現在、最も安い葬儀は通夜・告別式を行わず火葬場へ向かう直葬だと言われています。直葬はプランにもよりますが、大体20万円前後のものが多く、お坊さんに読経してもらうとなるとお布施もさらにかかります。
最近は葬儀も自由化が進み、自由葬などでは自由に葬儀をプロデュースする人も出てきています。
一方で、従来の葬儀に生前に用意していた骨壷などを持ち込んで少しでも料金を下げようとする人もいます。
葬儀業者に頼らず自分で葬儀を行う「DIY葬」という言葉まで生まれています。
そこで今回は、「葬儀を自分でやったらどこまで安くできるのか」をテーマに自力で火葬を行った場合いくらぐらいかかるのかを検証していきます!
目次
前提条件と注意事項
仏式ではなく無宗教
お坊さんに読経をしてもらうことなどはせず、無宗教による葬送になります。
お寺に先祖代々の墓地があり、そこに納骨を考えているのであれば、基本的にはお葬式は付き合いのある寺に読経をお願いしなくてはなりません。
お寺へのお布施などは全国平均で約45万円かかると言われており、今回は検討の対象外です。
必要最低限のもので家族のみで送る
今回は近親者のみで通夜や告別式を省いた形の葬儀を考えます。
通夜と葬儀も元々仏教由来ですし、今回は会葬者の参列も考えないので省略します。
ですので、今回は火葬のみの「直葬」のような形の葬儀を検討していきます。
自分の葬儀にお金をかけないで!火葬のみの直葬(火葬式)の費用と流れ誰でも購入できるもので考える
例えば、棺なども本当の意味でDIYするならば、木材を買ってきて自作で作ることもできそうですが、
今回は誰でもできるということを踏まえて、購入できることを前提に考えています。
また、購入したものの領収書は大事にとっておきましょう!
病院からの搬送
まず必要なのが病院からの搬送です。遺体を預けるサービスがある病院もありますが、費用がかかるので基本的には別の場所へ搬送するのがベストです。
死亡診断書・コピー代
死亡診断書は保険外負担です。そのため、医師が設定した料金を収める必要があります。一般的には2,000円〜5,000円くらいです。また、保険会社などに提出が必要なこともあるので、数枚コピーをとっておきましょう。
病院によっては死亡診断書の値段が明示されている病院があります。Webなどに書かれていない場合には、医師に保険外負担について確認してみましょう。
また、自宅で亡くなる場合に備えて、自宅まで来てくれて死亡診断書を書いてくれるかどうかも確認しておきます。もし、自宅で亡くなった場合にかかりつけの医師がいない場合は、警察による死体検案が行われ、発行される書類も死体検案書となり、費用も1〜3万円前後に増えます。さらに、行政解剖が必要なケースでは解剖の費用を遺族が負担となる場合もあり、解剖費用が5万円前後にさらに上乗せされる場合もあるのです。
費用を抑える第一のポイントは必ずかかりつけのお医者さんに死亡診断書を書いてもらうことです。
死後処置(エンゼルケア)代
人は亡くなると全身の筋が緩むので、そのままにしておくと鼻や口、耳、肛門などの穴から体液が漏れてしまいます。
そこで、亡くなった場合は病院で穴に綿などを詰めてもらい、体なども綺麗に拭き取り、傷などが目立たないよう処置をしてくれます。これを死後処置やエンゼルケアなどと呼んでいます。
料金面で注意が必要なのは、これも一般的には保険外負担であり、料金は病院ごとに設定されているため、中には高額な料金もあるようですが、数千円〜1万円ほどで行っているところもあります。
死亡診断書とあわせて事前に料金を確認しておくようにしましょう。
また、次の搬送においては自力で搬送するため、特に詰め物に関しては徹底してもらうように注意が必要です。
搬送代
実は死亡診断書があれば個人で搬送してもよい
遺体は勝手に動かしたらいけないと思ってしまいがちですが、遺体の搬送は死亡診断書があれば個人で行っても違法ではありません。搬送する際に必ず死亡診断書や死亡届などの証明書を携帯するようにします。
遺体搬送に必要な措置
自力で搬送する際は遺体から体液が漏れる可能性があるので対策を講じる必要があります。
