お墓の購入は、一生に何度もあるものではなく、数世代に一度の大きな買い物ですよね。
そこでこの記事では、お墓の購入費用のポイントを石屋さんが監修のもと解説していきます。
なお、この記事では
- 永代使用料
- 墓石代
- 管理費用
目次
①永代使用料
お墓の土地は購入するものではなく、借りるものです
お墓を建てるための墓地を購入するために支払う費用を「永代使用料」と言います。
永代使用料とは言いますが、お墓を建てる土地を購入できるわけではなくて、レンタルできる権利を購入できるという意味です。
管理費を支払い続けている限りは、永代に渡って土地を使用することができる、そのような権利です。
少しややこしいかもしれませんね。
なお家を建てる土地は、不動産として売り買いできますが、お墓の永代使用はできません。
そのため万が一、お墓を維持できなくなった場合には、墓地の管理者に返すことになります。
永代使用料は、土地と同様に人口の多い都市部で価格が高くなりがちです。
東京の一等地にある青山霊園では、4平方メートルで1,000万円を超える区画もあります。
土地に余裕のある地方では、1区画数十万円から販売されています。
②墓石代
墓石にかかる費用は、大きくわけてこの3つです。
- お墓の石代
- 彫刻費
- 工事費
なかでも費用がかかるのが、お墓の石代です。
石の種類によってかなりの開きがあります。
たとえば香川県で産出される庵治石(あじいし)があります。石のダイヤモンドとも称されるものです。
この庵治石でつくられた墓石は、かなり高額で取引されています。
お墓の石代は石の種類と使用量に左右される
お墓の石に掛かる費用は、大きくわけると、
- 石の種類
- 石の使用量
全国で好まれている石の種類には違いがあります。
また、お墓の形も様々です。
石塔だけを建てる地域があります。
外柵と呼ばれる石でできた柵をグルっと回す地域もあります。
さらに石の価格を細かく分析すると、
- 採掘のしやすさ
- 運搬距離
- 生産力
- 人件費
- 製品化率
- 御影石の特性
現在の市場に流通している墓石の9割が「中国産」になりますので、このあとは「国産墓石」と比較しながら説明していきます。
採掘のしやすさ
中国には比較的大きな採掘場があり、大型の機械を導入して、多くの原石を産出しています。
一方、日本国内では、御影石の採掘場は小規模であり、産出量も少なくなるので経費がかかるのが難点です。。
運搬距離
中国の「福建省厦門」は、世界の石材加工場として有名です。
この福建省厦門に、
- アフリカ
- 欧州
- インド
- アメリカ
そして加工され、再び、福建省厦門の港から船によって輸出されます。
そのため、
- 福建省厦門までの原石の移動距離
- 加工した墓石の移動距離
※日本との位置関係はこちら↓
その点では運搬距離が近い「日本で産出される御影石を用いた国産墓石」の方が、日本ではメリットが大きいと言えそうです。
人件費と生産力
かつては日本で加工されていたお墓でした。
しかし、その他の工業製品と同様に人件費の安い中国に生産拠点が移動しています。
いまや中国は、世界中の「石材の加工工場」です。
設備投資も盛んです。日本向け墓石の生産能力も飛躍的に伸びています。
ただしここ10年ぐらい、お墓の需要自体が大きく減退し続けていることもあり、日本向けの石材加工工場はかなり減りました。
それでも日本と比較するとまだまだ生産力があるので安く提供できています。
とはいえ、中国でも経済発展をして人件費が上がってきたこともあり、墓石の価格は以前よりも高くなってきている実情もあります。
製品化率
天然の素材である御影石は、鉱物の集まりです。1つとして同じ品質のものがありません。
鉱物の偏りにより模様が出たり、キズが入ったり、黒い玉が出たりします。
これをどのレベルまでより分けるのかは、生産者の判断に委ねられます。
中国では、国民性もあるのですが、お墓の製品としての品質にそこまでこだわらないということがあります。
妥協点が低く、生産性を重視する傾向にあります。
日本で加工された墓石は、磨きの工程を多くしたり、精度が高かったりと丁寧に仕上げる分だけ費用がかかります。
ちなみに、品質の悪い石を使用したからといって、直ぐにお墓が崩れるようなことはありません。
御影石は100年単位で風化していくものであって、簡単に壊れるようなものではないからです。
ただし、数年から数十年単位で見ていくと風化の速度には違いが出てきます。
御影石の特性
目の細かい御影石ほど、見た目が良く人気がありますが、希少性が高くなります。
また、目が細かいと石目が安定せず、墓石として製品にしにくいので高額になりがちです。
