この記事では、香典の金額相場や香典の入れ方、香典の渡し方といった基本マナーから、香典袋の書き方・包み方まで、一般の参列者が知っておきたいポイントを分かりやすく説明します。香典にまつわる最新マナーやトレンドも交えながら解説いたしますので、初めての方でも安心して準備できます。ぜひ参考にして、失礼のないよう香典をお渡ししましょう。
目次
そもそも香典って何?
香典とは
まず「香典」とは何かを確認しましょう。香典とは、故人への供養の気持ちとしてお葬式やお通夜の際にお渡しする現金のことです。もともとはお通夜や葬儀・告別式で参列者が故人に対してお線香や香木、抹香などの供え物をしていましたが、現代ではそれが現金を包んだ香典に置き換わっています。そのため香典は、不祝儀用の水引を結んだ不祝儀袋(香典袋)に現金を包んで用意します。
相互扶助の意味合いもある
香典には、遺族の葬儀費用を助ける相互扶助の精神という意味合いがあります。人の死は突然訪れることが多く、葬儀には思いのほか費用がかかるものです。香典は参列者同士でお金を出し合い遺族を金銭面で支えるという、日本の伝統的な助け合いの習慣なのです。
香典の金額(相場)~いくら包めばいいのか?
香典の相場は故人との関係性などによって変わりますが、一般的な目安があります。香典はいくら包むべきか悩むところですよね。以下で詳しく見ていきましょう。
香典の金額相場の目安
香典の適切な金額は、故人との関係や地域・年齢によって異なります。一般的には「故人が親族の場合は1万円以上、親族ではない場合は5千円程度」がひとつの目安です。親兄弟など特に近い間柄であれば、より多く包む傾向もあります。
逆に、3千円以下の少額を包むのは避けましょう。気持ちだけでも…と少額にすると、通夜振る舞いや香典返しの費用で遺族が赤字になってしまい、かえって負担をかけてしまう可能性があるためです。
ただし上記はあくまで一般論です。実際には地域の習慣や付き合いの深さ、自分の年代などでも適切な金額は変わってきます。不安な場合は、周囲の経験者や親族に相談して決めると良いでしょう。
✔香典金額のポイント(相場まとめ)
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親戚の香典相場:1万円以上が一般的。近い親族ほど高額になる傾向。
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親族以外(友人・知人など)の香典相場:5千円程度が一般的。
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少なすぎる金額はNG:3千円以下の香典は避けるのが無難。
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状況に応じて柔軟に:自分の年齢・地域・関係性によって適宜調整する。迷ったら身近な人に相談を。
アンケート調査による香典の相場
具体的な金額感をつかむために、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会のアンケート調査結果も参考にしてみましょう。葬儀に関するアンケートでは平均額が高めに出やすいため、最も多かった回答額(最多回答額)を基準にするのがおすすめです。以下は故人との関係別に見た香典額の目安です。
故人との関係 | 最多回答額 | 平均額 |
---|---|---|
祖父母 | 5,000円 | 14,942円 |
親(実親、義理の親) | 100,000円 | 59,711円 |
兄弟姉妹 | 50,000円 | 45,542円 |
おじ・おば | 10,000円 | 18,285円 |
上記以外の親戚 | 10,000円 | 17,000円 |
職場関係 | 5,000円 | 6,204円 |
勤務先社員の家族 | 5,000円 | 5,336円 |
取引先関係 | 10,000円 | 7,915円 |
友人・その家族 | 5,000円 | 6,649円 |
隣人・近所 | 5,000円 | 6,285円 |
その他 | 5,000円 | 7,814円 |
出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会 香典に関するアンケート調査(令和3年度)[1]
このデータからも、「親族は1万円以上、友人知人は5千円程度」がひとつの基準になっていることが分かります。また、親への香典(※自分が喪主を務める場合は本来香典は出しませんが、例えば親戚として参列する場合など)は特に高額になりやすいことも読み取れます。
香典袋について
香典を用意するときは、中身の現金だけでなく包む香典袋(不祝儀袋)にも配慮しましょう。香典袋には様々な種類がありますが、宗教や金額に合わせて選ぶのがマナーです。
デザイン(柄)と宗教の関係
香典袋の表面には白黒の水引が印刷または掛けられているものが多いですが、デザインに宗教的なモチーフがある場合は注意が必要です。それぞれ次のような決まりがあります。
