みなさんこんにちは。相続専門税理士の秋山です。
今日は「相続が発生した際に誰が相続人になるのかを知って、トラブルなく遺産を相続しましょう」というお話をします。
亡くなった方の財産を分ける方法には大きく分けて2通りあります。
1つは亡くなった方が生前に作成した遺言書通りに財産を分ける方法、もう1つは相続人全員で遺産の分割協議を行い各自の遺産額を決める方法です。
これは亡くなった方の遺産が数億円あるような家庭でも、亡くなった方の遺産が数千万円、数百万円の家庭でも同じなんですね。
基本的に遺言書があれば、残された相続人はその遺言書通りに財産を分けることになりますが、遺言書がない場合は相続人同士の話し合い、遺産分割協議で亡くなった方の財産を分けることになります。
そしてこの遺産分割協議を行う際に大事なのが今回の「相続においては誰が亡くなった方の法定相続人になるのか?」という部分です。
この部分をきちんと理解しないまま、遺産の分割を始めてしまうと後に思わぬトラブルを招くこともありますので、相続が発生した場合には「今回の相続においては一体誰が法定相続人になるのか?」という部分は必ず把握しておかなくてはいけません。
ですので今回の動画では、最初に法定相続人とはどういった人のことを指すのか、また優先的に相続を受けることができる相続順位という内容の部分を説明した上で、次に相続における法定相続人の範囲と、相続割合について分かりやすく7つのモデルケースを使って見ていきます。
そして最後に自分が死んだ後に、相続人が誰もいない場合は財産はどこに行くのか、という3つのテーマについて解説をして行きたいと思います。
ではまずそもそも法定相続人とは何なのか?その概要から解説していきます。
法定相続人の概要
民法では亡くなった方の財産を誰が相続するのか?というところが定められていまして、その人のことを法律で定められている相続人「法定相続人」というんですね。
要は財産を相続する権利のある人のことです。
ただし民法で定められているから、亡くなった人の財産は必ず法定相続人が相続しなければいけないということはなく、遺言書などがあれば、法定相続人以外の人でも財産を相続することができます。
ただし、法定相続人以外の人が相続人になる場合は、法定相続人の人が財産を相続する時よりも、余分に相続税がかかったりするんですね。
さて、ではここからは被相続人の方が亡くなった場合、誰がその財産を相続できる法定相続人になれるのか?の概要を説明していきます。
まず亡くなった方の家族であれば、全員が法定相続人になれるというわけではありません。
家族の中でも、特に何の条件もなく法定相続人になれる人もいれば、亡くなった人に子供がいるかいないかによって、法定相続人になれるかどうかが左右される家族もいますし、親が存命か亡くなっているかによって、法定相続人になれるかどうか左右される家族もいるんですね。
また家族の中には、もともと相続権がない人もいます。
分かりやすいように下の図のような家族を元に、法定相続人になれる順番、順位を解説していきます。
家族構成としては、お父さん一徹さん、お母さん菊さん、2人の子供として、一成さん二郎さん、一成さんの妻の燈(あかり)さん、二郎さんの妻の由未子さん、そして一成さんと燈さんの子供として篤さん、みのりさんがおり、二郎さんと由未子さんの子供として翔さんがいます。
この家族の中で、一成さんが亡くなったとします。
この時誰が法定相続人になれるのか?と言いますと、まず亡くなった方の配偶者は相続順位に関係なく常に相続人なので、奥さんの燈さんは一成さんの法定相続人になります。
ですが他の家族はと言いますと、先ほども説明しましたように、法定相続人になれる順番がありまして、まず第1順位は一成さんの子供である篤さんとみのりさんです。
もし一成さんよりも先に子供が亡くなっていて、孫がいれば孫が第1順位の法定相続人になります。
ちなみに孫も亡くなっていれば、ひ孫が法定相続人になります。
子供がまだ生きていれば孫やひ孫に相続権はないのですが、一成さんが孫と養子縁組をすれば、その孫は法定相続人になれるんですね。
