お葬式に参列する際、喪服を着用することは多くの方がご存知でしょう。しかし、髪型や靴、アクセサリーなどの細かな身だしなみについては、意外と知らないことが多いものです。特に若い世代にとって、葬儀のマナーは難しく感じることもあるでしょう。
本記事では、お葬式における髪型、靴、アクセサリーの基本的なマナーについて、具体的にわかりやすく解説します。大切な方との最後のお別れの場で、失礼のない装いで参列できるよう、ぜひ参考にしてください。
目次
お葬式にふさわしい髪型のマナー
お葬式での髪型は、清潔感と品位を保つことが最も重要です。派手な髪型や乱れた髪は避け、故人や遺族に対する敬意を表すことが求められます。
女性の場合は特に、長い髪をどのようにまとめるか、ヘアアクセサリーは使ってよいのかなど、迷うポイントが多くあります。男性も整髪料の使い方や髪色など、注意すべき点があります。
ここでは、性別や髪の長さに応じた適切な髪型について詳しく見ていきましょう。
女性の髪型マナー
女性がお葬式に参列する際の髪型は、清楚で控えめなスタイルが基本です。髪が肩より長い場合は、低い位置でひとつにまとめるのが望ましいとされています。高い位置でのポニーテールや派手な編み込みは避けましょう。
- 低い位置でのシニヨン(お団子)
- 耳より下の位置でのひとつ結び
- シンプルな夜会巻き
- 控えめな三つ編み
髪をまとめる際は、黒や紺色の目立たないヘアゴムを使用します。髪が短い場合でも、前髪が顔にかからないようピンで留めるなど、すっきりとした印象を心がけてください。また、お辞儀をした際に髪が乱れないよう、しっかりと固定することも大切です。
男性の髪型で気をつけるポイント
男性の髪型は、清潔感があり、きちんと整えられていることが重要です。寝癖や無造作ヘアは避け、櫛やブラシできれいに整えましょう。整髪料を使用する場合は、つけすぎに注意が必要です。
- 前髪は目にかからない長さに
- サイドは耳が見える程度に整える
- 襟足は短めにカット
- ワックスやジェルは控えめに使用
特に若い男性の場合、普段は個性的な髪型をしていても、葬儀の際は落ち着いたスタイルに整えることが大切です。必要であれば、事前に美容室や理容室で整えてもらうことをおすすめします。長髪の男性は、後ろで一つに結ぶなど、清潔感のあるスタイルを心がけましょう。
髪色とヘアアクセサリーの注意点
葬儀における髪色は、基本的に黒または自然な茶色が望ましいとされています。明るい茶髪や金髪、カラフルな髪色の場合は、一時的に黒染めスプレーを使用することも検討しましょう。
ただし、高齢者の白髪は自然なものなので、無理に染める必要はありません。
- 黒いヘアピンやヘアゴムは使用可
- 光沢のある飾りは避ける
- リボンやシュシュは使用しない
- パールの髪飾りも基本的には避ける
髪をまとめる際に必要なアイテムは、できるだけシンプルで目立たないものを選びます。カチューシャやヘアバンドも、葬儀の場では適切ではありません。機能性を重視し、不要な装飾は控えることが大切です。
状況に応じた髪型の工夫
葬儀の形式や会場によって、髪型への配慮も変わってきます。例えば、お通夜と告別式では、告別式の方がよりフォーマルな装いが求められます。また、親族として参列する場合は、一般参列者よりも厳格なマナーが必要です。
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急な訃報で美容室に行く時間がない場合は、自宅でできる簡単なまとめ髪で対応しましょう。市販の黒染めスプレーや、ドラッグストアで購入できる黒いヘアアクセサリーを活用することで、短時間で葬儀にふさわしい髪型に整えることができます。
雨天時は髪が乱れやすいため、スプレーでしっかり固定することも忘れずに。
葬儀にふさわしい靴選びのポイント
お葬式での靴選びは、意外と見落としがちなマナーのひとつです。足元は目立たないようで実は人の目に入りやすく、不適切な靴を履いていると違和感を与えてしまいます。
基本的には黒色のシンプルな靴が望ましいですが、素材やデザイン、ヒールの高さなど、細かな決まりがあります。また、会場によっては靴を脱ぐ場面もあるため、靴下やストッキングにも配慮が必要です。
