みなさんこんにちは。相続専門税理士の秋山です。今日は「相続争いに関わりたくない人必見!相続争いから離脱するための3つの選択肢」についてお話します。
私は国税局税務署時代から独立開業後の現在まで、これまで50年近く様々な家庭の相続に携わってきました。
その中で私が気づいたことは、相続争いというのは親が生きている間には起こりづらいが、親の相続を発端として兄弟姉妹間で発生することが多いということ。
その上でひと度相続争いが起これば、相続人の人たちは長期間の時間的拘束とそれに伴う精神的な疲労が続くということ、そしてそんな相続争いの大部分は、財産が1億円を超えるような資産家の家庭よりも財産額が5,000万円以下の家庭で頻繁に起こっているということです。
さて、そんな様々な家庭の相続争いを見てきた私ですが、一定の割合でこのような相談を受けることがあります。
「先生、もう私は親の残した財産はいらないので、兄弟といがみ合う遺産分割協議から外れたいと思っています。これ以上、相続争いに関わらずに済む方法ってあるんでしょうか?」というものです。
確かに相続争いが泥沼化しますと、心身ともに疲弊し私生活にまで影響が出てきますので、このようにおっしゃる方の気持ちはとてもよくわかります。
私はそんな方たちに対して3つの選択肢を提示し、どの選択肢を選ぶか、もしくはどれも選択しないかを相手方に委ねています。
今回の動画では、相続争いから離脱したい人が選ぶべき3つの選択肢について、それぞれの概要とともに各項目を選択した際のメリットと、選択する際の注意点についても詳しく解説を行っていきます。
相続争いが発生した場合、相手に一歩も譲らず自身の法定相続分を守り切るという知識ももちろん重要ですが、それと同じくらい泥沼の相続争いに巻き込まれるくらいなら、遺産分割協議から降りるという実績もあって損はしません。
みなさんにはぜひ、今回の動画を通じて相続争いから離脱するための3つの選択肢について知っていただければと思います。
ではまず相続争いから離脱したい人が選ぶべき3つの選択肢の1つ目、相続放棄について見ていきましょう。
①相続放棄
ⅰ 概要
相続放棄というのは、亡くなった方の財産が預金や有価証券といったプラスの財産よりも、債務や借金といったマイナスの財産の方が多い場合、相続放棄を行いたい相続人の方が、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続放棄を行いますという申し立てを行うことによってその相続人の方は正式に被相続人の法定相続人ではなくなるというものです。
つまり、相続開始日から3ヶ月以内に相続放棄を選択することにより、相続放棄を行った相続人は亡くなった方の遺産分割協議の参加資格を失い、結果、家族間の相続争いから正式に抜けることができるというわけですね。
ⅱ メリット
相続争いに関わりたくない人が相続放棄を選択することのメリットを見ていきましょう。
相続放棄のメリットとしては、相続放棄を正式に実行さえすれば、もうそこからは煩わしい遺産分割協議に一切参加しなくても済む。
当初、把握できていなかった被相続人の借金が後に発覚したとしても、相続放棄を選択している相続人には借金の返済義務は生じない、相続放棄を選択すると、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産、両方の相続権を手放すことになるが、自分が受取人となっている生命保険金は受け取ることができる、こういったものがあります。
相続放棄をしても生命保険金が受け取れるというポイントはこちらの動画で詳しく解説していますので、気になるという方はぜひご覧になってみてください。
【やらなきゃ損!】将来の相続対策の為に生命保険を活用すべき5つの理由! https://youtu.be/3gcEo0142L4
ⅲ 注意点
ではその上で、相続争いに関わりたくない人が相続放棄を選択する際の注意点についても見ていきましょう。
相続放棄を選択する際の注意点としては、一度相続放棄を選択し受理がなされると、原則として相続放棄の撤回はもう二度とできないということ。
必ず相続の開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行わないと、強制的に被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続する単純承認が適用されるということ。