亡くなった方に子供がいる場合、第2順位である親や第3順位である兄妹姉妹には相続権はありません。
そして一成さんに子供も孫もいない場合は、第2順位である一成さんの両親、一徹さんと菊さんが法定相続人になるんですね。
めったにないことですけど親がすでに亡くなっていて、祖父母が存命であれば祖父母が第2順位の法定相続人になるんです。
第2順位である父母が存命の場合は、第3順位である兄妹姉妹には相続権はありません。
そして一成さんに子供も孫もおらず、さらに両親も祖父母もすでに亡くなっている場合は、第3順位である一成さんの兄弟、二郎さんが法定相続人になります。
一成さんが亡くなるよりも前に、二郎さんが亡くなっていれば、二郎さんの子供、一成さんから見れば甥姪にあたる翔さんが法定相続人となるんです。
翔さんが亡くなればその子供に相続権が移るのかと思われるかもしれませんが違うんですね。
甥姪の子供には相続権はありません。
そして子供の配偶者や兄妹姉妹の配偶者と言いますのは、家族といえども相続権はありません。
また亡くなった方と内縁関係にある人に関しましても、相続権はないんですね。このようにですね、亡くなった方の配偶者であれば絶対に法定相続人になれるんですけど、子供や孫、両親や祖父母、兄妹姉妹や甥姪の場合ですと、上の順位の人が存命でしたら下の順位の人は法定相続人になることはできません。
そして冒頭でも言いましたが、基本的に遺言書があれば、残された相続人はその遺言書通りに財産を分けることになりますが、たとえ遺言書があったとしても相続人全員が了承をすれば、遺産分割協議により、亡くなった方の財産を相続人たちが好きに分けることもできます。
また遺言書がない場合は、法定相続人同士の話し合い、遺産分割協議で亡くなった方の財産を分けることになります。
ですがこの遺産分割協議を行う際には、とても重要なルールがありまして、それは遺産分割協議を行う際には必ず法定相続人全員で話し合いをしなければならないということです。
実際にこのルールを守らなかったことによるトラブルも私自身何度か見てきました。
と言いますのも、あらゆる相続手続きにおいて亡くなった方の出生から亡くなるまでが、記載された戸籍謄本が必要になりますが、その戸籍謄本を見ると今の家族も知らなかった法定相続人が見つかることがあります。
例えば先ほどの家族の例で言いますと、 一成さんに離婚歴があり前妻との間に子供がいればその子供も法定相続人になりますから、燈さんや篤さん、みのりさんは一成さんの前妻の子供と一緒に遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があるんです。
遺産分割協議書というのは、法定相続人全員の署名と実印を押して初めて法的な効果があるものですから、例えば前妻の子供をのけものにしてあかりさんと篤さんみのりさんだけで遺産分割協議を行い、遺産分割協議書をまとめたとしても、その遺産分割協議書は法的に無効になってしまいます。
また前妻の子供をどうしてものけものにしたいからと、前妻の子供の署名と実印を偽造した場合、これは犯罪行為になりますから絶対にしないでくださいね。
ここまでで法定相続人が誰になるのか?という部分をざっくりと見てきましたので、ここからは実際に7つのモデルケースをもとに、ケースごとの法定相続人とその法定相続人が持っている相続割合について詳しく解説していきます。
相続における法定相続人の範囲と相続割合【7つのケース】
先ほど民法では法定相続人という亡くなった方の財産を相続する人というのは、法律で決まっているんですよ、という話をしましたが、さらに民法においては法定相続人の人たちがどれだけ財産を相続するのか、この割合も規定されていまして、これを法定相続分というんですね。
ここで皆さん「民法で決まっているということは、いざ相続が起こったら私達はこの法定相続分通りに、遺産を分割しなくちゃいけないの?」と混乱されるんですけど、これも先ほどの法定相続人と同じく民法で定められているからといって、法定相続分通りに分ける必要はありません。
