皆さんこんにちは、相続専門税理士の秋山です。
今日は、相続争いの一番の原因はお金のあるなしではなく言い方・伝え方、という話をします。
皆さんは相続争いと聞くとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?
お金に執着をする欲深い人たちが、財産の奪い合いをしている、というイメージを持たれている方も多いと思います。
私自身、国税局、税務署で主に相続税を取り扱う、資産課税部門で約40年、相続に関する仕事に携わってきましたが、相続争いをしている人たちというのは、お金にがめつく欲深い人たちが大半なのかといえば、決してそうではないんです。
相続争いの引き金というのは、もちろん相続するお金の多い・少ないもありますが、それよりも、相続人同士のちょっとした言動や、気持ちの行き違い、これをきっかけとして争いが起こることがとても多いんです。
そこで今回の動画では、実際に私が見てきた、ちょっとした言葉の食い違いから、激しい相続争いへと発展してしまったケースを紹介した後に、言葉の食い違いから起こる相続争いの回避方法という部分のお話をしていきたいと思います。
言葉の食い違いから、相続争いへと発展してしまうケース
ではまず、ちょっとした言葉の食い違いから、相続争いへと発展してしまうケースですが、調査官時代に実際に私が見たケースから一例をあげますと、相続人は長男と次男の二人で、実家は長男がずっと守っており、次男は実家を離れて暮らしていました。
なので、次男は親が亡くなった際には、長男と同じ額の遺産を貰おうなんて思っておらず、全て長男が相続すれば良いとさえ思っていました。
ところが、四十九日の際に、次男は長男から、お前には財産はやらんからなと、強い口調で言われたんですね。
その言い方にカチンときた次男が、そんな言い方はないやろ!と言ったら、また長男が、お前は今まで家のことは何もしてこなかっただろうと、言い返してきたんですね。
その言い方にまた怒った次男が食ってかかってと、こういった感情のちょっとした行き違いが原因で、相続争いが起こり、後々取り返しがつかない状態になったんです。
この例では、財産の分割方法について、長男がもっと賢くうまく次男に切り出しておけば、そもそも次男は親御さんの財産は、全て長男が相続すればいいと思っていたわけですから、もっと丸く収まっていたんじゃないかと思います。
ですが今回は、長男の切り出し方が悪く、次男の気持ちを逆撫でするような言い方をされたもんですから、親御さんの相続をきっかけとして、お互いに憎しみ合うような状態になってしまったんですね。
そして、この案件というのは、私が税務調査に入った時もまだ揉めていました。
相続税の調査と言いますのは、相続が発生してから大体2年後あたりから行うんですが、この二人は四十九日あたりから、私が税務調査に入った時まで、2年以上ももめていたんですね。
私自身二人とも、もうそこら辺にして・・・という風に思ったんですが、税務調査官と言いますのは積極的に相続争いを仲裁する立場にありませんので、相続人のお二人に、遺産分割が整わないと使えない特例もありますよ、という風に説明したわけです。
例えば、配偶者の税額軽減であるとか、小規模宅地等の特例とかですね。
今回は相続人が兄弟二人ですから、配偶者の税額軽減は使えませんが、こういった特例は相続税の税額を大きく減額することができる、お得な制度である一方で、遺産分割がまとまらないと申告の際に適用することができませんので、このまま相続争いが続けば、相続人の二人にとっては損なんですね。
この辺りについては遺産分割について詳しく解説している動画「【相続】遺産分割協議の『基礎知識』と『分割協議の際に勘違いしやすいポイント』を解説します!」がありますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
話を戻しまして私は、お二人が損をしないためにも、ここはお互いが歩み寄って遺産分割協議をまとめましょう、と言ったんですが、もう次男にとってはそんなことはどうでも良い話だったんです。
次男が言うには、そんなことはどうでもいいんです、相続争いの解決を弁護士に依頼して、弁護士費用で私の相続分がたとえゼロになっても、あいつの取り分が1円でも減ればもうそれでいい!と言うんです。
もう次男の感情はそこまで達していたんですね。
この兄弟の相続争いは、どうしていれば回避出来たのか
ではこの兄弟の相続争いは、どうしていれば回避できたのかといいますと、それは二人ともがお互いの立場や気持ちを考えながら、相手を思いやる心を忘れずに、遺産分割の話をしていればよかったんです。
もし長男が、最初から次男の立場や気持ちを考えて思いやりの心を持って話をしていたら、どうだったんでしょうか。
これだけで財産があるんだけど、後々の供養もあるし、墓守もあるから、お前には悪いけど預金のうちの半分くらいで我慢してくれんかな?