相続放棄前、もしくは後に亡くなった方の財産を処分したり、売却、形見分けなどを行ってしまうと、その場合も遺産を処分した人に関しては、単純承認が適用されてしまうということ、これら3つが主な注意点となります。
その上で、注意点の3つ目について、具体的にどのような行為がNG行為に該当するのかといいますと、
相続放棄手続きが行われる前後において、被相続人の土地の上にある建物を勝手に取り壊して更地にしてしまった。
新車などの経済的価値がある財産を売却してしまった。
高級な衣類や美術品などの経済的価値のある遺品を形見分けしてしまった。
相続財産を使って著しく高額なお墓を購入した。
このような行為がなされた場合、家庭裁判所から強制的に亡くなった方の財産を相続したものとみなされ、単純承認が適用されることになります。
逆に、近隣に迷惑をかけないための家屋の修繕や、売却も困難な状態の旧車の廃棄処分経済的価値のない品の形見分けや相続財産を使い、高級すぎないお墓を購入、同様に亡くなった方の財産から葬儀費用を支払う、こういった行為に関しては、被相続人の財産の処分とはなりませんので、相続放棄の手続き前後に行われても問題はないでしょう。
相続争いに関わりたくないという方は、メリットと注意点をよく理解した上で、相続放棄を利用するかどうかを検討していただければと思います。
②相続分の放棄
相続争いから離脱したい人が選ぶべき、2つ目の選択肢は相続分の放棄です。
ⅰ 概要
相続分の放棄というのは、遺産分割の席において、自分は被相続人の財産を何も受け取らないという意思を表示した上で、その後は遺産分割協議に参加しないというものです。
一見すると、先ほどお話した相続放棄の仕組みとほとんど同じように思いますが、この相続放棄と相続分の放棄には受けられるメリットと、気をつけておくべき注意点の部分に明確な違いがあるんですね。
その違いについて順番に見ていきましょう。
ⅱ メリット
まず、相続分の放棄のメリットとしては、放棄のタイミングに時間的な制限がない、放棄をする際の形式も問われない、その上で生命保険金も受け取れるというものがあります。
順番に見ていきますと、先ほどお話しした相続放棄においては、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行わないと、強制的に単純承認が適用されましたが、相続分の放棄に関しては、そのような時間的な縛りはなく、どのタイミングで相続分の放棄を行ったとしても、その後の遺産分割協議から外れることができます。
その上で、相続放棄を行うためには、相続放棄に必要な書類を用意したり、相続放棄申述書を作成したりなど複数の手続きを行う必要があるのですが、相続分の放棄に関しては放棄をするために、特段決まった形式などがなく、自分自身で作成した書面であっても、口約束であっても相続分の放棄は有効に成立します。
また、先ほどの相続放棄同様、相続分の放棄においても、自分が受取人となっている生命保険に関しては問題なく受け取りが可能です。
ⅲ 注意点
その一方で、相続分の放棄を選択する際の注意点としては、被相続人に借金などの債務があった場合、債権者に対しては、相続分の放棄は通用しないということ。
他の相続人が名義変更を行う際などには、遺産分割協議書への自身の押印と印鑑登録証明書の提出を求められるということがあります。
順番に見ていきますと、まず相続分の放棄というのは、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産全てを放棄する相続放棄とは違い、あくまでも被相続人のプラスの財産だけを放棄するというものなんですね。
ですので、たとえ相続分の放棄をしても、被相続人のマイナスの財産は他の相続人と共有で負担することになり、債権者から借金を返せと言われればそれに応じなければいけない可能性があるという点には注意が必要です。
また、他の相続人が被相続人の不動産や預金口座の名義変更などを行う際には、各機関から相続人全員の署名・実印が押されている、遺産分割協議書と印鑑登録証明書の提出を求められます。
そのため、せっかく相続分の放棄をして、煩わしい遺産分割協議から外れたのに、結局最終的に遺産分割協議書への署名・捺印や印鑑登録証明書の提出を求められることになるんですね。