故人の思いを汲んで遺言書の内容に従った割合で相続してもいいですし、法定相続人同士で話し合って割合を決めてもいいんです。
遺産の分割においてはこの法定相続分はあくまでも目安なんですね。
とはいえこの法定相続人ごとの法定相続分というのは、相続税額を計算するときや遺留分を計算するとき、被相続人同士の話し合いで遺産分割がまとまらない時の法律上の目安となりますから、きちんと理解しておいて損はありません。
さらに誰が法定相続人かによって、この法定相続分の割合というのは変わってきますので、これから紹介する7つのケースごとに、その割合の変化を見ていきましょう。
ちなみにケース1から3は亡くなった方に配偶者がいる場合の法定相続分についてで、ケース4から7は、亡くなった方に配偶者がいない場合の法定相続分の解説となります。
たくさん紹介しますが、どれも短いのでリラックスして聞いてください。
まずケース1相続人が配偶者と子供の場合です。
この場合の法定相続分はと言いますと、下の図のように配偶者が1/2、子供が1/2です。
今回は子供が2人なので、1/2を均等に割ってそれぞれ1/4ずつで法定相続分になります。
例えば、もし子供である篤さんがすでに亡くなっている場合、下の図でいうと法定相続人は妻である燈さん、子供のみのりさん、篤さんの子供2人、この4人となるんですが、この場合の法定相続分はと言いますと、篤さんが相続するはずだった1/4は篤さんの子供の人数で均等に割るので、それぞれの法定相続分は1/8ずつということになるんですね。
このように本来の法定相続人が亡くなっている場合、その法定相続人の子供、あるいはその親が代わりに相続することを代襲相続といいます。
では次はケース2の亡くなった方には子供がいなくて、相続人が配偶者と父母の場合です。
このケースでは第1順位の子供がいませんから、相続人は配偶者と第2順位である父母ということになります。
この場合の法定相続分はと言いますと、下の図のように配偶者が2/3、父母が1/3となります。
父母が2人とも存命なら1/3を均等に割りまして、それぞれ法定相続分は1/6ということになります。
では次のケース3は父母が既に亡くなっていて、かつ子供がいない場合です。
第1順位である子供がおらず、第2順位である父母が既に亡くなっているので、このケースにおける相続人は配偶者と、第3順位である兄妹姉妹が相続人となります。
この場合、法定相続分は配偶者が3/4、亡くなった方の兄妹姉妹が1/4となり、亡くなった方に2人の兄弟がいれば1/4を2人で割りまして、それぞれ1/8が法定相続分ということになります。
では次は配偶者がすでに亡くなっていて、相続人が子供だけの場合です。
相続が発生した際に常に相続人となる配偶者がいない場合は、第1順位の子供だけが相続人となるんですね。
この場合の法定相続分は子供が100%です。
今回は篤さん、みのりさんの2人が相続人となるので、子供2人の相続分は1/2ずつということになります。
次はケース5 亡くなった方が独身で両親が存命の場合です。
相続が発生した際に、常に相続人となる配偶者がおらず、第1順位である子供もいない場合は、第2順位である父母だけが相続人となります。
この場合の法定相続分は父母が100%です。
今回は一徹さん、菊さんの2人が相続人となるので、両親2人の法定相続分は、1/2ずつになります。
次のケース6は相続人が兄弟姉妹だけの場合です。
亡くなった方が独身で、第1順位である子供がおらず、第2順位である父母もすでに亡くなっている場合は、第3順位である兄妹姉妹が相続人となります。
この場合の法定相続分は、兄妹姉妹が100%です。
今回は二郎さん、三津子さんの2人が相続人となるので、兄妹姉妹の法定相続分は1/2ずつになります。
さてでは最後、ケース7はケース6の派生です。
亡くなった方が独身で、第1順位である子供も第2順位である父母もいないので、第3順位である兄妹姉妹が相続人となりますが、その兄妹姉妹が亡くなっている場合、その子供、亡くなったから見れば甥姪が代襲相続をします。
