お葬式の受付を突然頼まれて、戸惑ったことはありませんか?受付は葬儀においてとても大切な役割ですが、具体的な仕事内容やマナーについて事前に学ぶ機会はあまりありません。
この記事では、事前の準備から当日の流れ、受付として守るべきマナーまでわかりやすく解説します。また、親族として受付をする場合と会社関係者として対応する場合の違いについても紹介しています。
お葬式の受付係とは
お葬式の受付係は、葬儀を円滑に進めるための重要な役割です。参列者を迎え、香典を預かり、芳名帳への記帳を案内するなど、遺族に代わって様々な対応をします。
ここでは受付係の基本的な役割や選ばれ方、葬儀の規模による違いなど、受付業務の全体像について説明します。
受付係の基本的な役割
葬儀の受付係は、遺族が葬儀に専念できるよう、参列者への対応を引き受ける大切な存在です。主な仕事は参列者の受け入れ、香典の管理、芳名帳への記帳案内、返礼品の手渡しなどです。遺族の代理として、葬儀の入り口で重要な役割を担います。
受付係に選ばれるということは、喪主や遺族から信頼されている証拠でもあります。香典という貴重品を扱い、参列者の情報を正確に記録する責任があるため、信頼できる人が選ばれます。
受付係の選出方法
葬儀の受付係は、喪主や遺族が2〜3名ほど選んで依頼します。一般的に故人の近親者は避け、以下のような人が候補になります。
- 遠い親戚
- 故人の友人
- 会社の人
- 近所の人
複数名で担当する場合は、それぞれが役割分担をして協力しながら進めます。一人が香典を受け取り、もう一人が記帳を案内するなど、スムーズな流れを作ることが大切です。
葬儀規模による違い
葬儀の規模によって、受付係の人数や役割分担が変わります。
葬儀の種類 | 受付係の人数 | 役割分担 |
---|---|---|
一般葬 | 3〜4名 | 記帳係・香典係・会葬品係などを分担 |
家族葬 | 1〜2名 | すべての業務を兼任、または受付なし |
社葬・大規模葬 | 5名以上 | 受付・記帳・香典・会葬品・荷物預かりなどを分担 |
小さな葬儀では受付を置かないこともあり、大きな葬儀では役割を細かく分けて効率的に進めます。
受付業務の重要性
受付は葬儀の顔となる場所です。参列者が最初に接するのが受付係であり、その対応が葬儀全体の印象を左右することもあります。また、香典の管理や参列者情報の記録は、後日の香典返しや喪中欠礼の際に必要となる重要な業務です。
葬儀はやり直しができない一度きりの儀式です。受付係として選ばれたら、その責任を理解し、故人を偲ぶ場にふさわしい対応を心がけることが大切です。
受付係の基本的な仕事と心がけ
受付係として何をすればいいのかを事前に知っておくと、当日スムーズに対応できます。受付の仕事は香典を受け取るだけでなく、参列者を案内したり香典を管理したりと幅広いものです。
ここでは受付係の具体的な役割と、それぞれの責任について説明します。
参列者の受け入れと挨拶対応
受付係の最初の仕事は、参列者を丁寧に迎えることです。基本の挨拶から始めて、状況に応じて言葉を変えます。
「本日はお忙しい中をお越しいただきまして、誠にありがとうございます」
「お足元の悪い中をお越しいただきまして、誠にありがとうございます」
「この度はお悔やみ申し上げます」
遺族の代わりとして、穏やかで落ち着いた話し方をすることが大切です。声の大きさやトーンも、葬儀の場にふさわしいものにします。
香典の受け取りと安全な管理
香典を受け取ることは受付係の重要な仕事です。「お預かりいたします」と言いながら両手で受け取って、お辞儀をします。
香典は大切なお金なので、盗難を防ぐためにしっかり管理する必要があります。受付の台の上に置きっぱなしにせず、受け取ったらすぐに会計の担当者に渡します。受付係が何人かいる場合は、香典をどのように受け渡すか前もって確認しておきましょう。
また、香典についての基礎知識をチェックしておくと、当日よりスムーズに受付対応ができます。
【2025年版】知っておきたい!香典の金額(相場)・入れ方・渡し方・香典袋の書き方・包み方
芳名帳への記帳を案内する
芳名帳に記入してもらうことも大切な仕事です。「こちらにご記帳いただけますでしょうか」と案内して、書くのに困っている人には丁寧に説明します。
- 氏名が読みやすく書かれているか
- 住所が省略されていないか
- 会社名や肩書きが必要な場合は記入されているか
