みなさんこんにちは。税理士の秋山です。
今日は「コロナで困窮してる人が、親から生活費や学費、事業資金の援助を受けたら、贈与税の対象になるのか?」という話をします。
目次
コロナの影響で経済が深刻な状態
2020年5月の4日、政府は当初4月の16日から5月の6日までを期限としていた、緊急事態宣言を、5月の31日まで延期するという決定を下しました。
これにより、5月6日までを耐えきれば経済活動が再開できると思っていた各業界は、いよいよこれからの活動をどうするのか、難しい決定を迫られる状況になってきました。
実際に5月2日の時事通信の記事にて、宣言が1ヵ月延長された場合、個人消費がさらに大きく冷え込み、もともと5月6日まで緊急事態宣言が続いた場合の失業者の数の予測が、36.8万人だったのに対し、5月30日まで緊急事態宣言が続いた場合、新たな失業者は約2倍の77万人に増える、といった厳しい予測が出ています。
また、もし5月31日に全国の緊急事態宣言が解除されたとしても、今後1年間は世界的に非常に厳しい状況が続きそうです。
そんな中で、今経済的に疲弊している私達が、日常生活や授業、学業を少しでも続けていくために、現在国からどんな支援を受けることができるのか?国からの支援では足りない場合、親からの経済的な援助を受けたら、贈与税が掛かるのか?今日はこの2つのテーマについて解説をしていきたいと思います。
生活や事業が苦しい人には国からどんな支援策があるの?
まず今現在、生活や事業が苦しい人には、国からどんな支援策があるのか?ですが、ざっと下の表のようなものが、国からの助成金、補助金、給付金、融資として受けることができます。
この辺りの国から受けられる支援策に関しましては、税理士ユーチューバーのヒロ税理士さんがかなり詳しく解説してくださっているので、国の支援制度を検討しているという方は、ヒロ税理士の動画をぜひ一度ご覧になってみてください。
親からの援助を受けたら贈与税が掛かるの?
ですがこの国からの支援を受けてもなお、生活や事業の存続が苦しいという方は、少なくないと思います。
その場合、親からお金の援助を受けたら、そのお金には贈与税は掛かるんでしょうか?
「こんな状況なんだから、いくらなんでも国も親子間の助け合いで税金なんて書けないでしょ」と思いたいのですが、現状では国税庁からはコロナの影響を鑑みて、親子間での贈与には税金を掛けませんと言ったアナウンスは出ておりません。
なのでここからは親子間で生活の援助があった場合には、贈与税が掛かるのか?祖父母から孫への学資の援助や、親から子への子育て資金の援助があった場合には、贈与税が掛かるのか?親から子へ事業資金の援助があった場合には贈与税が掛かるのか?という3つのパターンについて解説をしていきたいと思います。
親子間で生活費の援助があった場合には贈与税が掛かるのか?
まずは親子間で生活費の援助があった場合には、贈与税が掛かるのか?ですが、この場合には安心してください。贈与税はかかりません。
そもそも贈与税には、1月1日から12月31日までの間に、110万円以内でお金や財産をもらったとしても、贈与税は課税されませんよ、という年間110万円の基礎控除というものがあるので、親子間で行われる資金の援助や、仕送りもこの年間110万円までの中で行う分には、全く何の問題もありません。
では年間110万円を超える生活費の贈与を受けた場合には、どうかと言うと、安心してください。これも贈与税はかかりません。
その理由なんですが、相続税法の中には下の画像のような目的で行われた贈与に対して、課税しませんよと規定された条文が定められており「親と就労前の子供や、子供と退職後の親など、これら両者間で行われた教育費や生活費に充てるための資金については、それが通常の仕送りの範囲内であれば、贈与税が課税されることはありません。」とこのように法律で決まっているんですね。
ですので、1つ目の親子間で生活費の援助があった場合には、贈与税がかかるのか?については贈与税はかかりません。
これは別に親から子供への仕送りに限った話ではなく、祖父母から孫への教育費の都度払いや、子供から親への仕送りに関しても、税務署は課税をしておりませんので、ご安心ください。
しかしですね、相続税法第21条の3に規定されている、通常の生活の範囲が、うちの家族の場合、通常の範囲がどこまでなら OK なのか、どこからがアウトなのか、というのが、その家庭の生活水準や仕送りをする側、される側の経済状況によっても判断が変わってきますので、ご自身で判断されて将来的に問題になるよりも、一度相続税専門の税理士に「うちの場合の仕送りは援助は問題がないのか?」などを相談してみるのも良いかもしれません。
学費の援助や、子育て資金の援助には贈与税が掛かるのか?
