家族や近しい友人だけで穏やかに別れを告げる「家族葬」が注目されています。参列者を絞ることで費用と準備の負担を抑えつつ、故人らしさを丁寧に表現できる点が支持される理由です。本稿では、一般葬との違いを整理しながら、準備から当日の進行、葬儀後の手続きまでを順を追って説明します。
目次
一般葬と家族葬の違いを知る
一般葬と家族葬で最も大きな違いは参列者の規模です。一般葬は仕事関係や地域の方々まで招くため百名を超えることもありますが、家族葬は おおむね30名以内。参列者が少ないぶん会場や装飾を自由に選びやすく、費用の変動要因も明確です。人数に比例して増える受付業務や挨拶の回数が減るため、遺族の心身的な負担も軽くなります。こうした差を踏まえ、自宅や家族の事情に合う形式を選ぶことが第一歩となります。
家族葬を検討する際は、全国規模で定額プランを展開する大手サービスのひとつ【小さなお葬式】で費用感を確認しておくと比較がしやすくなります。
参考 Web資料請求小さなお葬式参列者の範囲と招待マナー
一般葬は地域や職場関係者にも広く参列を呼び掛けますが、家族葬では参列をお願いする相手を親族やごく親しい友人などに絞ります。
ただし参列を招かなくても、会社や知人へ訃報を知らせるのが一般的です。家族葬の案内状には「近親者のみで執り行います」と明記し、香典や供花を辞退するかどうかを添えると問い合わせを最小限に抑えられます。
参列人数・規模・会場の違い
一般葬は参列者が 50〜200 名規模になることも多く、駅近の大型斎場や公営斎場を押さえ、駐車場や控室を十分に確保する必要があります。
一方、家族葬は 10〜30 名程度が目安で、小規模ホールや寺院の客殿、自宅リビングなど選択肢が広がります。人数に合った会場を選ぶことで祭壇の装花や席の配置もほどよい規模に整えられ、準備時間と費用の双方を抑えられる点が特徴です。
費用の内訳と差が生まれるポイント
家族葬の平均総額は約105万円、一般葬は約161万円([1]2024年鎌倉新書調査)。内訳を見ると、式場・祭壇などの会場費が両形式とも4割前後を占めますが、差が大きいのは 料理・返礼品・人件費 の部分です。
主な項目 | 家族葬(10〜30名) | 一般葬(50〜200名) | 差が生まれる理由 |
---|---|---|---|
会場・祭壇装飾 | 40万〜55万円 | 60万〜80万円 | 大型会場と祭壇規模の違い |
料理(通夜振る舞い・精進落とし) | 10万〜20万円 | 40万〜60万円 | 1人あたり4,000円前後×人数 |
返礼品・会葬礼状 | 5万〜10万円 | 20万〜30万円 | 香典返し・会葬返礼品が人数に比例 |
人件費(司会・受付補助ほか) | 5万〜8万円 | 15万〜25万円 | 受付係や案内スタッフの追加 |
宗教者への謝礼 | 10万〜20万円 | 10万〜20万円 | 形式が同じなら大差なし |
車両・搬送費など | 5万〜8万円 | 8万〜12万円 | バス・ハイヤー台数の違い |
料理と返礼品の人数分だけで30〜40万円、スタッフ人件費でさらに約10万円上乗せになることが多いため、見積書では料理と返礼品の「1人あたり単価」に注目すると差がつかみやすくなります。

遺族の心理的・時間的負担を整理する
家族葬は参列者が少ないため、受付対応や焼香案内、弔電披露といった当日の気配りが大幅に減り、長時間の立ちっぱなしや挨拶回りによる疲労も軽くなります。準備面でも会場レイアウトや料理数を短時間で決められ、打ち合わせ回数が少なく済みます。
一方、参列を控えてもらった職場・知人には葬儀後に訃報やお礼状を送る必要があるため、宛名リスト作成や郵送作業の時間をあらかじめ確保しておくとスムーズです。
家族葬の準備ステップ
訃報から葬儀当日まではおおよそ3〜5日と時間的余裕がありません。
まず葬儀社を選び、火葬場の空きを確認しながら日程を仮決定。参列範囲を確定し、電話とメールで連絡します。書類や物品をチェックリストで管理し、担当を割り振れば準備漏れを防げます。