この情報は後で香典返しを送るときや喪中はがきを出すときに使うので、正確に書いてもらうことが大切です。
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返礼品の手渡しと在庫管理
記帳と香典の受け取りが終わったら、返礼品を渡します。会葬御礼や香典返しなど、葬儀の形によって渡すものが違うので、前もって確認しておきます。
返礼品の数を管理することも受付係の仕事で、足りなくなりそうなときは早めに葬儀社のスタッフに連絡します。引換券を使う場合は、券の渡し方と引き換え場所を正しく案内します。
「遺族の負担を減らして、故人を偲ぶのにふさわしい雰囲気を作る」という目的があることを忘れてはいけません。この気持ちを持っていれば、自然と良い対応ができるようになります。
当日の基本的な流れと対応方法
受付の仕事は、準備から片付けまで、時間の流れに沿って進めていきます。初めて受付をする人は、いつ何をすればいいのか具体的に知っておくと安心です。
ここでは葬儀場に到着してから受付が終わるまでの詳しい流れを、実際の場面を想定しながら説明します。
会場到着後の準備
会場や葬儀の規模によって異なりますが、受付係は基本的に葬儀が始まる1時間前には会場に着いて、準備を始めることが多いです。早めに到着することで、余裕を持って準備することができます。葬儀社のスタッフの指示に従って準備を進めましょう。
スムーズな受付対応には、信頼できる葬儀社との連携も欠かせません。葬儀社選びで失敗しないためのポイントはこちらで解説しています。
葬儀で後悔しないために知っておきたい!信頼できる葬儀社の見分け方
参列者が来たときの基本の流れ
参列者が来たら、決まった順番で対応します。この流れを守ることで、ミスなくスムーズに進められます。
手順 | 対応内容 | ポイント |
---|---|---|
①挨拶 | 丁寧な挨拶で迎える | 状況に応じた言葉を選ぶ |
②記帳 | 芳名カード受取または記帳案内 | 記入漏れがないか確認 |
③香典受領 | 「お預かりいたします」と両手で受取 | 一礼を忘れずに |
④返礼品 | 会葬御礼などを手渡す | 両手で丁寧に |
⑤案内 | 「こちらからどうぞ」と会場案内 | 分かりやすく説明 |
⑥香典管理 | 会計係に速やかに引き渡す | 放置しない |
この流れを一人ひとりに対して丁寧に行うことが、良い受付の基本です。
イレギュラーな状況への対応方法
普通の流れとは違うことにも対応する必要があります。
こうした場面では、相手の立場になって思いやりのある対応をします。困ったときは他の受付係や葬儀社のスタッフに相談することも大切です。
受付終了から後片付けまで
葬儀の進行に合わせて受付の仕事は終わりますが、その後も大切な作業があります。残った返礼品の整理や芳名帳の最終確認のほか、会計の人に香典を渡したり、受付の道具を片付けたりします。
葬儀が終わった後で遺族から受付の仕事についてお礼を言われることも多いので、最後まできちんと対応します。受付係自身が焼香をする場合は、良いタイミングを見はからって行います。
そんなときでも基本的な流れと心の準備ができていれば、落ち着いて対応することができます。困ったときは無理をせず、まわりの受付係や葬儀社のスタッフに相談しましょう。
親族か外部関係者か|立場ごとの受付マナー
受付係をする立場によって、気をつけるべきマナーや言葉遣いが変わります。故人の親族として受付をする場合と会社関係者や友人として受付をする場合では、ふるまい方に違いがあります。
ここでは、それぞれの立場での基本的なマナーと、受付係として共通して意識すべきポイントをわかりやすく解説します。
親族として受付を行う場合
親族が受付をする際は、悲しみの中での対応となりますが感謝の気持ちを忘れず、落ち着いた態度が大切です。
「ご丁寧にお悔やみをいただき、ありがとうございます」
「頂戴いたします」または「お預かりします」
「心ばかりの品ですが、お納めください」
感情がこみ上げてしまうこともあるかもしれませんが、そんなときは無理をせず、他の受付係にフォローをお願いするのも一つの方法です。
また最近では、準備や受付の負担をできるだけ軽くしたいというご遺族の声から、シンプルでサポートが充実した葬儀プランを選ぶ方も増えています。
たとえば大手葬儀社の「小さなお葬式」では、専任スタッフが当日の進行や受付のサポートまで対応してくれるため、親族として受付を担当する方の負担も大幅に軽減されます。葬儀に集中できる環境を整えるためにも、こうしたサービスの利用を検討してみるのもおすすめです。