ですので、こういった手間も極力省きたいという方は、最初に相続分の放棄を行う際に、このような形式で相続分放棄証書を作成して署名・捺印をし、相続分の放棄証書を作成したものを、共同相続人全員に通知をしてください。
その際はきちんと証拠を残しておく意味でも、配達証明付内容証明郵便で通知をしておくことをおすすめします。
これらの手続きを踏んでおけば、その後は遺産分割協議書への署名・捺印や印鑑登録証明書の提出を求められずに済みますので覚えておいてください。
ちなみに金融機関においては、相続分放棄証書での預金口座の名義変更や解約手続きを認めないというところもあるようです。
その場合は仕方がありませんので、銀行側が要求する追加資料の提出に協力していただければと思います。
③相続分の譲渡
では最後に、相続争いから離脱したい人が選ぶべき、3つ目の選択肢は相続分の譲渡です。
ⅰ 概要
相続分の譲渡というのは簡単に言いますと、自分の法定相続分を特定の相続人、もしくは相続人以外の第三者に譲り渡す行為です。
先ほどお話した相続分の放棄が、自分は被相続人の財産を何も受け取らないと放棄をする行為であったのに対し、相続分の譲渡というのは、自分の法定相続分を無償もしくは有償で特定の人物に譲り渡すという部分が特徴となります。
ちなみにこの法定相続分とは一体何なのかですが、これは国が民法で規定している財産の分け方のことを言いまして、具体的な数字を出して説明します。
例えば、法定相続人が配偶者と子供2人だった場合、各人の法定相続分は配偶者が財産の2分の1、子供は財産の4分の1ずつと規定されており、法定相続人が子供3人の場合、各人の法定相続分は、長男、次男、長女ともに、財産の3分の1と規定されています。
今回の家族の場合、相続争いから抜けたい次男が比較的有効な関係である長女に対し、自分の相続分を譲渡すればこの家族内における各人の相続分は長男3分の1、長女3分の2、次男0となるわけですね。
ではその上で、相続争いに関わりたくない人が、相続分の譲渡を選択することのメリットについて見ていきましょう。
ⅱ メリット
①相続分の譲渡のメリットとしては、譲渡のタイミングに時間的な制限がなく、譲渡する際の形式も問われない。
②相続分を譲渡する相手を自分で選択することができる。
③有償で相続分を譲渡した場合、相続分相応の対価を受け取ることができる。
④その上で、生命保険金も受け取ることができる。
これら4つがあります。
このうち、①に関しては先ほどの相続分の放棄とほとんど同じです。
相続放棄においては、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行わないと、強制的に単純承認が適用されますが、相続分の譲渡に関してはそのような時間的な縛りはなく、どのタイミングで相続分の譲渡を行ったとしても、その後の遺産分割協議から外れることができます。
その上で、相続放棄を行うためには、このように相続放棄に必要な書類を用意したり、相続放棄申述書を作成したりなど複数の手続きを行う必要があるのですが、相続分の譲渡に関しては、譲渡するために特段決まった形式などはなく、相続分を譲り渡す側、もらい受ける側で書面を作成してもらってもいいですし、口約束であっても、相続分の譲渡は有効に整理します。
さらに、相続分の譲渡を選択する場合には、相続分を渡す相手を自分で任意に選択することが可能です。
どういうことかといいますと、これまでお話してきた相続放棄や相続分の放棄に関しては、自分が放棄した相続分は残りの相続人全体に按分されて加算されるのに対し、相続分の譲渡では任意の相手に自分の相続分を渡すことができるので、嫌いな長男には相続分は渡さず、比較的有効な関係である長女に対して自分の相続分を譲渡するということも可能なんです。
ちなみに相続争いからは抜けたいけれど、相続人の誰にも自分の相続分を渡したくないという場合には、相続人以外の第三者、つまり自分の配偶者や子供などに対し相続分を譲渡することも可能です。
ですが、共同相続人以外の第三者に相続分の譲渡が行われるというケースはほとんどありませんね。
その上で任意の相手に自身の相続分の譲渡を行う際には有償で渡すか、無償で渡すかを選択することも可能です。
