皆さんこんにちは、相続専門税理士の秋山です。
今日は、2023年以降に開始が予定されている、相続に関する新制度5選、というお話をします。
昨今、相続を取り巻く環境は、手続き面・税制面において日々、目まぐるしい変化に直面しています。
例えば、昨年2021年9月1日にデジタル庁が新設されたことにより、これまでくすぶっていた、マイナンバーカードと行政サービスとの連携を強化し、それを相続分野にも広げようという動きが取られていたり、同様に、昨年から全国の市区町村役場において、おくやみコーナーという、身近な人に相続が起こった際の必要手続きの説明や、申請書の作成をサポートしてくれるスペースが設けられたことにより、各自治体ごとに相続手続きの簡素化を図ろうという施策も講じられています。
更には、現在国が所有者を把握できていない、約410万ヘクタール以上の所有者不明土地について、自治体ごとの財政問題や近隣住民への危険性を考慮して、その土地の所有者の特定や罰則規定の導入が急ピッチで進んでいます。
このような時代の流れを汲み、来年2023年以降は今後私たちの生活に深く関わってくるであろう、相続分野に関する新制度の開始が数多く予定されています。
ですので、今回の動画では2023年以降に開始予定の、これら5つの新制度について現時点で判明している内容をわかりやすく解説していきたいと思います。
新制度の導入により、これまで煩雑だった手続きが簡潔になるという一方で、従来までの税金に加え、新しい徴税制度も開始されることになりますので、是非この動画を最後までご覧になって頂いて、便利なものは活用し、払わなくてもいい税金や罰金は払わない、といった対応をとっていただければと思います。
①預貯金口座管理制度
2023年以降開始予定の新制度一つ目は、預貯金口座管理制度です。
これは正式には、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による、預貯金口座の管理等に関する法律と言いまして、預金者自らの意思で自分が所有している預金口座とマイナンバーを紐付けしておくことで、いざ自身の相続が発生した際に、残された相続人は亡くなった方の預金口座を一括で把握することができる、というものです。
もう少し具体的に説明しますと、まず佐藤家の一徹さんが、預貯金口座管理制度が施行された後において、取引のある銀行の一つに出向き、自身のマイナンバー・氏名・住所・生年月日などとともに、預貯金口座管理制度を利用したい旨を伝えます。
そうしますと申し出を受けた銀行は、一徹さんの情報を預金保険機構に通知し、通知を受けた預金保険機構は原則すべての金融機関に、一徹さんの口座の有無を照会します。
照会の結果、口座がある金融機関が見つかりましたら、預金保険機構はその金融機関に対して一徹さんのマイナンバー情報を提供します。
これにより一徹さんは、一つの金融機関で手続きをするだけで自分が所有している預金口座の全てに関し、マイナンバーを紐付けることができるということです。
この事前手続きにより、いざ一徹さんに相続が発生した場合、相続人である一成さんは一徹さんの口座が、どこの銀行にいくつあるのかをいちいち探し回らなくても、最寄りの金融機関に出向いて一度申請手続きをするだけで、一徹さんの預金口座を一括で把握することができることになります。
最近はネットバンクの利用者も増えており、被相続人のネット上の口座が把握できないという問題も増えてきていますが、そういった場合でも事前に一徹さんが預貯金口座管理制度を利用し、自身の預金口座とマイナンバーを全て紐付けしておけば、残された相続人は、一徹さんのネット口座もきちんと把握することができる、という点もこの預貯金口座管理制度のメリットのひとつだと言えるでしょう。
さらに、相続発生時のメリット以外にも、預貯金口座管理制度で自身の預金口座とマイナンバーを紐付けしておくことで、いざ地震や津波などで、預金通帳やキャッシュカードを紛失してしまったという場合でも、自分が所有している預金口座の把握を一括で行うことも可能です。
この預貯金口座管理制度は、2021年5月19日に制度の交付がされましたので、そこから3年以内の2024年5月19日までに施行される予定です。
この制度はあくまでも、預金者自らの意思で自分が所有している預金口座とマイナンバーを紐付けするという制度でして、預金口座とマイナンバーの紐付けが義務化されるわけではありませんのでご安心下さい。
その上で、ここまでお話してきた内容にメリットを感じるという方は、預貯金口座管理制度が施行された際には、活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
②戸籍法の改正