- 病院で詰め物を徹底してもらう
- 完全防水仕様のシーツで遺体を包む
- 遺体が動かないように固定する
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防水シーツはやはり体液を漏らさないために必要で、ベッド用の大きなものが3,000円〜5,000円で入手できます。
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搬送の際には遺体を横向きで固定する必要があります。葬儀社の搬送車であればストレッチャーがついていますが、通常の車なので転げ落ちないように物を置いたりする必要があるでしょう。
レンタカーはありか
自分や家族が車を持っていない、または遺体の搬送に向かない場合はレンタカーを利用するしかありません。
レンタカーであれば、バンや軽トラックなど、遺体を運ぶのにも便利な車種を使用することができます。
搬送のときだけピンポイントに借りることができれば費用もそれほどかかりません。
注意すべきはレンタカー会社の貸渡約款に遺体の搬送を禁止する旨がないかをよく確認しておくことです。
レンタカーなので、遺体の体液などで汚さないようにより一層の注意が必要です。
遺体を安置する
「死亡から24時間以内は火葬できない」という法律上の決まりがあるので、一晩はどこかに安置しなければなりません。
安置代
自宅に安置する場合はもちろん無料です。公営の斎場の安置室がある場合は、一泊2,000円〜3,000円程度で安置することもできるようです。民営の場合でも一泊5,000円~10,000円ほどで安置できるところもあるようです。
下記に自宅安置の場合のドライアイスの当て方を載せていますが、ドライアイスが手に入らなかったり不安という人は迷わず安置室を利用されたほうが安全です。
ドライアイス代
自宅安置の場合に必要なのが、保冷用のドライアイスです。基本的にドライアイスは1日に10kgほど必要で、3,000円~5,000円前後が必要です。
何よりも当日入手することが必要なので、ドライアイス取扱店のリストを確認して近隣で手に入るかを確認しておきましょう。
遺体へのドライアイスの当て方ですが、変色を避けるため直接当てることは避けて脱脂綿などに包んで当てるのが基本ですが、保存のために必要な場合は直接当てることもあるようです。
当てる箇所は顎の後ろと腹部、そして両脇です。
夏場はクーラーなどを効かせて、しっかり遺体を冷やしましょう。
参考までにAmazonに出品されているドライアイスの価格もどうぞ。
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棺代
火葬は遺体のまま火葬することはできず、必ず棺桶に入れる必要があります。棺桶は普通の葬儀では3万円から何十万円もするものまであります。
もちろん、規格どおりに木材を切って文字通りDIYで作れば材料費のみでも可能ですが、亡くなった直後に用意するのは現実的ではないでしょう。
棺は実はネット通販でも売られています。棺は火葬までに手元に届ける必要があるので、やはり事前に注文しておく必要がありますが、
ここでネックなのは収納にスペースを取ってしまうことです。
最近では組み立て式や折りたたみ式の棺が2万円〜3万円で手に入るので、事前に注文しておきましょう。
普段は組み立てずにしまっておけるし、もしものときには搬送のときにも利用することができます。
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死亡届・火葬許可証
遺体の安置が終わったら、役所に死亡届を提出し、火葬許可証を交付してもらいます。
火葬許可証の発行は自治体によって異なり、無料〜1,000円程度です。
死亡届は24時間受け付けているので夜間であっても提出しましょう。
火葬する
火葬場を予約する
火葬までの時間が長ければ長くなるほど安置の費用がかさむことになるので、できるだけ早く火葬ができるよう火葬場を予約します。