仕事関係者・友人として受付を行う場合
親族以外の人が受付をする場合は、遺族の代理という立場を意識することが大切です。
必ず「お預かりします」(「頂戴します」は使わない)
「申し伝えます」「確認いたします」
「控室にいらっしゃいます」
これらの言葉遣いで、自分が代理であることを明確にします。遺族の気持ちを代弁するのではなく、あくまで伝達役として対応します。
受付係としての服装と身だしなみ
受付係の服装は、参列者と同じ喪服を着ます。
性別 | 服装 | 注意点 |
---|---|---|
男性 | 黒のスーツ、白シャツ、黒ネクタイ | 光沢のあるネクタイやアクセサリーは避ける |
女性 | 黒のワンピースやスーツ、アンサンブル | 肌の露出を控え、派手な装飾は避ける |
共通 | シンプルな時計、控えめな髪型 | アクセサリーは最小限に |
華美な装いは避け、控えめで清潔感のある服装を心がけましょう。
丁寧な所作とふるまい方の基本
受付係は丁寧な言葉遣いを心がけて、早口にならないようにゆっくり話します。また、次の点を意識するだけで、受付としてふさわしい落ち着いた対応ができます。
- 香典は必ず両手で受け取る
- 受け取った後はゆっくりお辞儀
- 返礼品も両手で丁寧に渡す
- 立ち姿勢は背筋を伸ばす
- 座るときも背もたれにもたれない
- 私語は控え、連絡は小声で必要最低限に
これらの基本を守ることで、品格のある受付係として信頼されます。
完璧にしようと気負わず誠実な気持ちで対応すれば、参列者にも遺族にも喜ばれる受付係になれます。
事前準備のチェックリスト
受付の仕事をうまくするには、当日の流れを知るだけでなく、事前の準備がとても大切です。必要な道具の確認から会場の下見、他の受付係との打ち合わせまで、準備することはたくさんあります。
ここでは受付を頼まれてから当日までにやっておきたい準備を、チェックリスト形式でまとめました。しっかり準備しておけば、当日は落ち着いて受付の仕事に集中できます。
受付を頼まれたときに確認すべきこと
受付を頼まれたら、まず基本的な情報を確認します。
わからないことはそのままにせず、遠慮せずに質問しておきましょう。必要な情報はメモしておくと安心です。
受付に必要な道具と備品のチェック
受付に必要な道具は通常は葬儀社が用意しています。受付の開始前に確認して、不備がないかチェックしておきましょう。
用具 | 確認するポイント |
---|---|
芳名帳 | 予備はあるか |
筆記具 | 黒のボールペンや筆ペンが十分にあるか |
香典受け | 香典を置くスペースが足りているか |
返礼品 | 数が足りているか、種類を確認 |
受付看板 | 設置場所や見えやすさを確認 |
そのほかにも、予備の筆記具・きれいなハンカチ・のど飴・メモ帳などを個人的に用意しておくと便利です。
会場の下見と確認ポイント
できれば事前に会場へ足を運び、どこに何があるかを確認しておくと当日に落ち着いて案内ができます。
- 受付の設置場所
- トイレの位置(男女別)
- 待合室・控室の場所
- 式場への入口
- 駐車場の有無と台数制限
- 喫煙所や自動販売機の場所
- 最寄り駅やバス停などの交通手段
これらの情報は当日参列者を案内するときに必要になります。実際に歩いて確認することで、自信を持って案内できるようになります。
他の受付係・関係者との打ち合わせ
受付係が何人かいる場合は、前もって会って役割分担を決めます。
- 誰が何の担当をするか(記帳係・香典係など)
- 集合時間と場所
- 連絡手段(携帯・LINEなど)
- 着替え場所や控室の確認
- 休憩・食事のタイミング
- 受付終了後の流れ(焼香に行く順番など)
また、葬儀社の担当者の連絡先も交換しておくと、当日の連携がスムーズになります。
しっかり準備ができていれば、多少のトラブルがあっても落ち着いて対応できます。チェックリストを活用して一つずつ準備を進めましょう。
遺族を支えた経験は大きな力に
受付係の仕事は葬儀当日で一区切りとなりますが、この経験で得たことはきっとこれからの人生でも役立ちます。突然の依頼に戸惑いながらも無事に務めを果たせたことは、大きな自信と成長につながるはずです。
落ち着いた対応は事前の準備から生まれます。この記事を参考に、どうか自信をもって当日を迎えてください。