皆さんこんにちは、相続専門税理士の秋山です。
今日は、相続税の税務調査がコロナの影響により、今年いっぱい中止された場合、納税者にはどんな影響が出るのか、という話をします。
先日、知り合いの税理士から、事前に税務署から連絡を受けていた税務調査が、コロナの影響で中止になったという連絡を受けました。
この税務調査の中止に関しましては、現在国税庁からのアナウンスは出ておりませんが、私の周りの情報からもおそらく、最低でもこの緊急事態宣言中は、所得・法人・相続税を含め一律で税務調査が行われることはないだろう、というのが現状の見解です。
しかも、この緊急事態宣言については、当初は4月16日から5月6日までの期間と言われていましたが、今週の29日水曜日、全国の県知事会で、この期間の全国的な延長を政府に求める方針が決まりました。
それにより、この緊急事態宣言がいつまで続くのか、そして税務調査の中止がいつまで続くのか、というのがいよいよ誰にも分からなくなってきました。
では仮に、このまま税務調査が今年一年間中止になったとしたら、相続税の調査はどうなるのか、本来だったら今年税務調査を受けるはずだった人は、来年以降どのような影響が出るのか、変わらずに税務調査の対象となるのか、それとも税務調査の対象から外れるのか。
今回の動画では、その部分について、国税OBの視点から相続税について詳しく解説をしていきたいと思います。
冒頭でもお話ししましたが、今年実施される予定だった相続税の税務調査は、現在恐らく全ての実施が取りやめになっている状況だと思います。
そして、この税務調査の中止期間は、最低でも緊急事態宣言が発令されている期間中は続くでしょうし、緊急事態宣言が解除されたとしても、納税者の方や職員の安全性の観点から、すぐに調査が再開されるというのも考えにくいです。
おそらく最短でも、6月から7月まで。
もしかすると、今年いっぱいの調査がコロナの影響により中止になるという事態も考えられます。
その場合、こと相続税においては来年以降の税務調査の形態が大きく変わることになります。
どう変わるのかというと、本来だったら相続税の調査を受けるはずだった人の割合が、来年は約半分まで減る可能性が非常に高いんです。
具体的に説明します。
まず、従来の相続税の調査では、申告があった案件の5件に1件である、約20%の人が調査対象となっていました。
ですが、おそらくコロナが終息した後の相続税の調査は、申告のあった案件のうち、10件に1件、約10%の人しか調査対象とはならないでしょう。
ですので、従来の約半分の割合の方が税務調査を受けずに済むというわけです。
ではなぜこのようなことが起こるのかと言いますと、なぜなら税務署の職員の数は限られていますから、1年間で職員が処理できる調査案件の数には限界があるんですね。
ですので、今年行わなければいけない税務調査が、1年間行えないとなれば、処理できない案件がどんどん溜まっていきます。
そしてそれらを、コロナ収束後に全部処理しようとすると、税務署の業務がパンクしてしまうんです。
なので、来年以降の相続税の調査は、調査対象を絞る可能性が非常に高いんです。
では具体的に、コロナウイルスにより、相続税の税務調査ができない期間が、どれだけ続けば、その後いつからいつまでの時期の税務調査に影響が出るのか、これを簡単に説明していきます。
そもそも相続税の税務調査というのは、相続税の申告書を出してすぐに行われるわけではありません。
まず相続税の申告書は、ご家族に相続税が発生してから、10ヶ月以内に亡くなった方の住所地にある税務署に提出します。
その後税務署は、提出された申告書の内容を精査するために、それなりの時間を費やすんですね。
そして、この案件は申告漏れがある、と見ると調査対象になるわけです。
ですので税務署から、もしもし相続税の調査に伺いたいんですが、と電話が入るのが相続税の申告書を提出してから大体1年半後くらいの夏以降になります。
なぜ夏からなのかと言いますと、税務署は年明けから春までは確定申告で忙しくて、税務調査を行いません。
それと、税務署の人事異動は7月ですから、税務調査をするのは主に、夏から秋、後は冬に少しだけ、4月から6月までに件数処理、という感じなんです。
税務調査に関して、コロナの影響が何もなかった場合の話ですが、今年の1月に亡くなった方の相続税の申告書を、今年11月に提出した場合、税務調査の対象に選ばれてしまえば、再来年の7月以降に税務署から調査の連絡がくるわけです。
税務署は常に、約1年半前に申告書が提出された案件の調査をしていますからね。
