みなさんこんにちは。相続専門税理士の秋山です。今日は「暦年贈与が大改悪!今後メインとなる生前贈与の手法はこれだ!」というお話をします。
2022年12月16日、令和5年度の税制改正大綱が公表されました。
今回の改正の目玉としては、なんといっても相続贈与の一体化による暦年贈与の改悪と、これまで使い勝手が悪かった相続時精算課税制度の大幅な改良です。
まず暦年贈与というのは、毎年1月1日から12月31日までのうち、年間110万円までの贈与なら非課税で財産を渡すことができるという現状においての最高の節税対策です。
ですがこの暦年贈与が、このたびの税制改正によって2024年1月1日より大幅に改悪されることになりました。
詳しい内容は本編で解説を行いますが、初めにみなさんに知っておいていただきたいのは、2024年1月1日以降もこれまでと同じ方法で年間110万円の贈与、もしくは年間110万円以上の贈与を繰り返していると、あなたの家の相続税額は将来確実に跳ね上がるということです。
ですが安心してください。今回の税制改正で暦年贈与が改悪された一方で、これまで使い勝手が悪くほとんどの方におすすめできなかった相続時精算課税制度という贈与制度が2024年1月以降、大幅に改良されることになりました。
はっきりと申しまして2024年以降は、将来の相続税対策を考えている大部分の方が、この相続時精算課税制度を利用することになると思います。
それを踏まえまして、今回のテーマは今後の相続税対策を考えていく上で非常に重要なお話となっておりますので、動画自体も2部構成でお送りします。
前編となる今回の動画では、最初に暦年贈与の加算期間が3年から7年へ延長されるという、今回改悪となった部分について詳しく解説を行った上で、実際に2024年以降も暦年贈与を使い続けた場合、将来どれくらい損をしてしまうのか?複数のモデルケースを使ってみていきます。
そして最後の章では、2024年以降は相続時精算課税制度が節税対策のメインになるという点について、相続時精算課税制度の概要の説明から、今回大幅に改良されたポイントについて詳しく解説を行っていきます。
また後編では今回の動画内容を踏まえた上で、結局あなたの家庭は、暦年贈与と相続時精算課税制度、どちらを使うべきか?年齢別、財産額別に、この家庭にはこの贈与がおすすめという具体的な内容についてお話した上で、相続時精算課税制度の始め方と始めるに際しての注意点、2023年中に行うべき駆け込み贈与の最適額についても解説をしていきたいと思います。
目次
①暦年贈与の加算期間が3年から7年へ延長(改悪)
最初に、暦年贈与の加算期間が3年から7年へ延長されるという、今回改悪となった部分について見ていくのですが、その前に暦年贈与の加算期間って一体何?という方のために、まずは現行の相続開始前3年以内の贈与加算の要件について、一緒に見ていきましょう。
ⅰ『相続開始前3年以内の贈与加算』とは
相続開始前3年以内の贈与加算というのは、家族に相続が発生した場合、被相続人の方が亡くなった当日から数えて3年以内に行われた贈与については、贈与した財産額を、亡くなった方の財産に足し戻して相続税の計算をしなくてはいけない、というものです。
具体的に佐藤家をモデルに見ていきましょう。
財産7,000万円を所有している佐藤家の一徹さんが、76歳のときから子供たち2人に対して年間300万円ずつを5年間、合計3,000万円の暦年贈与を行った場合、一徹さんの財産額は80歳の時点で4,000万円まで減っており、結果的に佐藤家の相続人には4,200万円の基礎控除があることから、相続税の申告も納税も必要ないということになります。
ですがここで出てくるのが3年以内の贈与加算です。
一徹さんは80歳の10月2日に亡くなっているので、その日から起算した3年間の贈与、合計1,800万円というのは1円たりとも相続税の節税対策になっていなかった。
つまり、一成さんと二郎さんには相続税の申告と納税の義務が発生してしまうというわけなんです。
そして今回の税制改正により、2024年の1月1日からは、この足し戻しの期間が3年から7年に延長されてしまったというわけなんですね。
では実際に2024年1月から相続開始前7年以内の贈与加算が導入されることを受けて、それ以前にみなさんが行っていた3年前や4年前、はたまた5年前、6年前の贈与も2024年の1月1日からは足し戻しの対象となってしまうのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
ⅱ『相続開始前7年以内の贈与加算』の実際の導入時期
まず結論から申しますと、2024年1月から7年以内加算が導入されるからといって、制度が開始される以前の分まで遡って7年分の贈与を全て足し戻しなさいといったことはありません。
贈与加算の期間というのは、あくまでもこちらの図のように2024年1月から起算して、徐々にその足し戻し期間が延びていくという形になります。
具体的にこちらの母親が2022年から行っている暦年贈与を例に見ていきましょう。