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無地の香典袋:宗教問わず使用OK。どの宗教の葬儀でも使えるデザインなので、相手の宗教が分からない場合は無地を選ぶと安心です。
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蓮(ハス)の花の模様入り香典袋:仏式専用です。蓮は仏教の象徴なので、神式・キリスト教式の葬儀では蓮の柄は不適当とされています。相手の宗派が不明な場合も蓮の花デザインは避けたほうが良いでしょう。
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百合の花や十字架の模様の香典袋:キリスト教式の香典袋です。プロテスタントでは百合、カトリックでは十字架の絵柄が使われることがあります。仏教・神道のお葬式には使わないようにしましょう。
上記以外にも、神式では榊(さかき)の絵柄などが入った不祝儀袋が市販されていることもあります。ただし、基本的には白無地の香典袋がどんな場合にも使える万能選手なので迷ったら無地を選ぶと良いです。
金額による香典袋の種類
香典袋は香典の金額に合わせたものを選ぶのが作法です。下の表の金額や種類などはあくまでも一例ですが、高額になるほどのし袋もそれにあわせた高級感のあるものを使用するようにしましょう。基本的には一万円以上の場合は実物の水引きがかかっているものを選ぶと良いです。
香典の金額 | 香典袋の種類 |
---|---|
3千~5千円 | 水引きが印刷された略式香典袋 |
1万〜2万円 | 白黒の水引きをかけたもの 等 |
3万~5万円 | 高級和紙に銀の水引きをかけたもの 等 |
10万円 | さらに手の込んだ装飾がされているもの |
香典袋 表書きの種類
香典の表書き 早見表
御霊前 | 御仏前 | 御神前 | 御玉串料 | 御花料 | 忌慰料 | 御香典 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
仏教 | ◯(~49) | ◯(49~) | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ |
浄土真宗 | ☓ | ◯ | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ |
神式 | ◯ | ☓ | ◯ | ◯ | ☓ | ☓ | ☓ |
カトリック | ◯ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ | ☓ | ☓ |
プロテスタント | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ | ◯ | ☓ |
仏式:四十九日法要以前は「御霊前」、四十九日法要以後は「御仏前・御佛前」
仏教では亡くなってから四十九日間は閻魔大王による裁きが行われるとされています。したがって、四十九日法要以前はまだ「霊」から「仏」にはなっていないので、四十九日より前は「御霊前」、四十九日より後は「御佛前」とするのが正しいです。
香典は主に通夜や告別式で渡すので、「御霊前」が使われることが多いのです。
浄土真宗は四十九日以前でも「御仏前」
一方、仏教でも浄土真宗は死後すぐに仏様になるという考えですので、「御霊前」は使わず「御仏前」を使います。弔問前に相手の宗派を確認するのが大事ですが、一般会葬者は相手の宗派を知らないことも多く「御霊前」を使ってしまうことも多いようです。気づいた時に遺族に知らなかった旨をお伝えし、弔う気持ちをしっかりと伝えるようにしましょう。
神式の場合は「御神前・御玉串料・御榊料・御霊前」
神道の葬儀では「御玉串料」や「御榊料」と書くのが一般的です。他に「御神前」と書くこともあります。ただし神式でも「御霊前」を使うこともできます。神式は仏教と違って「霊」を忌避しないため、「御霊前」でも問題ないとされています。相手の宗教が分からない場合、神式でも御霊前なら失礼にはあたりません。
キリスト教式の場合は「御花料・御霊前」
キリスト教には本来「香典」の習慣がないため、代わりに「御花料」と書くのが一般的です。カトリックでもプロテスタントでも御花料で問題ありません。プロテスタントでは他に「忌慰料」と書く場合もあります。一方、カトリックでは「御ミサ料」という表書きを見かけることがありますが、「ミサは本来無償のもの」という教えから「御ミサ料」という表現は誤りとされています。なお、キリスト教式でも故人がカトリックであれば「御霊前」を用いるケースもあります(カトリックは亡くなった直後でも「霊」を忌避しないため)が、迷う場合は無難に御花料にしておくと良いでしょう。
香典袋・不祝儀袋の書き方
ここでは、香典袋(不祝儀袋)に書き込む内容や書き方マナーについて説明します。表書き以外にも、香典袋には差出人の情報を記入する箇所がありますので、忘れずに正しく書きましょう
用途の記入