次に、2023年以降開始予定の新制度二つ目は、戸籍法の改正です。
現状、相続税の申告手続きや相続登記を行う際には、亡くなった方の戸籍謄本や改製原戸籍、さらに相続人の戸籍謄本を本人の本籍地を管轄する市役所で取得する必要があります。
つまり、福岡県八女市に本籍を置き、その場所に住んでいた一徹さんが亡くなり、東京都港区に本籍・住所がある一成さんが相続人となった場合、一成さんは自身の戸籍謄本に関しては最寄りの区役所で取得をすればいいのですが、一徹さんの戸籍謄本や改製原戸籍を取得するためには、一徹さんの本籍地である福岡県八女市の市役所に対して戸籍関係の書類を請求する必要があるんです。
さらに被相続人である一徹さんに関しては、法定相続人となる人物は誰か・何人いるのかという部分を確定させるために、一徹さんが生まれてから亡くなるまでの、連続した戸籍情報が必要になります。
その際、一徹さんが出生から死亡するまでの間に、婚姻や離婚・養子縁組・転籍・分籍といったように、本籍地を変えられている場合、過去に本籍を置いていた市役所全てで、戸籍関係の書類を集める必要があるんですね。
ですが、この面倒な戸籍謄本集めが、戸籍法の改正により2024年を目処に大幅に簡略化されます。
新しい戸籍法が施行されますと、相続人の最寄りの市役所で、マイナンバーカードや運転免許証を提示のうえ申請手続きを行えば、相続人の戸籍謄本も、 亡くなった方の戸籍謄本及び改製原戸籍も全て揃えることができるんです。
さらに新しい戸籍法においては、直接窓口に行かなくてもオンライン上で戸籍データを請求できる、戸籍電子証明書も導入が予定されていることから、今後戸籍関係の書類収集の負担はかなり軽減されることになるでしょうね。
③相続登記の義務化
次に、2023年以降開始予定の新制度三つ目は、相続登記の義務化です。
これは、被相続人の相続財産である土地・建物について、相続の開始とその所有権の取得を知った日から3年以内に、法務局に対して相続登記の申請を行わなければ、相続人に対し10万円以下の過料を科し、行政罰としてお金を徴収しますよという制度です。
なぜこのような制度が導入されるのかと言いますと、2022年の現時点においては、家族から相続した土地について相続登記を行わなかったとしても、その人に対して何らかのペナルティが課されるということはありません。
そのため
「だったら、手間もお金もかかる相続登記なんてもっと後回しでいいや!」
と、実際にこのように考える方が年々増加し、その結果今の日本には、国が所有者を把握できない、いわゆる所有者不明土地が約410万ヘクタールも存在していると言われているんですね。
なんとこれは九州全体の面積よりも大きく、このまま国が所有者不明土地の増加に対して何も対策を取らない場合、2040年には日本国内における所有者不明土地の総面積は約720万ヘクタール、およそ北海道全体の面積ほどにまで膨れ上がるといった予想が出ているんです。
この深刻な問題を解決するために政府が打ち出したのが、相続登記の義務化であり相続した不動産の登記を行わなければ、相続人に対し10万円以下の過料を科す、という罰則が設けられました。
この、相続登記を義務化する民法・不動産登記法の改正案は、もうすでに2021年4月21日の参議院本会議で可決されておりますので、法案が可決された日から3年以内に新制度が開始されるというアナウンスからも、この相続登記の義務化は2024年度までに施行される予定です。
そしてこの相続登記の義務化は、全国から所有者不明土地を減らすことを趣旨として導入されるものですので、その性質上、仮に2024年4月1日から制度が開始された場合、それ以前に家族から不動産を相続し、その上でまだ登記を行っていないという方についても、制度施行日から3年以内に登記を行わない場合には、罰則規定が適用されることになります。
ですので、相続登記は手間がかかって面倒くさいしもう少し時間がたってからでもいいや、とこのように考えている方も、2024年度までには相続登記の義務化が始まり、結局は相続登記を完了させなければいけないんだから、不要な土地であろうが・必要な土地であろうが、早い段階から相続登記をしておこう、とこのように考えていただければと思います。
また、この相続登記の義務化を含め、相続登記を放置していると発生する五つのデメリットについて、こちらの動画「親から相続した不要な土地・建物!相続登記した方が得?しない方が得?」で詳しく解説しておりますので、気になるという方はご覧になってみてください。
④不要土地の国庫帰属法
次に、2023年度以降開始予定の新制度四つ目は、不要土地の国庫帰属法です。