次に祖父母から孫への学費の援助や、親から子への子育て資金の援助があった場合には、贈与税がかかるのか?については、先程説明したように教育資金については、必要な都度の援助には贈与税は課税されませんし、一括で贈与したいという場合も1,500万円までなら、非課税で贈与ができるという教育資金の一括贈与の特例というものがありますので、それを使えば最大で1,500万円までの贈与には税金がかかりません。
また子育て資金についても、必要な都度の援助には贈与税は課税されませんし、平成25年4月1日から施行された結婚子育て資金の一括贈与の特例を利用すれば、最大で1,000万円までの贈与には税金がかかりません。
事業資金の援助があった場合には贈与税が掛かるのか?
さてここまで親子間で生活の援助があった場合や、親子間や祖父母と孫の間で子育て資金の援助や、教育資金の援助があった場合には、贈与税がかかりません、というふうに説明してきましたので、次の親から子へ事業資金の援助があった場合にも、贈与税がかからない方法はあるのか?といえば、残念ながら現状ではありません。
親子間での事業資金の援助となると話は変わってくるんですね。
コロナで営業を自粛しているので、事業収入はない。なのに店舗の家賃や従業員の給料も払わなければならない。3月から4月までの2ヵ月は蓄えでどうにか凌いできたけども、これ以上は無理だという場合、賃料や従業員の給料に充てるために、親からの援助に頼るしかないという方もいらっしゃるでしょうが、この場合、親から年間110万円を超える事業資金の援助を受けると、バッチリと110万円を超え部分に対して、贈与税の課税対象になります。
事業を続けていくための資金という特性上、受け取る金額も少なくないでしょうから、子供が親から一方的に事業資金をもらうという形をとりますと、結果的に多額の贈与税が課税されることになります。
ではどうすれば高額な贈与税を回避できるのか?ですが、皆さんにとっていただきたい対応策としては、親子間で金銭消費貸借契約を結ぶというものがあります。
要は親子間でのお金の貸し借りですね。親が子に事業資金を貸しとは親からその資金を借りるんです。
あくまでもこれは親子間での貸し借りですから、贈与にはならずもちろん贈与税はかかりません。
しかしここで2点ほど気をつけておくべき注意点があります。
1つ目は親子間でお金の貸し借りを行う際には、必ず金銭消費契約書を作成することです。
なぜなら後々税務署からお金の貸し借りの事実を怪しまれた際、いわゆる証拠として提出するために、きっちりと契約書を作って残しておくことが肝要なんですね。
また気をつけるべき2つ目は、親子間での金銭消費貸借契約を結ぶ場合、ある時払いの催促なしという形での契約は絶対にしないことです。
なぜなら普通赤の他人とのお金の貸し借りを行う場合、ある時払いの催促なし何ていう契約は絶対に結ばないですよね。
必ず返済期限や月々の返済金額などを契約の時に決めます。
そしてこれは親子間のお金の貸し借りでも同じなんです。
なので税務署もこの親子間の金銭消費貸借については、子は親にきちんとお金を返済しているのかどうかを厳しくチェックするんですね。
ですから親子間でお金の貸し借りを行う際には、必ず金銭消費貸借契約書を作成する、ある時払いの催促なしという形での、契約は絶対にしないこの2点を絶対に守っていただきたいと思います。
ではここからは親子間での金銭消費貸借契約を結ぶ場合、一体どういった点に注意して契約書を作成すれば、税務署から贈与と指摘されず済むかを解説していきます。
金銭消費貸借契約で重要な4つのポイント
親子間の金銭消費貸借契約の場合に重要なのは、下の画像の4つのポイントです。
①金銭消費貸借契約書を作成する
②返済期間は通常考えられる期間とする
③あらかじめ決めておいて、返済金額をきちんと決めた日時に返済する
④返済は現金で行わず、後で証拠が残るよう銀行振込とする
など高額な贈与税が課税されないような対処を契約書の作成時点で行うことをお勧めします。
その際に借りる金額はどうするのか、1回の返済金額はいくらにするのか、返済期日は何年にするのか、借り入れ利息はどうすればよいのかと、色々と悩まれるでしょうが、常識的な借入金額、1回の返済金額、返済期間で作成し、その通りに返済を行えば税務署は贈与税を課税しません。