使うものは筆または筆ペンで、薄墨のものを使います。不祝儀袋の水引きから上の場所に「御霊前」などの表書きを書き、水引きの下に自分の名前をフルネームで書きます。
代理で参列する場合の書き方
妻が夫の代理で弔問しているときは夫の名前の左下に「内」と小さく書き添えます。会社の上司の代理で出す時は会社名と上司のフルネームの左下に「代」と小さく書きます。会社を代表して会葬するときは、会社名と代表者の氏名を書きます。
連名にするとき
連名は可能ですが多くても3名までで、それ以上の場合は一人のフルネームを書いて、その左に「外一同」という風に書きます。会社や団体などの場合は「◯◯株式会社 ◯◯部一同」のように団体全体を指す名称を書きます。
そして中袋に全員の名前、住所と個別の金額を記した明細を入れておくようにします。香典のお返しを辞退するときはその旨も記しておきます。
中袋の書き方
中袋は、表袋とは別に管理するので、中袋にも住所・氏名・金額を楷書で書きます。裏側に住所と氏名を書きます。
金額は漢数字で書きます。漢数字でも壱(一)、弐(二)、参(三)、阡(千)、萬(万)にはカッコ内の漢数字を使わないように注意です。
香典のお札と入れ方
次に、香典として包むお札の扱い方や、香典袋への正しいお金の入れ方を見ていきましょう。ちょっとした作法ですが、これを知っているだけで印象が良くなります。
新札は使わない
香典に入れるお札は、新札(ピン札)は避けるのがマナーです。真新しいお札だと「不幸を予期してあらかじめ準備していた」ような印象を与えかねず、不適切とされています。古すぎて汚いお札ももちろんNGですが、基本は使い古しのお札を選びます。ただし最近は現金自体を日常で使う機会が減り新札しか手元にない場合もあります。そのような時は、新札に一度折り目を付けてから包むと良いでしょう。折り目を一つ入れるだけでも「事前に用意していない」ニュアンスになります。
中袋へのお札の入れ方
お札は表(肖像画がある方)を中袋の下(名前・住所を記載した方)に向けるように入れます。二枚以上のお札を入れる時は、お金の向きを揃えて入れるようにしましょう。
中袋を外包みで包む
中袋にお金を入れたら、外包みで包みます。外包みを開き、外包みの中央に中袋の表側が下になるように置きます。外包みの左、右、下、上の順で包みます。水引きの中に入れれば完成です。
ここで重要なことは上側を下側に被せるところです。結婚式など慶事では幸せを受け止められるように下側を上側に被せますが、弔事では逆で不幸が過ぎ去ってくれるようにという意味が込められています。
動画で見てみる
袱紗(ふくさ)
香典はそのままで持っていかずにふくさに包む
香典は「ふくさ」に包んで持参するのが作法です。ふくさは「お金を汚さないように」という思いやりから来ていると言われています。
ふくさの種類
ふくさは本来四角い布ですが、最近では金封タイプの金封ふくさや、爪つきや台付きのものなどが出てきています。
ふくさの色
弔事のふくさの色は緑・青・鼠色・紺色・紫など暗めの色を用います。慶事でも兼用で使える色は深めの色を選び、男性の場合は青色、女性の場合はえんじいろ、男女両方で使えるのは紫色になります。
ふくさの包み方
香典袋をふくさ中央よりやや右の方へ寄せておきます。次に、右、下、上、左へ折りたたみます。
ポイントは左で右を押さえることです。普段開け閉めに使う方を押さえることで「不幸が簡単に繰り返されないように」という意味が込められています。
動画でふくさの包み方を見る
香典の渡し方
次に、実際に香典をいつ・どのように渡すかという香典の渡し方のマナーについて解説します。当日の受付での所作や声かけなど、知っておくと安心です。
香典を渡すタイミング
香典を渡すタイミングは通夜だけの出席はもちろん、通夜・告別式に出席する場合も通夜に出すことが多いようです。葬儀・告別式にのみ出る場合は出席したときに持参します。
香典は何度も渡すことは「不幸が重なる」ことを連想させるので、自分が弔問するタイミングで1回でお渡しするようにします。ただし、通夜前に取り急ぎ弔問する時は香典は渡す必要はありません。
また、通夜・葬儀・告別式に参加できそうになく、代理も立てられない時は香典を郵送で送りましょう。
香典の渡し方(受付でのマナー)
香典は多くの場合、葬儀会場の受付で係の方(会場スタッフや受付係の人)に渡します。会場に到着したら、まず受付で芳名帳に自分の名前を記帳し、香典を受付に渡します。その際のマナーは次の通りです。
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香典は袱紗に包んだまま持参し、受付に立ったら袱紗から香典袋を出して渡します(袱紗の使い方は後述)。香典袋を直接むき出しで持って行かないようにしましょう。
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香典袋を袱紗から出したら、自分の体の前で袱紗ごと持ち、相手に差し出します。このとき香典袋の表書きが相手から読める向きになるよう向きを整えましょう。受付係に対して香典袋の正面(「御霊前」など表書き側)を見せる形です。
