納を利用できると税務署が判断すれば、物納は却下して延納申請をさせるということになるのです。

この延納に切り替える措置は、ある意味で救済措置と考えられますが、こうしたケースに該当しなかったり、延納申請できるにもかかわらずしなかったりした場合、即座に金銭納付を求められてしまいます。このときには、本来の相続税額に加え、以下の税額が附帯税として加算されることを認識しておきましょう。

  1. 納期限の翌日から却下の日までの期間の利子税
  2. 却下の日の翌日から完納の日までの期間の延滞税

これらの附帯税は、日を経るごとに増していくものであり、長年にわたり放置していると、本来の税額を超えるような金額になる可能性もあります。こうした事態にならないように、相続税に関しては、申告だけでなく、あらかじめ納税まで見据えた準備が必要です。

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