2022年1月から長女に対して110万円の贈与を始め、23年1月、24年1月、25年1月と4年間の暦年贈与を行った後、25年の2月1日に相続が発生しました。
この場合、もう既に相続開始前7年以内の贈与加算が導入されていますが、あくまでも7年以内の贈与加算は2024年1月を起点に徐々に拡大していくものですので、2024年1月1日よりも前の贈与については、贈与をしてから3年を超えている場合、足し戻しの対象外となります。
つまり、こちらの母親が2025年2月1日に亡くなった場合、贈与加算の対象期間となるのは2025年2月1日から2022年2月1日までの3年間で、母親の財産額に足し戻される贈与額は2023年1月の110万円、24年1月の110万円、そして25年1月の110万円、合計330万円となります。
ちなみに、この加算時期のカウントの仕方については、被相続人の相続が発生した当日からさかのぼって、ちょうど3年前の贈与までを足し戻すという形で計算を行います。
ですので、こちらの家庭の場合、母親は2025年の2月1日に亡くなっていますので、2022年の1月に受けた贈与に関しては、母親の相続財産として足し戻す必要はないんです。
逆に母親が2022年の2月1日に贈与を行っていたら、その分も贈与加算の対象となっていたというわけですね。
では先ほどとパターンを変えまして、こちらの母親が2022年1月から長女に対して110万円の贈与を始め、2027年の2月1日に相続が発生したとします。
この場合、もう既に相続開始前7年以内の贈与加算が導入され、対象期間の拡大が始まっていますので、この母親の贈与加算の対象期間になるのは2027年2月1日から2024年1月1日までの3年1ヶ月間で、母親の財産額に足し戻しされる贈与額は2024年1月の110万円、25年1月の110万円、26年1月の110万円、そして27年1月の110万円、合計440万円となります。
ですがここで朗報と言っていいのかはわかりませんが、今回の税制改正により、相続開始前3年以内の贈与加算が7年以内の贈与加算に延長されたことで、延長された4年間の間に行われた贈与については、総額100万円までを相続財産に足しも出さなくても良いという取り扱いになりました。
つまり、先ほどのケースでいいますと、2027年2月1日から2024年2月1日までの3年以内の贈与に関しては、330万円全額を母親の相続財産に足し戻し、4年前の贈与に関しては、贈与額110万円から100万円の控除を行い、合計で340万円の過去の贈与分が足し戻しの対象となるということですね。
ではもう一度パターンを変えまして、こちらの母親が2022年1月から長女に対して110万円の贈与を始め、2031年の2月1日に相続が発生しました。
この場合、もう既に相続開始前7年以内の贈与加算が導入されて7年が経過していますよね。
ですので、贈与加算の対象期間となるのは2031年2月1日から2024年2月1日までの7年間です。
その上で、母親の財産額に足し戻される贈与額は2025年1月の110万円から2031年1月の110万円までの合計770万円。
そこから2028年1月から2024年2月1日の間に行われた贈与額に対し100万円を控除しますので、最終的な贈与加算額は670万円となります。
いかがでしょうか?ここまでのお話を聞いていただくと、2024年1月1日以降からいきなり7年前の贈与までが足し戻されるわけではないというのをわかってもらえたかと思います。
その上で次の章では、2024年1月以降も暦年贈与を使い続けると、将来的にどれくらい相続税の納税額で損をするかについて、再びこちらの佐藤家モデルに見ていきたいと思います。
②暦年贈与を使い続けると将来どれくらい損をするのか
ⅰ『3年以内の贈与加算』における相続税額
まず現行の3年以内の贈与加算のもと、財産8,000万円を所有している佐藤家の一徹さんが、71歳のときから子供たち2人に対して年間200万円ずつ、合計4,000万円の暦年贈与を行い、80歳の1月2日に亡くなった場合、最終的に一家全体で支払うことになる相続税額はいくらになるでしょうか?
順を追って見ていきますと、まず一徹さんは71歳のときから10年間、合計4,000万円の暦年贈与を行っていますので、8,000万円あった一徹さんの財産は80歳の時点で4,000万円です。
ここに3年以内の贈与加算が行われ、年間200万円の暦年贈与×2人分×3年の合計1,200万円が、一徹さんの財産に加算。
結果的に行って資産の相続税の対象となる財産額は5,200万円となります。
相続人が子供2人の場合、5,200万円に対する相続税は100万円となりますが、一成さんと二郎さんが足し戻し期間中に支払っていた合計36万円分の贈与税は最終的な相続税額100万円から税額控除ができます。
ですので、現行の3年以内の贈与加算の場合、最終的に佐藤家全体で支払う相続税額は64万円ということになります。
ⅱ『7年以内の贈与加算』における相続税額
ですが、この贈与加算の期間が7年になるとどうなるでしょうか?