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香典を差し出すときには、一言お悔やみの言葉を添えてお渡しします。「このたびはご愁傷さまでございます。心ばかりですがお納めください」などと声をかけ、軽く一礼しながら差し出しましょう。受付では長々と話す必要はありませんので、簡潔な言葉で大丈夫です。「御霊前にお供えください」といった表現もよく使われます。
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受付係が香典を受け取ったら会計簿に金額等を控えます。場合によってはその場で中身(金額)を確認されることもありますが、これは不正防止や香典紛失防止のために事務的に行われるものですので驚かないでください。自分から「○万円お納めしました」などと言う必要はありません。
万一、会場に受付が見当たらない場合もあります(家族葬などで受付を設けていないことも)。その場合は、タイミングを見て遺族に直接手渡しします。焼香の後などに遺族にお悔やみを述べつつ「御霊前にお供えください」と言って手渡すか、祭壇に香典台があればそこにそっと供えても良いでしょう。祭壇に供える際は自分から見て表書きが読める向き(遺族側から見て逆向き)で置くのがマナーです。
動画で香典の渡し方を見る
通夜・葬儀に参列できない時の香典マナー
仕事や遠方在住などの理由で、どうしても通夜・葬儀どちらにも参列できない場合もあるでしょう。その場合でも香典をお渡ししたいときは、現金書留で郵送する方法があります。
参列できない旨を遺族に電話や手紙で伝えた上で、郵便局の現金書留封筒を利用して香典を送りましょう。現金書留には現金と一緒に手紙(添え状)を同封できますので、香典をお送りする理由(参列できない事情)とお悔やみの言葉を添えて送るようにします。具体的には、「本来であれば直接お伺いすべきところ、遠方のため書面にて失礼いたします。このたびは心よりお悔やみ申し上げます。心ばかりではございますが、ご霊前にお供えくださいますようお願いいたします。」といった文面を便箋に書き添えると良いでしょう。
現金書留の封筒の中に、不祝儀袋に入れた香典と添え状を入れて郵送すれば遺族に届きます。郵送の場合、香典返しはどうなるか気にする方もいますが、通常は他の香典と同様に後日遺族から香典返しが送られてきます。届いたら次の「香典返しを受け取った場合」のマナーを参考に対応しましょう。
香典を辞退された時の対応
先述のとおり、最近では「香典ご遠慮申し上げます」と遺族側から香典辞退の連絡があることがあります。「香典辞退」は特に関西地方を中心に増えてきている習慣で、「家族葬だから香典は不要」「香典返しの負担を無くしたい」など遺族の希望によるものです。
遺族から香典辞退の意向が示された場合は、基本的にその意志を尊重しましょう。前もって「お気持ちだけ頂きます」と言われているのに持参するのはマナー違反になってしまいます。香典を持って行かないことに失礼はありませんので安心してください。「香典をしない代わりに何か…」と考える場合は、香典の代替としてお花(供花)や弔電を送る選択肢があります。ただしそれも遺族が辞退する意向であれば無理にする必要はありません。何より大切なのは遺族の希望を第一に考えることです。
どうしても気持ちを伝えたい場合、後日改めてお手紙を出すとか、落ち着いた頃に訪問して線香をあげさせてもらうなど、香典以外の形で哀悼の意を示す方法もあります。この場合も事前に先方の都合を確認し、負担にならない範囲で行いましょう。
香典返しを辞退したい場合(香典返し辞退の書き方と文例)
香典を渡した側にも、「自分はお返し(香典返し)は遠慮したい」というケースがあります。例えば会社で有志一同で香典を包んだけれど金額が少ないので返礼は辞退したい場合や、遺族に負担をかけたくない場合などです。香典返しを辞退すること自体はマナー違反ではなく、香典本来の相互扶助の精神に照らせば失礼にはあたりません。
香典返しを辞退したいときは、遺族にその旨を明確に伝えることが大切です。口頭で伝えるだけだと遺族側も本気なのか社交辞令なのか判断がつかず混乱する場合があります。そのため、香典袋に一筆添えるか手紙に書いて伝えるのが確実です。
香典袋に香典返し辞退の意志を書く場合は、外袋の裏面(住所氏名を書くスペースの余白など)や中袋の裏面に小さく記載します。書く内容は決まりはありませんが、丁寧な文体で簡潔に伝えましょう。文例として、例えば次のような表現があります。
- お返しのご配慮は遠慮させて頂くようお願い申し上げます
- 誠に勝手ながらお返しは辞退させていただきます
- 香典のお返し等はご無用に願います
いずれも「香典返し(お返し)はお気遣い無用でお願いします」という意味の丁寧な表現です。香典袋にこのようなメッセージを添えておけば、遺族もその意思を尊重して香典返しを省略してくれるでしょう。
受け取った人は香典返しへのお礼は必要?