ここでは、男女別の靴選びのポイントを詳しく解説します。
女性の靴選びの基本ルール
女性が葬儀で履く靴は、黒のパンプスが基本です。つま先が丸いラウンドトゥか、やや尖ったアーモンドトゥが適しています。ヒールの高さは3〜5センチ程度が理想的で、歩きやすさと品格を両立できます。
- 素材は布製または光沢のない革製
- つま先とかかとが覆われているデザイン
- 装飾のないシンプルなもの
- ストラップ付きでも可(シンプルなもの)
エナメル素材やスエード素材は避けましょう。また、オープントゥやミュール、サンダルなどの肌が見える靴も不適切です。妊娠中や足腰に不安がある方は、ローヒールやフラットシューズでも問題ありません。歩きやすさを優先し、無理のない靴を選ぶことが大切です。
男性の革靴選びのポイント
男性の葬儀用の靴は、黒の革靴が基本です。ビジネスシューズとして使用している黒い革靴があれば、それで問題ありません。ただし、デザインや素材には注意が必要です。
- 内羽根式のストレートチップが最も格式高い
- プレーントゥも使用可能
- 光沢を抑えた革製
- 紐靴が基本(ローファーは避ける)
靴の手入れも重要なポイントです。汚れや傷が目立つ靴は、故人や遺族に対して失礼にあたります。前日までに靴磨きをして、清潔な状態で参列しましょう。金具や装飾のついた靴、茶色やグレーの靴は葬儀には不適切です。
避けるべき靴のデザインと素材
葬儀で避けるべき靴には、明確な基準があります。これらを理解しておくことで、マナー違反を防ぐことができます。
- 光沢のあるエナメル素材
- アニマル柄やクロコダイル革
- スタッズやビジューなどの装飾
- 明るい色の靴(白、ベージュ、茶色など)
- カジュアルなスニーカーやブーツ
殺生を連想させる革製品については議論がありますが、現代では一般的な革靴は問題ないとされています。ただし、ヘビ革やワニ革など、明らかに動物の皮とわかる素材は避けるべきです。
また、ヒールの金具などで音の出る靴も、静粛な葬儀の場にはふさわしくありません。
靴下・ストッキングの選び方
靴と同様に、靴下やストッキングも葬儀のマナーにおいて重要な要素です。特に和室での法要など、靴を脱ぐ機会がある場合は注意が必要です。
- 黒色の無地が基本
- 肌が透ける程度の厚さ(30デニール程度)
- 柄物やラメ入りは避ける
- 伝線に備えて予備を持参
- 黒色の無地
- ふくらはぎまでの長さ
- 薄手のビジネスソックス
- 白や柄物は厳禁
タイツについては、寒い時期であれば着用しても問題ありません。ただし、厚手すぎるものやカジュアルな印象を与えるものは避けましょう。素足での参列は、どんな場合でもマナー違反となります。
シーン別の靴選びのコツ
葬儀には様々な形式があり、それぞれに応じた靴選びが必要です。一般的な葬儀場での葬儀、自宅での葬儀、野外での葬儀など、会場によって適切な靴も変わってきます。
自宅葬の場合は、玄関で靴を脱ぐことが前提となるため、脱ぎ履きしやすい靴を選ぶとよいでしょう。野外や砂利道を歩く可能性がある場合は、ヒールの太いものや、安定感のある靴を選ぶことをおすすめします。
また、雨天時は滑りにくい靴底のものを選び、会場で履き替えることも検討しましょう。急な葬儀で適切な靴がない場合は、レンタルサービスを利用することも一つの選択肢です。
なお、葬儀全体の基本マナーをおさえておきたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
葬儀のマナー完全ガイド:服装、靴、言葉遣い、ご香典について
葬儀で身につけるアクセサリーのマナー
お葬式でのアクセサリーは「控えめ」が鉄則です。華美な装飾品は故人を偲ぶ場にふさわしくないため、基本的には最小限に留めることが大切です。
しかし、結婚指輪や真珠のネックレスなど、葬儀の場でも許容されるアクセサリーもあります。また、時計やメガネなど、実用的なアイテムについても配慮が必要です。
ここでは、葬儀で身につけてよいアクセサリーと避けるべきものについて、具体的に説明していきます。