白御影石と呼ばれる花崗岩(かこうがん)と比較して、黒御影石と呼ばれる斑レイ岩や閃緑岩(せんりょくがん)は、硬質で加工がしにくく、その分だけ加工手間が掛かり経費もかかります。
彫刻費
墓石に刻む文字などの彫刻費は、文字と彫り方によって変わります。
例えば、文字を有名な書家さんに依頼すると高額になります。
最近では、安価に済ませるために日本で刻んでいた彫刻を中国で施すケースも増えてきました。
可愛らしいイラストを彫り、キレイにカラーで色を染めると費用が掛かります。
彫り方にも様々な種類があります。
通常のサンドブラストで彫る以外に、
- 立体的に陰影をつけて彫る立体彫り
- 彫刻刀で刻む薬研彫り(やげんぼり)
- 文字の底を叩くサライ(サラエ)彫り
工事費
工事費は、一般的な霊園であれば価格はそこまで変わりません。
ただし重い御影石を扱うので、狭い場所や斜面などの施工のしずらい場所だと施工が大変になり余分に経費が掛かります。
また、地盤が軟弱だと杭を打つなどの地盤改良が必要になります。
地震大国である日本では、東日本大震災や阪神淡路大震災などの大型の地震を経て、耐震性へのニーズも高まっています。
実際に、震災によりお墓にも相当な被害がでました。
その分、免震工法などにお金を掛ける石材店も増えてきました。
墓地面積の違いによっても価格に差が出ます。
小さい墓地だと、材料費と比較して人件費の占める割合が大きくなります。
③管理費(アフターケア)
お墓は、数世代にわたって維持していくことを考えるのが普通です。
そのため「管理費」や「メンテナンスにまつわる費用」まで考慮することが大切になります。
お墓を建てた後に墓地の共用部分のメンテナンス等に充てる費用として、管理費が年間数千円から数万円掛かります。
未納が続くと永代使用権が取り消しになる可能性があります。
注意が必要です。
また、ご家族が亡くなってお墓に納骨する際には、その都度、石塔や墓誌(碑)に俗名や戒名を刻む追加彫刻が必要になります。
追加彫刻は地域差があります。
目安として3万円から5万円程度、あわせて納骨費用は2万円から3万円程度になります。
魂入れ、開眼供養について
家を建てる前に地鎮祭を行いますよね。
お墓を建てる場合にも宗教的な儀式があります。
お墓を建てると、
- 御霊入れ
- 魂入れ
- 開眼供養
- 建碑式(建碑法要)
などと呼ばれる墓石に魂を入れる儀式を行います。
そのためお坊さんへのお布施が必要になります。
まとめ
お墓は、住宅や自動車などと並び、かなりの高額商品になります。
しかし、数世代に渡って1度建てるものであり、あまり馴染みのない方が多いです。
お墓を建てるに当たっては、
- 永代使用料
- 墓石代
永代使用料は、管理料を支払い続けている限りは永代に借りることのできる権利に対して支払います。
不動産である土地とは違い、売り買いできないのでご注意ください。
墓石代は、天然の御影石を扱うものであり、石の種類と量に大きく価格が左右されます。
中国は世界の石の工場であり、労働力が安く生産力があり、製品化率も高いので比較的安価に墓石を提供できます。
現在、市場に出回っている墓石の9割が中国産になります。
管理費は、墓地の共用部分の管理維持に使用されるもので、毎年数千円から数万円の金額を支払います。
また納骨や追加彫刻の際には、その都度、お付き合いのある石材店に依頼するための費用が発生します。
お墓の購入をトータルで考える場合には、のちのちに掛かる費用まで含めて検討することが大切になります。
なお、お墓の全国の平均総額は、永代使用料・墓石代・その他費用を含めて174.1万円にもなります。(2018年 鎌倉新書調べ)
※墓地の取得費用や広さは地域によって異なるので、地域差があります。
新しく家を建てる場合には、土地を購入してから、その上に家を建てますが、お墓もちょっと似ています。
家のために掛かる費用として、生活をしていく上で、税金・保険・修繕費などが掛かります。
家の購入にまつわる費用=土地代+家屋代+維持費
お墓を建てる場合にも墓地を使用する権利である永代使用権を取得するために永代使用料(えいたいしようりょう)を払い、お墓を建てます。
さらに維持していく上で、管理費やメンテナンス費用、また追加戒名彫刻や納骨費用などの費用が掛かります。
墓地は正確には、購入するものではなく、永代供養契約という賃貸に近いものです。
そして、御影石という天然の素材を使用する墓石は、少し特殊な事情があります。
宝石にダイヤモンドやルビーにサファイアと種類があるように、御影石にも希少性から価格に違いがあります。
また、お墓は将来にわたって管理費などが発生するので、それらも含めてトータルで考える必要があります。