香典を渡すと、後日香典返し(お返しの品物)が遺族から届くのが一般的です。では、その香典返しに対してお礼の連絡はするべきでしょうか?結論から言えば、香典返しに対するお礼状やお礼の電話は基本的に不要とされています。
香典返しは、参列者からの香典に対する遺族からの「お礼」なので、それに対してさらにこちらがお礼を言うとお礼の重ね合いになってしまいます。不幸事で何度もお礼を繰り返すのは「不幸が繰り返される」ようで縁起が悪いとも言われています。したがって、香典返しをいただいても通常はお礼の電話や礼状は出さなくて大丈夫です。
ただし、最近はマナーも多様化しており、「受け取ったことだけでも知らせたほうが良いのでは?」と考える人もいます。基本不要ではありますが、もし親しい間柄の場合などで心配なら、**電話で「無事受け取りました」**と伝える程度は差し支えありません。その際も「お気遣いいただきありがとうございます」くらいの軽いお礼を伝えるのは構いません。あまり改まったお礼状などはかえって遺族に気を遣わせてしまうので避けましょう。
要は、「香典返しを確かに受け取った」という報告は必須ではないけれども、遺族との関係性次第では伝えてもOK、といったスタンスです。香典返しには発送伝票で受取確認が取れる場合も多いですし、送った側(喪主)も届いたかどうか不安なことがありますので、届いたことを伝えてあげると遺族が安心するという面もあります。特に宅配便で送られてきた香典返しが不在で戻ってしまった場合などもありえますので、親しい間柄なら「品物受け取りました、ご配慮に感謝します」と一報入れても良いでしょう。
香典返しを受け取った報告は必要か?
上の項目とも関連しますが、「香典返しが届いたことを遺族に報告すべきか」について補足します。結論として、喪主(遺族)に対して「香典返しが無事届きました」と報告する義務はありません。多くの場合、香典返しは配送業者の追跡や受領印で遺族側も届いたかどうか把握できますし、全員から連絡が来ると遺族側も対応が大変になってしまいます。
ただし、香典返しが届く頃というのは葬儀からしばらく経って落ち着いた時期です。親しい間柄なら、改めて電話やメールで近況報告がてら受け取ったことを伝えるのも良いでしょう。「このたびはありがとうございました。落ち着かれましたらまたお伺いしますね」など、相手を気遣う言葉を添えるとベターです。特に高齢のご遺族などは「ちゃんと届いただろうか」と気にされることもありますので、報告してあげると安心されることがあります。
一方で、ビジネス上の付き合いやそれほど親しくない間柄の場合、香典返しに対する返信連絡は不要です。お互い様という考えで、お礼のループを断つことがマナーという見解もあります。
まとめ
以上、香典の金額相場からマナー全般、香典袋の扱い、そして香典返しに至るまで一通り解説しました。大切なのは形式ばかりにとらわれすぎず、故人と遺族への思いやりの気持ちを持って行動することです。本文で触れた**「香典 相場」**「香典 渡し方」「香典袋 書き方」などのポイントを押さえておけば、一般的な香典マナーとしては十分と言えるでしょう。ぜひ参考にして、落ち着いてご対応ください。悲しみの中で遺族に寄り添う気持ちが何よりの供養になるはずです。心を込めた香典で、故人を偲び、ご遺族にお気持ちを届けてください。
脚注