要点を押さえれば、短期間でも落ち着いて対応できます。
葬儀社とプランの選び方
複数社から同条件で見積もりを取り、式場使用料・人件費・返礼品・料理の内訳を比較します。深夜搬送や車両費など追加項目も確認しましょう。複数見積もりをまとめて取りたい場合は【安心葬儀】の一括比較サービスが便利です。
参考 葬儀社一括見積サービス安心葬儀日程・式場・火葬場の調整ポイント
火葬場の空きが基準になるため、まず葬儀社に依頼して希望日の予約可否を確認します。
次に、住職や司式者の都合、親族の移動時間を考慮しながら通夜・告別式の順序や時刻を決定します。式場は複数の候補を比較し、参列者の年齢層や交通手段に合った場所を選ぶと移動負担を抑えられます。混雑しやすい友引前後や週末は早めに埋まるため、日程を複数案用意しておくと調整がスムーズです。
また、式場と火葬場が離れている場合は、霊柩車・マイクロバスの手配時間も忘れずに組み込みましょう。
参列者の範囲決定と連絡手順
招待は「二親等までの親族+故人と特に親しかった友人」を基本線とし、家族で相談してリストをまとめます。親族には電話で訃報を伝え、その場で参列可否を確認します。
参列を呼び掛ける親しい友人には、個別にメールやSNSで連絡し、「家族葬である旨」「香典・供花の方針」「会場アクセス情報」「参列可否の返信期限」を明記します。遠方者には交通・宿泊案内を添えると問い合わせが減り、最終人数の確定と手配がスムーズに進みます。
必要書類・物品チェックリスト
死亡診断書や火葬許可証などの公的書類、遺影データと写真、現金・銀行印、香典帳、筆ペン、会葬礼状と返礼品といった基本項目は、紙のチェックシートに担当者と保管場所を書き込みながら進めると抜け漏れを防げます。
もし「わかりやすいリストがほしい」「何をいつ準備すればよいか知りたい」という場合は、家族葬向けの書き込み式ガイドブックを無料で送付してくれる 【よりそうお葬式】などの葬儀会社へ資料請求をするのもよいでしょう。
家族葬当日の進行
家族葬の当日は参列者が限られるため、式全体が比較的コンパクトに進みます。たとえば仏式では通夜が読経と焼香中心で九十分ほど、翌日の葬儀・告別式は弔辞と花入れを含めて二時間前後。無宗教式は黙禱と献花主体で一時間以内に収まる例が多く、参列者一人ひとりが故人と向き合う時間をゆったり確保できます。
受付や弔電披露を簡素にできるぶん長時間立ち続ける負担も少なく、高齢の親族にもやさしい進行です。式の内容と所要時間は前日までに家族と葬儀社で共有し、役割分担や移動の段取りを確認しておくと安心です。
開式前の準備と導師への挨拶
遺族は開式60分前を目安に式場へ集まり、祭壇装飾と席次、焼香順位などをスタッフと最終確認します。僧侶へ渡す読経布施と御膳料は新札を避け、袱紗(紫またはグレー系)に包んで控室で手渡します。
通夜・葬儀・告別式の流れ
流れは一般葬も家族葬もほぼ同じです。
家族葬では参列者が少ないため焼香や弔辞の時間が短縮され、通夜振る舞いを軽食や折詰に替えるなど所要時間と準備を柔軟に調整できます。時間配分や省略の可否は参列人数と式場の事情を踏まえ、葬儀社と事前に相談するとスムーズです。
お別れの儀と棺への花入れ
火葬炉は 800 ℃ 前後の高温になるため、溶け残ったり爆発・有害ガスを発生させる物は棺に入れられません。例として、眼鏡や腕時計などの金属類、ビン・食器といったガラス製品、スプレー缶・乾電池、プラスチックやビニール製品、厚手の寝具や大量の書籍・果物などが自治体の火葬場案内で禁止品に挙げられています。禁止項目は火葬場ごとに細部が異なるため、事前に確認しておきましょう。
季節の生花や手紙、思い出の写真を中心に選ぶと安全かつ温かな雰囲気になります。
出棺・火葬・精進落としの流れ
出棺時は喪主が位牌、遺族代表が遺影を持ち、霊柩車で火葬場へと向かいます。火葬後の収骨では、遺骨を二人一組で箸から箸へ受け渡しながら骨壺に納め、故人を家へ迎える準備を整えます。