相続分を有償で譲り渡す場合、その時点で相手側から相続分相応の対価を受け取ることができますので、遺産分割協議がまとまる前に現金が手に入るというのも、相続分の譲渡のメリットですね。
ちなみに自身の相続分を他の相続人に対して有償で譲渡した場合と、無償で譲渡した場合の各種税金の取り扱いはこのようになっています。
一つずつ順番に見ていきますと、相続分を有償で譲った側は、譲渡の対価として受け取った金額が相続税の対象となります。
つまり、亡くなった方の財産が相続税の基礎控除を超えている場合には、譲渡側にも相続税の申告と納税が必要になるというわけですね。
また、相続分を有償で譲り受けた側は、譲り受けた部分を含めた相続財産額から譲渡を受ける際に支払った対価を差し引いた金額が、相続税の対象となります。
それに対し、相続分を無償で譲った側には、原則として課税関係は生じず、相続分を無償で譲り受けた場合には贈与税の課税はありませんが、譲り受けた部分を含めた相続財産額に対して相続税がかかる。このような取り扱いとなります。
またこれまで同様、相続分の譲渡を行ったとしても、自分が受取人となっている生命保険金に関しては問題なく受け取りは可能です。
ⅲ 注意点
ではその上で、相続争いに関わりたくない人が、相続分の譲渡を選択する際の注意点についても見ていきましょう。
相続分の譲渡を選択する際の注意点は、先ほどの相続分の譲渡の際の注意点とほぼ同じです。
相続分の譲渡というのは、被相続人のプラスの財産、マイナスの財産全てを放棄する相続放棄とは違い、あくまでも被相続人のプラスの財産だけを譲渡するというものです。
なので、たとえ相続分の譲渡をしても、被相続人のマイナスの財産は他の相続人と共有で負担することになり、債権者から借金を返せと言われればそれに応じなければいけない可能性があります。
また、他の相続人が被相続人の不動産や預金口座の名義変更などを行う際には、各機関から相続人全員の署名・実印が押されている遺産分割協議書と印鑑登録証明書の提出を求められます。
そのため、こういった手間も極力省きたいという方は、最初に相続分の譲渡を行う際に、譲渡人、譲受人の両者間でこのような形式の相続分譲渡証書を作成して署名・捺印をし、相続分譲渡証書を作成した旨を、共同相続人全員に配達証明付内容証明郵便で通知をしてください。
これらの手続きを踏んでおけば、その後は遺産分割協議書への署名・捺印や印鑑登録証明書の提出を求められずに済みますからね。
ちなみに金融機関においては、相続分譲渡証書での預金口座の名義変更や解約手続きを認めないというところもあるようです。
その場合は仕方がありませんので、銀行側が要求する追加資料の提出に協力していただければと思います。
今回の動画のまとめ
では今回の動画のまとめです。今回は「相続争いに関わりたくない人必見!相続争いから離脱するための3つの選択肢」ということで、これら3つの方法を紹介しました。
このうち、相続発生後の相続争いや債務の不安から一切の距離を置きたいという方は、相続発生から3ヶ月以内に相続放棄を選択されることをおすすめします。
その際の相続放棄のメリット、注意点はこのようになっています。
また、相続放棄の期間が過ぎてしまい、特に自分の相続分を渡したい相手もいないという場合には、相続分の放棄を選択するのもいいかと思います。
その際のメリット、注意点はこのようになっています。
最後に、相続争いには関わりたくないから、特定の相続人に相続分を有償で渡して解放されたいという場合は、相続分の譲渡が有効ですね。
その際のメリット、注意点はこのようになっています。
ちなみに、相続分の放棄や譲渡を行う際には、後に証拠を残すという意味でも、きちんと証書を作成し、共同相続人全員に配達証明付き内容証明郵便で通知をされることをおすすめします。
以上で今回の動画は終わりです。今回の動画の他にも「将来の相続税を大きく減らすことができる家庭の特徴5選」という動画なども投稿しておりますので、これらの内容にも興味があるという方はぜひ動画をご覧なってみてください。
それでは次回の動画でお会いしましょう。最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
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