先ほどの相続登記の義務化の話を聞いて、今まではデメリットを受け入れた上で相続登記をしない、という選択肢も取れたのに、2024年以降はそれすらできなくなるのか、とこのように思われた方もいらっしゃるでしょう。
ですが、先ほど紹介した、相続登記の義務化に合わせて不要な土地を国に譲渡できる制度、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が、2023年4月をめどに施行されることになりました。
これにより、相続登記を済ませ土地の所有者が誰かを明確にした上で、国が定める厳しい条件をクリアし、その管理に要する10年分の費用を納付すれば、親から相続した不要な土地を国側に引き取ってもらうことができるようになります。
しかし、実際にこの国庫帰属法の恩恵を受けるためには、高額な取り壊し費用を支払って、土地を更地にする必要がありますし、管理費用として納めるお金や、その他の条件もなかなか厳しいものとなっています。
そのため、私自身はこの制度を使える人というのはかなり限定されるのではないかと考えています。
ですが、逆にこの厳しい条件を満たすことができれば、今まで不要な土地に対して固定資産税を含めた維持・管理コストを支払ってきた人や、不要な土地を処分するために財産管理人に依頼をするしかないとあきらめている人たちが、家族からのプラスの財産を相続した上で、不要な土地だけを放棄することができるわけです。
ですので、家族から相続した不要な土地に対して、本当に困っているという方にはぜひ一度、相続の専門家に相談をされるなどしてこの制度の利用を検討されてはいかがでしょうか。
また今後、この国庫帰属法の続報が出ましたら、さらに詳しい制度の概要部分について改めて動画で解説しますので、是非ご覧になってみてください。
⑤空き家税
最後に、2023年以降開始予定の新制度五つ目は、空き家税です。
これは現状においては全国民に適用されるものではなく、京都市民限定の新しい徴税システムなんですが、その内容は、京都市が京都市内にある空き家の所有者に対して2026年度以降、不動産にかかる固定資産税にプラスをして、全国初となる新たな税、空き家税をかけるというものです。
現在京都市内には、空き家が10万戸以上あると言われていますので、行政としては空き家税を導入することにより、空き家の売買や活用を促したいという狙いがあるようですね。
ですが、どうなんでしょう。空き家って相続登記が面倒だから、ほおっているうちに権利者が複数になり、取り壊しも売却も困難になったというケースもありますが、単純に田舎の土地で更地にしたとしても、買い手が見つからない可能性が高いからと、仕方なくそのまま放置をしているケースも少なくないんですよね。
場所が原因の場合、2026年から空き家税をかけるから、それまでに空き家をどうにかしてください、と言われたところで現状はどうしようもありません。
需要が限りなく低い土地というのは、どうあがいても売れませんし、更地にするにも高額な取り壊し費用がかかります。
更地にした上で、先ほどの不要土地の国庫帰属法の適用を受けられる場合はまだいいですが、更地にした上で不要土地の国庫帰属法の適用が受けられない場合は、建物が建っていた時よりも高額な固定資産税を払い続けることになります。
こういったことからも私自身はこの空き家税は、かなり酷な税金だと思います。
今後、京都市に追従して、空き家税を導入する自治体も出てくるかもしれませんが、そういった自治体には是非、空き家の所有者が不要な土地を手放しやすくなる制度も同時に導入してほしいですね。
そうでないと、これからこの空き家と税金で苦しむ人は増える一方だと思います。
今回の動画のまとめ
それでは今回の動画のまとめです。
今回は、2023年以降に開始が予定されている相続に関する新制度五選、としましてこれら五つの制度を紹介しました。
このうち、預貯金口座管理制度や戸籍法の改正はこれまで煩雑だった手続きが簡潔になる制度となりますが、相続登記の義務化や、空き家税に関しては、これまでにはなかった罰則が設けられたり、従来までの税金に加え新しい徴税制度が開始されることになります。
ですので、皆さんにはぜひ今回の動画の内容を参考に、自分にとって便利な制度は積極的に活用し、逆に新制度によって罰金などの不利益を被りそうな方は、制度開始前に対策を取っていただければと思います。
その際の一助となれるように、これからも当チャンネルでは皆さんのお役に立つ情報を発信していきますので引き続きよろしくお願いいたします。
それでは次回の動画でお会いしましょう、最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
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