ところが、今年はコロナの影響で、税務調査が止まっています。
ですので、今年いっぱい相続税の調査が行われなかった場合、一体いつの時期に亡くなった方の調査に影響が出るのかと言いますと、基本的に平成30年中に亡くなった方が対象となります。
今年中にコロナが収束すれば、本来今年行われるはずだった調査は来年実施することになるでしょうが、来年は来年で今度は令和元年分の調査が控えています。
相続税の調査ができる調査官の人数は少ないですから、2年分の調査を1年でこなすなんてことはできません。
おそらく、本来調査対象に選んでいた案件の中から、さらにその対象を半分ほどに絞って、来年一年で調査を出来るように調査件数を調整するはずです。
ですので、今年中にコロナが収束した場合、平成30年分と令和元年分、この2年分の相続税の申告書を提出した人に対して調査が行われる確率は、従来の約20%から、半分の10%ほどに下がると思われます。
ではなぜ、コロナが収束した後、税務署が行える相続税の調査件数が従来の半分までに下がるのか、これについては所得税や法人税と、相続税の税務調査の根本的な違いを知る必要があります。
どういうことかといいますと、まず所得税や法人税というのは、申告に継続性がありますよね。
毎年、個人事業主も法人も決まった時期に確定申告を行い、税務署にも毎年申告書が出されます。
ですから、所得税や法人税の調査というのは、絶対に今年中に調査をしなければいけないということはないんですね。
たとえ今年調査ができなかったとしても、来年に今年の分も併せて調査をすれば良いですからね。
ですが相続税は違います。
そもそも相続って、毎年決まった時期に起こるようなものじゃないですよね。
相続というのは突発的に発生しますから、所得税や法人税のように、毎年同じ方や会社が課税対象になるのではなくて、亡くなった方が課税対象になるのは一生に一回きりで、毎年課税対象者が変わるんですね。
なので、今年発生した分の相続税の調査は決まった期間中にしておかないと、また来年は新たに来年分の調査案件が発生するわけですから、今年コロナの影響で、調査ができない案件が溜まったとしても、それらを来年に回して調査するということができないんですね。
またなぜ、コロナが終息した後の相続税の調査件数は約半分まで下がるのか、の二つ目の理由としては、税務署内の職員の割り当ての問題があります。
実は相続税担当の職員というのは、税務署全体の約6%しかいません。
大阪国税局の職員が1万人としましても、その中に相続税を担当する職員は600人しかいないんです。
結局コロナ収束後に待っている、倍の数の調査件数をこなすだけの職員がいないんですね。
コロナ収束後は税務署の他の部署も多忙を極めるでしょうし、元々相続税の調査は専門性が高すぎて、他の部署からの応援も望めない。
ですから、相続税担当の調査官は高額事案に的を絞って調査するか、極力実地調査を止めて、簡易な調査をするか、という選択しか取れないんですね。
いずれにしてもコロナの影響で、税務調査の中止期間が今年一年間続いたとしましたら、来年の相続税の税務調査の件数は、10件に1件。
従来の約半分になるという可能性は非常に高いです。
しかしですね、この動画を見ている方の中で、今年相続税の申告書を出す予定なんだけど、自分が出した申告書に対する税務調査の割合も、従来の半分の10件に1件になるの?と思われてる方もいらっしゃるかもしれません。
ですがその可能性は低いですね。
何故なら、今年税務署に提出申告書が調査の対象となるのは、再来年以降になるでしょうから、さすがにコロナ騒動も一段落していると思われます。
ですので、今年相続税の申告書を税務署に提出するという方は、従来通り申告のあった案件の5件に1件である、約20%の人が再来年の調査の対象となるでしょう。
ですので、これから相続税の申告書を提出する方は、動画でも言っていたし相続税の調査の件数は10件に1件しか行われないみたいだから、私の申告書は適当に作って出せばいいや。
という考えは危険ですので、従来通りきちんと相続税の申告書は、相続専門の税理士さんに依頼をして作成されることをお勧めします。
今日は、コロナの影響により、相続税の調査はどうなるのか、また、納税者への影響あるのか、という話をしました。
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それではまた次回の動画でお会いしましょう、ありがとうございました。
秋山清成
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