精進落としは火葬場から戻った後に行う会食で、1 人あたり 3,000〜5,000 円が相場です。料理は会席膳・折詰弁当・仕出しの3パターンが多く、人数を正確に把握しておくと食材ロスや追加料金を防げます。折詰を持ち帰り形式にすると会場費と配膳人件費を抑えられ、遠方参列者の負担軽減にもつながります。
葬儀後の手続きと心のケア
お別れが終わっても、役所への届け出や相続の準備、香典返し、遺品整理などやることは続きます。まずはおおまかな期限を把握し、無理のない順番で進めるのが負担を軽くするコツです。
死亡届は7日以内、健康保険や年金の手続きは14日以内が目安とされます。銀行口座は凍結されるため、公共料金の引き落とし先を早めに変更しておくと安心です。
気持ちの面でつらさを感じたときは、自治体の相談窓口やオンラインカウンセリングを活用する方法もあります。必要に応じて周囲の支援を借りながら、焦らず一つずつ片付けていきましょう。
役所・金融機関での諸届と期限
死亡届は死亡地または本籍地の役所へ7日以内に提出します。年金停止、健康保険喪失、運転免許返納などの手続きは14日以内を目安に実施します。
銀行口座凍結後は、相続手続きに必要な死亡記載のある戸籍謄本一式と、複数の金融機関に共通で提出できる法定相続情報一覧図(法務局で無料取得可)を準備すると手続きが円滑に進みます。
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香典返し・挨拶状のマナー
香典返しは四十九日法要後に発送します。金額は香典の半額前後が目安ですが、地域によっては三分の一をお返しする場合もあります。品物はカタログギフトやタオル・菓子など常温保存できる消耗品が無難です。
挨拶状には「忌明けのご報告」とともに香典への御礼を記し、辞退された方へも感謝の一文を添えます。送り主は喪主名義とし、住所変更がある場合は併記すると今後の連絡がスムーズです。
遺品整理をスムーズに進めるコツ
遺品は一度に片付けようとせず、作業日を数日に振り分けて部屋別・品目別に家族の担当を決めておくと、負担を抑えられます。
大型の家具や家電については、リサイクル業者に買い取りや回収を依頼することで処分コストを削減可能です。アルバムや重要書類はスキャンしてクラウドに保管すれば、収納スペースを取らずに家族間で情報を共有できます。
グリーフケア
グリーフケアとは、死別など大きな喪失を経験した人が感じる深い悲しみ(グリーフ)を整理し、生活の中で受け入れていくための支援全般を指します。近年は自治体の傾聴ボランティア、病院や寺院の遺族会、24時間対応のオンラインカウンセリングなど、無料または低額で利用できる窓口が増えています。
日常のリズムを保ちながら定期的に気持ちを言葉にする機会を持つことで、悲嘆を抱え込みにくくなり、心身の負担も軽減しやすくなります。
年忌法要の計画
年忌法要は故人の祥月命日に合わせて営む追善供養で、一周忌と三回忌が大きな節目とされています。命日に近い休日を選び、菩提寺に読経を依頼し、親族中心に十数名ほど招くのが一般的な流れです。準備は半年ほど前から始め、御布施・塔婆料・会食費を把握しておくと段取りが円滑になります。
移動負担や費用を抑えたい場合は、オンライン参列を組み合わせたり、会食を折詰弁当に替える選択肢もあります。
一周忌・三回忌・七回忌…年忌法要と弔い上げをわかりやすく解説
まとめ
家族葬は参列範囲を絞り、費用と準備の負担を抑えながら故人らしさを形にできる柔軟な形式です。まず一般葬との違いを押さえたうえで、準備の手順・当日の進行・葬儀後の手続きをひと通り把握しましょう。その後、自宅の事情や予算、宗派に合わせて最適な送り方を選んでください。
家族や友人と向き合う静かな時間は、思い出を深めると同時に遺族の心の回復を支えます。相談窓口や見積もりサービスを早めに活用すれば手続きがスムーズになり、行政手続きや香典返しの準備など事後の段取りにも余裕が生まれます。将来のライフイベントにも備えられ、心配事を減らせる点も家族葬の大きな利点です。