元々8,000万円あった一徹さんの財産は80歳の時点で4,000万円になっておりますが、ここに7年以内の贈与加算として200万円×2人×7年分の合計2,800万。
ここから先ほどお話した100万円控除×2人分合計200万円を引いた2,600万円が加えられ、一徹さんの相続税の対象となる財産額は6,600万円となります。
相続人が子供2人の場合、6,600万円に対する相続税は260万円となりますが、一成さんと二郎さんが、足し戻し期間中に支払っていた合計108万円分の贈与税は相続税額260万円から税額控除ができます。
ですので、2024年1月1日の7年以内の贈与加算導入以降に贈与を開始した場合、最終的に佐藤家全体で支払う相続税額は152万円ということになります。
3年以内加算のときには合計64万円だった相続税が7年以内加算になると、合計152万円となり、実に2倍以上もの増税となってしまうんですね。
つまり、2024年1月以降も従来と同じ方法で暦年贈与を繰り返していると、確実に一家全体の相続税額が跳ね上がることになるんです。
ⅲ 孫や子供の配偶者に対する贈与は2024年以降も足し戻し対象外!
ですが、今回の一徹さんの暦年贈与を未来の相続人である一成さん、二郎さんではなく、孫のみのりさんと篤さんに行っていたらどうなっていたでしょうか?
といいますのも、現行の相続開始前3年以内の贈与加算というのは、何も被相続人が亡くなる3年以内に被相続人から贈与を受けた全ての人に対して適用されるということはありません。
結論から申しますと、相続開始前3年以内の贈与加算というのは、相続が発生した後に被相続人から何らかの財産を受け取った人は、被相続人の方が亡くなる3年以内に受けた贈与を相続財産に足し戻しましょうと、こういう制度なんですね。
ですので、将来一徹さんの相続が発生した際に、一徹さんの財産を相続する一成さんや二郎さんは、過去の贈与の足し戻し対象者となってしまいますが、将来、一徹さんの相続が発生した際に相続権がなく、一徹さんの財産を1円も相続しないみのりさんや篤さんは過去の贈与の足し戻し対象者とはならないんです。
この誰が足し戻し対象者になるのかについては、こちらの動画でさらに詳しく解説を行っておりますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
【重要】家族のための贈与が無駄になる!? 3年以内の贈与加算とその対策 https://youtu.be/1V1wmbikdVU
その上で、財産8,000万円を所有している佐藤家の一徹さんが、71歳のときから孫2人に対して年間200万円ずつ、合計4,000万円の暦年贈与を行い、80歳の1月2日に亡くなった場合最終的に一家全体で支払うことになる相続税額はいくらになるでしょうか?
もう一度、順を追って見ていきますと、まず一徹さんは71歳のときから10年間、合計4,000万円の暦年贈与を行っていますので、8,000万円あった一徹さんの財産は80歳の時点で4,000万円です。
ここに先ほどまでは3年以内の贈与加算、もしくは7年以内の贈与加算が行われていましたが、今回は孫2人への贈与であり、この2人は一徹さんの相続発生後に決算の財産を1円も相続しないため、贈与加算が行われません。
その上で、佐藤家の相続税の基礎控除額は4,200万円ですので、一成さんと二郎さんは一徹さんの財産を無税で相続できるというわけですね。
ちなみに孫たち2人は一徹さんからもらった贈与額に対して毎年各自9万円、合計で180万円の贈与税を納めることになります。
しかしこれまでのケースを支払った相続税、贈与税の合計額で比較してみると、子供2人に贈与を行い最終的に3年以内の贈与加算が行われた場合の佐藤家全体の累計納税額は226万円で、子供2人に贈与を行い、最終的に7年以内の贈与加算が行われた場合の佐藤家全体の累計納税額は314万円です。
つまり、累計納税額の観点から見ても足し戻しの対象とならない孫たちへの贈与が一番節税効果が大きいんです。
ですので、この結果を見られた方の中には「だったらもう相続開始前7年以内の贈与加算が導入された際には、足し戻しリスクのない孫や子供の配偶者にだけ贈与を行ってもらえばいいんじゃない?」と、このように思われた方もいらっしゃるでしょう。
ですが、実際はそう簡単な話ではないんです。子供の配偶者というのは家族の一員なのは確かですが、お互いに血の繋がりがありませんので、積極的に自分の財産をあげたいという方は少ないんですね。
それに孫への贈与に関しても、まだまだ精神的に未熟な孫に大金をあげるのはよくないと、あえて贈与を控えるという方も実は結構多いんです。
この考え方が、相続開始前7年以内の贈与加算が始まるからといって、いきなりガラッと変わるとは到底思えません。
やはり今後も将来の相続税対策のための生前贈与は、自分の子供たちをメインに実行していきたい。孫たちへの贈与はあくまでも子供たちの次。と考える方が大半ではないでしょうか?