このように切り出されていたらどうだったんでしょうか。
次男は、最初からどうしても、親の財産をもらおうとは思っていなかったようなので、素直にいいよ、と言ったかもしれません。
預金のうちの半分、これさえもいらないと言ったかもしれません。
そしてその後も、兄弟二人仲良く交流を持っていたことでしょう。
もしも裁判にまで発展したとしたらどうなる?
それがですね、今回長男の最初の言い方・伝え方が悪かったがために、この次男は弁護士を雇ってでも、相手に財産を渡したくない、と言った修復不可能な状態にまで行ってしまったんです。
この後、相続税の調査自体は終わり、一部申告漏れもあったので修正申告を取りましたが、その後私が異動があったので、最終的な二人の結末は知らないんですが、もしもこの後裁判にまで発展していたとしたら、長男は亡くなった親御さんの遺産のうち、法定相続分の1/2は次男に渡さざるをえません。
この事案の場合、亡くなった親御さんの財産は、預金が2000万円、不動産が5000万円ほどでしたので、長男が最初の段階で、次男へ思いやりの心を持って、親父の供養や墓の手入れがあるから、申し訳ないけどお前は預金の半分で我慢してくれないか?
と切り出していれば、次男へ渡す財産というのは、親御さんの預金の半分の1000万円か、次男がいらないといえば、ゼロ円で済んだでしょうし、後々の親御さんの供養や、実家を守っていくための資金も、手元に多く置いておくことができたと思います。
しかし長男が最初の言い方・伝え方を間違えたばかりに、二人の兄弟の仲は修復不可能となり、その上長男は、裁判所の判断のもと、法定相続分の1/2、つまり3500万円という財産を次男に渡すことになるんです。
また、この親御さんの財産は預金が2000万円、不動産が5000万円ですから、きっちりと3500万円ずつ相続するためには、預金は1000万円ずつ、不動産の持分は2500万円ずつとなり、不動産を長男と次男共有名義で所有することになります。
なので長男は、自分が住んでいる家を売却したいと思っても、次男の同意がなければ売れなくなるんですね。
そしてここまでこじれた兄弟仲ですから、長男が不動産の売却の同意を次男にお願いしたとしても、次男は絶対に首を縦に振らないでしょうね。
結果、長男は預金の半分を失っただけでなく、不動産の持分まで次男と共有することになり、まさに踏んだり蹴ったりという状況になるわけです。
今回の動画のまとめ
今回の動画のまとめですが、相続争いをしている方というのは皆さんがイメージされている方々とは違い、決してお金に汚いとか、欲望の塊とか、こういう方々ばかりではありません。
相続争いが起こるきっかけとしては、相続人同士の感情のもつれ。
これが非常に多いんです。
中には、子供の時に妹ばかり可愛がられて、私には何もしてくれなかったとか、こういう方が相続の時にその鬱憤を晴らす、なんていう、過去の恨みつらみも影響する場合があります。
ですから、この動画を見てくださっている皆さんは、いざ相続が発生した際には、お互いがお互いの立場や、気持ちを考えながら、相手を思いやる心を忘れずに、遺産分割の話をしていただければと思います。
最終的には親に感謝して、みんなでにこやかに遺産分割協議を終えたいものですね。
以上で今回の動画は終わりです。
最後になりますが、私は日々相続専門税理士として少しでも皆さんの相続・贈与に関する悩みに寄り添いたいと思い、動画を投稿しております。
ですので、皆さんから頂いた質問・コメントに対してもどんどんお答えしていきたいと思いますので、相続・贈与でお悩みの方や、これが知りたいという方は、コメント欄にコメントをいただければと思います。
また今回の動画が役に立ったという方は、ぜひチャンネル登録といいねボタンをよろしくお願いします。
それでは次回の動画でお会いしましょう、ありがとうございました。
秋山清成
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