また仮にコロナの影響で、1回目2回目の返済が滞ったとしても、それを理由に贈与税をかけるというようなことは、税務署はしないと思います。
税務署はそこまで鬼ではないですからね。
しかし繰り返しになりますが、税務署は親子間の金銭消費貸借の実態をチェックした場合、返済の確認が取れず、契約書も交わしていないのであれば、それは実質贈与であるとみなします。
いくら税務署の指摘に対し、親は子供からきちんと返済してもらっている、子供は親にきちんと返済していると反論したところで、ある時払いでほんの少額だけ返済しているという実態なら、それは正しい金銭消費貸借の形をとっていない、贈与であると見るんです。
また税務署からの贈与税の決定処分に納得いかないとして、国税不服審判所及び裁判所に判断を求めたとしても、元々金銭消費貸借契約書を作っていなければ証拠がありませんし、仮に契約書を作っていたとしても、実態が伴っていなければ、税務署有利の判断が出る可能性が極めて高いんです。
ですから国から補助金をもらったが、もう先月分の経費や給料に使ってしまった。今後の事業資金はどうにもならないという場合に、親からの援助を考えている方、もしくは既に援助をもらった方は、きちんと親子間での金銭消費貸借契約書を作成しておく必要があるので忘れないでください。
また金銭消費貸借契約書を作ったとしても、4つのポイントをきちんと押さえて契約書を作らないと、税務署から贈与を受けたとみなされますので、気をつけておいてください。
110万円の贈与の他に10万円の給付金を貰ったら贈与税は掛かる?
また先日私の動画を見てくださった方から、年間110万円の贈与の他に、国からの10万円の給付金をもらったら贈与税はかかりますか?という質問がありました。
具体的な状況としましては、お父さんが実家を離れて大学に通っている弟さんの銀行口座に、年間110万円の基礎控除額をオーバーしないように、お金を振り込んでいて、今回の定額給付金10万円を世帯主である父から弟に送金した場合、年間110万円の仕送りと合算すると120万円になります。
その場合弟には贈与税は発生するのでしょうか?というものです。
この場合なんですが、弟さんは贈与税を払う必要はありません。
と言いますのも、国から支給される10万円は元々は各自のお金です。
手続きの関係上、弟さんの分の給付金も世帯主であるお父さんの口座に一旦振り込まれますが、それを弟さんの口座に送金しても、年間110万円の贈与に合算されることはないんです。
またこの弟さんの場合、ご両親から年間110万円の範囲内での仕送りを受けていらっしゃるということですが、まだ学生ということでしたら、学費や生活費に使うお金であれば年間110万円を超える仕送りを受けても、贈与税はかからないんですね。
これは前半でも説明しましたが、相続税法第21条の3第1項第2号において「親と就労前の子供や、子供と退職後の親のなど、これら両者間で行われた教育費や生活費に充てるための資金については、それが通常の仕送りの範囲内であれば、贈与税が課税されることはありません。」というふうに定められていますから、この弟さんがもし医大などに通われて高額な授業料がかかるという場合には、お金が必要な都度、両親が弟さんに援助をしたのなら、たとえその額が年間110万円を超えていたとしても、贈与税は課税されることはないんです。
この動画を見られている方の中にも、今年110万円の贈与を親から受けたけれど、さらに定額給付金の10万円を、親から受け取ったら私には贈与税がかかるのと疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、国から支給される給付金10万円は、あくまでも世帯主の口座に一旦振り込まれるというだけで、もともとはあなたのお金ですから、年間110万円の贈与に合算されることはありませんので安心していただければと思います。
今日は「コロナで困窮している人が、親から生活費や学費事業資金の援助を受けたら贈与になるのか?」という話をしました。
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また今回の動画と同じジャンルの「知って得する贈与シリーズ」については再生リストにまとめていますので、是非ご覧になってみてください。ありがとうございました。
秋山清成
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