その上で、2024年以降、足し戻しリスクが高まった暦年贈与に代わり、今後はどのような方法で生前贈与を行っていけばいいのでしょうか?そこで登場するのが、相続時精算課税制度です。
この制度はこれまで大変使い勝手が悪く、ほとんどの方におすすめできなかった贈与制度なんですが、このたびの税制改正を受けて、その使い勝手の悪さが大幅に改良された結果、2024年以降は将来の相続税対策を考えている多くの方が、この相続時精算課税制度を利用することになると思います。
次の章では、そんな相続時精算課税制度について、制度の概要や大幅に改良されたポイントについて、順番に見ていきましょう。
③2024年以降は相続時精算課税制度が節税対策のメインになる
ⅰ 相続時精算課税制度とは
最初に相続時精算課税制度というのは、制度を利用する年の1月1日時点において、60歳以上となる、祖父母や父母から18歳以上となる子や孫に対して、生前贈与が行われた場合、贈与者1人につき最大2,500万円まで受け取った金額が非課税となる制度です。
しかも、この相続時精算課税制度で贈与することができる財産というのは、現預金だけに限らず、有価証券や不動産、宝石や車など、その種類は多岐にわたりますし、現預金での贈与を受けた場合には、住宅取得資金の贈与や教育資金の一括贈与とは違い、贈与を受けたお金の使い道を制限されることもなく、自由に使うことができるんです。
ここまでを聞くと、非課税枠も2,500万円と大きく、太っ腹で良い制度のようにも見えますが、現行の相続時精算課税制度には、将来の相続税の節税には一切ならないという致命的な欠点があるんです。
ⅱ 現行の相続時精算課税制度は節税対策にはならない
この制度は名前の通り、贈与を行う際には、いったん贈与税を非課税とするのですが、実は相続が発生したときには、これまで非課税として入れた分の金額を、個人の財産として精算して課税しますよという制度なんです。
つまり、祖父母や父母の財産を生前に一足先に相続したようなものなんですね。
具体的にこちらの山田家を例に説明しますと、山田家の父親は6,000万円の財産を持っており、将来の相続人は長女1人です。
ですので仮に父親に相続が発生した場合、6,000万円の財産から3,600万円の基礎控除を引き、残りの2,400万円に対して相続税がかかることになります。
ですので父親はこの2,400万円分の財産を生前のうちに減らしておこうと、長女に対して相続時精算課税制度を使い2,400万円の財産を生前贈与したんです。
父親は「これで自分に相続が発生しても、その際の財産額は3,600万円で、基礎控除以下になったから相続税はかからない。よかったよかった」と思っていたのですが、実はそうではなかったんですね。
先ほどもお話したように、相続時精算課税制度というのは、贈与者である父親の財産を生前に一足先に非課税で相続したようなものですから、いざ父親の相続が発生したときには、長女が生前に受けた2,400万円分の贈与額を、父親の相続財産に足し戻し、合計6,000万円の財産として相続税の計算をするんです。
もうおわかりですよね。たとえ相続時精算課税制度を使って生前に子供や孫に財産を贈与したとしても、将来の相続が発生した際には、亡くなった方の財産は相続税の計算上において1円も減っていない。
つまり、この制度は全く相続税の節税対策にならないということなんです。
ⅲ 現行制度は贈与を受ける度に申告手続きが必要
さらに現行制度の厄介なところは、一度相続時精算課税制度の利用を始めると、その翌年以降どんなに少額の贈与を受けたとしても贈与税の申告が必要になるという点です。
どういうことか、先ほどの山田家をモデルに見ていきますと、相続時精算課税制度を使って財産を贈与したい父親が、2019年の7月1日に長女に対して1,000万円の現金を贈与した場合、贈与を受けた長女は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に、長女の住所を管轄する税務署に対して当該制度を選択した旨の届け出を贈与税の申告書に添付する形で提出を行います。
ここで山田家の2人は「もう制度を使うための手続きは終わったから、あとは2500万円までの範囲内でいくら贈与を行っても、翌年以降の手続きは何も必要ないよね?」と、2020年の4月に1,200万円、21年の5月に150万円、22年の6月に50万円の贈与を無申告の状態で行いました。ですが、これがNGなんです。