法定相続分は妹である三津子さんが1/2、すでに亡くなっている二郎さんの子供が1/2です。
二郎さんの子供が3人いれば1/2を3等分するので、それぞれの法定相続分は1/6ということになります。
どうでしょう?なんだか少しややこしいなあと思われるかもしれませんが、実際に自分の家庭に置き換えてみるとよく理解できると思います。
この他にも誰が法定相続人になるのか、法定相続人となる人の法定相続分はどれくらいかというのは、亡くなった方が離婚、再婚をしていた場合や、亡くなった方が養子縁組をしていた場合、相続放棄をした相続人がいる場合によってもコロコロと変わってきます。
また会ったこともない相続人や、疎遠な相続人の連絡先が分からない場合であっても、冒頭でお話したように遺産分割協議というのは、法定相続人全員で行う必要があるので、なんとかコンタクトを取って遺産分割協議をしなければいけません。
今回の動画でこれら全てを解説しますと、かなり長くなってしまいますのでこの法定相続人についての応用編の話は、また改めてさせていただきたいと思います。
自分が死んだ後に相続人が誰もいない場合財産はどこに行くのか
では今回の動画の最後の項目、自分が死んだ後に、法定相続人が誰もいない場合には亡くなった方の財産というのはどうなるのか?というところを見ていきましょう。
もし配偶者も子供も親も兄弟もおらず、天涯孤独の方や法定相続人全員が、相続放棄をして相続人が誰もいない場合、この方の財産はどうなってしまうんでしょうか?
これはですね、この方の生産が最終的には国のものになってしまうんですね。
亡くなった方の内縁関係にあった方や亡くなった方の老後の世話や介護をしていた密接な関係にあった人が、家庭裁判所に「自分は特別縁故者です」と申し立てを行って、その請求が認められれば、亡くなった方の財産をその特別縁故者が受け取ることができますが、この特別縁故者が家庭裁判所で認められるというのは、実際には難しいみたいですね。
ですので自分には法定相続人がいないから、介護などでお世話になった人に自分の財産をあげたいという場合や、内縁の妻に相続財産はあげたいという方の場合、生前にその旨を書いた遺言書を残しておかれるのが良いでしょう。
では今回の動画のまとめです。
今回の動画のまとめ
亡くなった方の財産を相続する権利がある人のことを法定相続人と言いまして、亡くなった方に配偶者がいるのかいないのか、子供はいるのかいないのか、相続放棄をした人がいるのかいないのか、家族のうち、すでに亡くなっている人はいるのかいないのか、こういった条件により相続権を持つ人というのは、コロコロと変わります。
また財産の分け方の指標となる法定相続分に関しても、法定相続人と亡くなった方との関係や、法定相続人の人数によってその割合は変わってくるので、注意が必要です。
相続は相続税がかかるかからないに関わらず、全ての家庭で発生します。
自分が亡くなった後、家族が亡くなった後にスムーズに相続手続きを行うためには、生前からの準備が大切です。
まず第一に将来の法定相続人を確認し、そして自分や家族の財産を把握し、その上で生前から相続対策や相続税対策を取って頂き、最終的に円満に相続を完了できるようにしておきたいものですね。
以上で今回の動画は終わりです。
最後になりますが私は日々相続専門税理士として、少しでも皆さんの相続・贈与に関する悩みに寄り添いたいと思い、動画を投稿しております。
ですので皆さんから頂いた質問コメントに対しても、できる限りお答えしていきたいと思いますので、相続・贈与でお悩みの方や、これが知りたいという方は、コメント欄にコメントをいただければと思います。
また最近はありがたいことに、多くの方から相談のメッセージを頂いておりますので、回答の方には少々お時間はかかってしまうと思いますが、ご了承ください。
それでは次回の動画でお会いしましょう。
最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
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