個人が死亡し、一定額以上の財産を遺された場合、相続人は共同して相続税の申告書を提出し、納税をする必要があります。
今回は、相続税の申告の要否を確認する手順や、申告が必要となった場合の手続きについて解説します。
「基礎控除額」を下回れば、申告も納税も不要です
相続税がかかるかを判定するには、まず「課税価格」を把握する必要があります。
課税価格とは、故人が亡くなった時点の遺産総額から債務や葬儀費用を差し引いたものです。
相続税の申告をする際には、不動産や株式を評価するなど複雑な計算が必要となりますが、まず相続が発生した段階では、「相続税の申告が必要かどうか」という点を判断できれば足りるため、課税価格はおおまかに把握すれば十分です。
相続税の申告や納税が必要となるのは、課税価格が「基礎控除額」を上回った場合です。
明らかに基礎控除額を下回るようであれば、相続税の手続きは必要ないということです。
基礎控除額は、以下の算式で求められます。
「基礎控除額」=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
ここでいう「法定相続人の数」は、以下の手順で数えることができます。
- 配偶者(夫または妻)は、常に法定相続人
- 子がいれば、子が法定相続人
- 子がいなければ、父母が法定相続人
- 子も父母もいなければ、兄弟姉妹が法定相続人
ですから、夫婦と子2人の家族において、夫が死亡した場合、法定相続人は3人です。
そうすると、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3人)と計算し、4,800万円となります。
つまり、夫が4,800万円以上の財産を遺していなければ、相続税はかからず、特に手続きも必要ありません。
相続税の期限は意外と早い
さて、このように課税価格や基礎控除額を把握したうえで、相続税の申告が必要ということになると、多くの手続きが発生します。
まず目標となるのは、相続税の“期限”です。
通常は、故人が死亡した日から10ヶ月以内に相続税の申告をし、納税も完了する必要があります。
相続税の申告をするには、
- 戸籍謄本から相続人を把握
- 故人の遺産や債務を正確に把握
- 遺言書の有無の確認
- 遺言書がなければ、相続人間で遺産分割協議
一応、遺産分割協議が間に合わず、「未分割」でも申告や納税をすることはできるのですが、分割済でなくては使えない特例もあり、税額は割高となります。
後日、遺産分割協議が整えば、相続税の申告のやり直しもできるのですが、あらためて税額計算をやり直すのも面倒ですから、やはり遺産分割協議を終えてから申告をしたいところです。
このように、相続税の申告にあたっては複雑な手順があることから、税理士に依頼するケースも少なくありません。
とくに、遺産のなかに不動産や有価証券などがある場合、それらを故人の死亡日時点での財産価値で評価計算する必要があるため、相続人だけで対応するのは難しいでしょう。
また、相続税の申告は、故人の住所地を所轄する税務署が窓口になりますので、相続人が遠方に住んでいるときには、遺産分割協議をするにせよ、相続税の申告書を作成するにせよ、時間がかかってしまいます。
こうした事情から、スムーズに相続税の手続きを完結するには、税理士に相談するのが近道と考えます。
税理士は、地域の税理士会などで紹介してもらうこともできますので、申告が必要な方はお早めに動かれた方が安心ですね。
まとめ
いかがでしたか?
相続税の申告がが必要な場合とそうでない場合をみてきました。
相続される際は計算手順に従って、期限のうちにご申告ください。
また相続計算が難しいと思われる場合は、税理士の相談をご検討くださいね。
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この記事が、相続税の申告のお役に立てましたら幸いです。