現行の制度においては、一度相続時精算課税制度を選択された方はその贈与を受けた年以降の贈与について、どんなに少額の贈与であっても、たとえ2,500万円の非課税枠に収まる贈与額であったとしても、必ず翌年の2月1日から3月15日の間に贈与を受けた人の住所を管轄する税務署に対して贈与税の申告をしなければいけません。
先ほどの山田家の長女のように無申告のままでいいますと、2020年以降の贈与に対しては制度の非課税枠が使えないために贈与額に対して一律20%の税金がかかり、さらに無申告加算税や延滞税などのペナルティも加算されることになるんです。
どうでしょう?相続時精算課税制度には、将来の相続税の節税には一切ならないという致命的な欠点と、一度制度の利用を選択すると、翌年以降にどんなに少額の贈与を受けても贈与税の申告が必要という煩わしい手間。
これら2つの要素により、これまでほとんどの人から見向きもされてこなかったんです。
ですがこの使い勝手の悪さが、今回の税制改正により、大幅に改良されました。
具体的にどのような点が改良されたのか順番に見ていきましょう。
ⅳ 2024年から相続時精算課税制度はこう変わる!
相続時精算課税制度の改良点一つ目は、相続税の節税効果に対する改良です。
現行の制度では相続時精算課税制度を使って贈与を行っても、過去の贈与分というのは、相続が発生した際に全て相続財産に足し戻されることになりますので、全く節税効果がありませんでした。
ですが2024年1月1日以降は、相続時精算課税制度の利用を選択した上で贈与を行った場合、年間110万円までの贈与分に関しては相続財産に足し戻す必要がなくなったんです。
つまり、先ほどの山田家の父親が行った贈与を例に見てみますと、2024年に長女に対して1,000万円の現金を贈与した場合、2,500万円の非課税枠の中には、一度1,000万円が入りますが、そこから110万円分が控除されて、890万円が蓄積されます。
同様に2025年の贈与分1,200万円からも110万円分が控除され、1,090万円が蓄積。
26年の贈与分150万円からも110万円部分が控除、27年の贈与分50万円からも110万円を控除、つまり合計で380万円分の贈与が控除され、山田家の父親の相続が発生した際に足し戻される金額は2,020万円となります。
もっと極端に言えば財産額6,000万円の山田家の父親が、相続時精算課税制度を利用し、2024年1月1日から22年間、毎年110万円の贈与を長女対して行い亡くなった場合、2,420万円という金額全てを無税で贈与することができるんです。
しかも、その際の父親の財産額は6,000万円から2,420万円を引いた3,580万円となり、山田家の相続税の基礎控除3,600万円以下ですから、相続税も課税されないということですね。
ここでポイントとなってくるのが、従来までの相続時精算課税制度の場合、たとえ年間110万円以下の贈与であっても、贈与を受けた翌年には贈与税の申告を行う必要がありましたよね。
ですがこのポイントも今回の税制改正により改良されました。
なんと、2024年1月1日以降に相続時精算課税制度を利用する場合、年間110万円までの贈与額については贈与税の申告も不要となったんです。これにより、従来は使い勝手が悪く、ほとんどの方におすすめできなかった相続時精算課税制度が相続税の節税面にも優れ、申告の手間も大幅に軽減されたことで多くの方におすすめできる節税対策となったんです。
ではその上で次回の動画では、結局私の家の場合、2023年以降はどのように贈与を実行するのがお得なの?という方に向けて、年齢別、財産額別にこの家庭にはこの贈与がおすすめですよという具体的な内容についてお話をしていきたいと思います。
またその上で、相続時精算課税制度を始めるための手続き方法や、始めるに際しての注意点、2023年中に行うべき駆け込み贈与の最適額についても詳しく解説をしていきますので、内容が気になるという方はぜひ動画もご覧なってみてください。
以上で今回の動画は終わりです。今回の動画の他にも、家族の負担が増える間違った贈与についても解説を行っていますので、これらの内容にも興味があるという方はぜひ動画をご覧になってみてください。
【要注意】遺された家族の相続税が増える間違った生前対策〝4選〟
それでは次回の動画でお会いしましょう。最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
[ad-zeirishi]