料金の面ではやはり住民票のある地域の公営の火葬場が安いです。3,000円〜1万円前後で火葬が可能です。
公営の火葬場が混み合っている場合は民営の火葬場を利用することもあります。東京都23区などは民営がほとんどで火葬料金は59,000円です。
火葬場への搬送も病院からの搬送と同じですが、棺桶を運ぶことも考えなければなりません。
棺桶に遺体を納棺するのがベストですが、スペース的に余裕が無い場合は火葬場で組み立てるようにすると良さそうです。
火葬後、骨壷へ
火葬後に拾骨をし、骨壷へ納めます。骨壷もネット通販などで購入することが可能で、1,000円のものから1万円前後のものまであります。
棺と同様に生前に準備しておくとよいでしょう。
骨壷は関東などでは全てのお骨を拾骨することが多いので、7寸のものを使う事が多いです。
逆に西日本などでは3~5寸の骨壷を購入することが多く、これは遺骨の一部だけを拾骨する文化の違いからです。
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全体で費用はいくらかかるのか
必要最低限の出費はいくらか
以上をもとにどんぶり勘定で試算をしてみます。自家用車で自宅に安置する場合の金額です。(ガソリン代などは省略)
品目 | 金額 |
---|---|
死亡診断書代 | 5,000円 |
エンゼルケア代 | 5,000円 |
紙おむつ | 1,500円 |
防水シーツ | 3,000円 |
ドライアイス2日分(20kg) | 10,000円 |
組み立て式棺桶 | 25,000円 |
骨壷 | 3,000円 |
役所手続き | 1,000円 |
火葬料金(市民料金) | 10,000円 |
総計 | 63,500円 |
レンタカーや安置所などを利用する場合は別途加算されますが、それでもかなり低金額に抑えられています。
それぞれの項目はもっと安いものもあり、さらに金額を抑えることもできるでしょう。
健康保険の葬祭費・埋葬料でさらに負担は下がる
個人が国民健康保険や会社などの健康保険、後期高齢者医療制度に加入していた場合には、葬祭費や埋葬料の申請を行うことで3~7万円の手当が支給されます。
つまり、火葬に必要な最低限のものを自分で用意しておけば、葬儀の負担は限りなく軽くなるのです。
これらの申請で注意が必要なのは、支給には葬儀社の領収書や喪主が確認できる会葬礼状など、健康保険加入者の故人に対して葬儀を行ったことを証明する書類が必要です。
今回のDIY葬では、火葬料の領収書などは書類は捨てずにとっておきましょう。
支給申請の際には国民健康保険の場合は市役所、健康保険の場合は加入している健康保険団体へ支給の可否や必要書類を問い合わせてください。
申請の期限は2年間あるので、葬儀後に改めて必要書類を確認すると良いでしょう。
まとめ
準備があれば、かなり費用を抑えることができる
棺など、すぐに必要な物さえ事前に準備出来ていれば、費用はかなり抑えられるようです。
葬儀社にやってもらっていたことを自分でやることになるのでそれなりに大変ですが、
葬儀は元々地域の葬式組などで自分たちで行っていたものなのです。
自分達で行うことで、葬儀の負担を軽くするというのは、実は昔のやり方に立ち返っているという面もあります。
必要なものは準備すればいい
今回は本当に最低限の火葬だけで済ませる方法を書きましたが、もし必要なものがあれば自分で買い足せば事足ります。
例えば、現在でも近親者のみで密葬を行い、後で偲ぶ会やお別れ会といった無宗教のセレモニーを開くことが増えてきました。
仏式によらないのであれば、火葬した後、落ち着いた頃にセレモニーを主催すればよいでしょう。
出費は増えますが、通常の葬儀に100万円以上かかることを考えれば安いものです。
大事なのは故人を偲ぶ気持ち
現在でも家族葬や直葬など、新しい葬儀の形が受けれられつつあります。
「どれだけお金をかけたか」ではなく「どれだけのことをしてやれたか」という考え方もこれから広がってくるのではないでしょうか。
いつかDIY葬が当たり前になる時代が来るのかもしれません。