許容されるアクセサリーの種類
葬儀で身につけてもよいアクセサリーは限られています。基本的には「涙」を表す真珠のアクセサリーと、結婚指輪のみが許容されています。
- 一連の真珠のネックレス(白・黒・グレー)
- 真珠の一粒イヤリング/ピアス
- 結婚指輪(シンプルなもの)
- 喪章(遺族の場合)
真珠のネックレスは、必ず一連のものを選びます。二連、三連のネックレスは「不幸が重なる」という意味になるため、葬儀では厳禁です。また、真珠の大きさは7〜8ミリ程度が適切とされています。イヤリングやピアスも、揺れないシンプルなデザインを選びましょう。
避けるべきアクセサリー
葬儀で避けるべきアクセサリーは多岐にわたります。基本的に、光るもの、音の出るもの、派手なものはすべて不適切です。
- ゴールドやシルバーのアクセサリー
- ダイヤモンドなどの宝石類
- 揺れるタイプのイヤリング/ピアス
- ブレスレットやアンクレット
- 派手なデザインの指輪
- ブローチやコサージュ
若い世代に人気のファッションリングやピアスも、葬儀の場では外すのがマナーです。また、お守りやパワーストーンなども、見える位置に身につけるのは避けましょう。
アクセサリーはつけないことが基本と考え、必要最小限に留めることが大切です。
真珠のアクセサリーの正しい使い方
葬儀における真珠のアクセサリーには、細かなルールがあります。真珠は「涙の象徴」として、唯一葬儀で身につけることが許されている装飾品です。
- 色:白、黒、グレーの真珠
- 形:真円に近いもの
- 大きさ:7〜8ミリが標準
- 留め具:シルバー色が望ましい
ネックレスの長さは、40〜42センチ程度のプリンセスタイプが一般的です。あまり短すぎても長すぎても、バランスが悪くなります。
また、イミテーションパールでも問題ありませんが、あまりに安っぽく見えるものは避けた方が無難です。真珠のお手入れも重要で、使用後は柔らかい布で拭いてから保管しましょう。
実用品の扱い方(時計・メガネなど)
時計やメガネなどの実用品も、葬儀の場では配慮が必要です。これらは必需品である一方、デザインによっては不適切になることもあります。
- 腕時計:シンプルな黒か銀色、革ベルトは黒
- メガネ:派手なフレームは避ける
- 財布:会場で見える場合は黒系統
- ハンカチ:白か黒の無地
スマートウォッチについては、通知音を必ずオフにし、画面の明るさも最小限に設定しましょう。また、葬儀中は時計を頻繁に見ることは避け、マナーモードを徹底することが大切です。
老眼鏡が必要な方は、派手なチェーンは避け、シンプルなケースに入れて持参しましょう。
宗教・宗派による違いへの配慮
日本の葬儀は仏式が多いですが、神式やキリスト教式など、宗教によってアクセサリーのマナーも異なる場合があります。
- 仏式:数珠を持参(宗派により形状が異なる)
- 神式:数珠は不要、より簡素な装いを心がける
- キリスト教式:十字架のアクセサリーは信者のみ
- 無宗教:一般的なマナーに準じる
数珠は仏式の葬儀では重要なアイテムですが、アクセサリーではなく仏具として扱います。自分の宗派の数珠を持参し、他人に貸し借りしないのがマナーです。
また、宗教によっては真珠のアクセサリーも不要な場合があるため、事前に確認することをおすすめします。迷った場合は、より控えめな装いを選ぶことで、失礼にあたることはありません。
これからの葬儀マナーを考える
お葬式の身だしなみマナーは、時代とともに少しずつ変化しています。基本的な礼儀は変わりませんが、多様性への配慮や実用性も重視されるようになってきました。
大切なのは故人を偲び、遺族の気持ちに寄り添う心です。形式にとらわれすぎず、相手を思いやる気持ちを第一に考えれば、自然と適切な装いができるはずです。今回ご紹介したマナーを参考にしながら、状況に応じて柔軟に対応していただければ幸いです。
葬儀の準備で迷ったときは、葬儀社のスタッフに相談することも大切です。最近では「小さなお葬式」のように、事前相談を無料で受け付けている葬儀社も増えています。服装やマナーについても丁寧にアドバイスしてもらえるので、不安な方は活用してみてはいかがでしょうか。