アフィリエイト広告を利用しています。広告掲載ポリシーはこちら

NHKドラマ『ひとりでしにたい』に学ぶ女性の終活リアルとは?

ドラマ「ひとりでしにたい」主演:綾瀬はるか

NHK土曜ドラマ枠で放送中の『ひとりでしにたい』は、カレー沢薫の人気漫画を原作に、独身女性の終活をテーマとした異色の作品です。主人公の山口鳴海(綾瀬はるか)は35歳の独身女性で、美術館の学芸員として働いています。彼女の人生は、最愛の伯母・光子がまさかの孤独死(誰にも看取られずひとりで死亡)を遂げたことをきっかけに一変します。婚活に励んでいた鳴海でしたが、伯母の死にショックを受け「より良く死ぬためにより良く生きる」決意を固め、人生の終活に舵を切るのです。こうして相棒である愛猫の魯山人と共に、「黄泉へ激走する物語」が幕を開けます。

ストーリーと演出の特徴

主人公山口鳴海と猫の魯山人

鳴海は終活に目覚め、エンディングノートを書いたり、遺品整理や葬儀の準備方法を調べたりといった情報収集を始めます。彼女の周囲には、終活や介護に詳しい職場の同僚たちが登場し、現実の高齢化社会で誰もが直面しうる課題がエピソードを通して描かれます。例えば、同僚の那須田優弥(佐野勇斗)は24歳の官僚出向で、博識ゆえに鳴海の良きアドバイザーとなり、鳴海の両親にも終活のレクチャーをする存在です。また別の同僚は、認知症の母の介護を巡る家族トラブルを抱えており、親の介護や施設入所といった現代的な問題がリアルに反映されています。ドラマはコミカルなタッチを交えつつ、決して他人事ではない「老い」と「死」の問題に向き合っていく作風が特徴です。原作者のカレー沢薫自身、「暗いだけで救いのない話はフィクションで読みたくない」と語っており、重いテーマながらユーモアを交えて暗くなり過ぎないトーンを意識したといいます。そのため視聴者は笑いながらも考えさせられ、エンターテインメントと社会問題のバランスが取れた作品となっています。

社会的背景

本作の背景には、日本社会の急速な高齢化核家族化・未婚化があります。従来は「老後は子供に見てもらう」という価値観もありましたが、現在では生涯独身おひとりさまの増加により「最後は一人かもしれない」という不安を多くの人が抱えるようになっています。原作者のカレー沢薫も30代後半で「この先も子どもは作らないだろう」「配偶者や親が亡くなれば自分が最後は一人になる可能性が高い」と気づき、本作の着想を得たと述べています。彼女は老後破産や介護放棄などのニュースを見聞きし、「他人事ではない」と感じたそうです。ドラマでもこうした現実の社会問題が投影されており、超高齢社会ニッポンで避けて通れないテーマを真正面から扱っています。また主人公を演じる綾瀬はるかさんは人気女優であり、彼女の起用によって幅広い世代の視聴者にアピールしている点も見逃せません。綾瀬さん演じる鳴海が明るく前向きに終活に取り組む姿は、同世代はもちろんシニア世代の女性にも深い共感と勇気を与えているようです。

原作漫画との比較 – カレー沢薫の描く終活の世界

ドラマの原作は、カレー沢薫による同名漫画『ひとりでしにたい』です。2019年から講談社の漫画誌で連載が始まり、「30代後半独身女性の終活」をコミカルに描く作品として第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞するなど高い評価を得ました。原作漫画では伯母の孤独死に衝撃を受けた鳴海が、終活に詳しい若手同僚・那須田から知恵を借りつつ、両親や周囲を巻き込みながらポジティブに終活に取り組む過程がユーモラスに描かれます。例えば遺品整理の業者に相談したり、両親にエンディングノートを書くことを提案したりと、具体的な終活のノウハウが随所に盛り込まれている点が特徴です。重いテーマを扱いながら「暗すぎず読みやすい」との読者の声も多く、笑いの中に人生の教訓がちりばめられた作品となっています。

created by Rinker
¥792 (2025/06/30 11:09:44時点 Amazon調べ-詳細)

ドラマと漫画の違い

山口鳴海と同僚の那須田優弥

 基本的にドラマ版は原作に忠実に作られており、ストーリー展開やキャラクター設定も大筋で漫画通りです。原作者のカレー沢薫自身、「妙なほど内容は原作通りに進んでおり…制作側の配慮により、原作は間違いなく私の漫画になっている」と太鼓判を押しています。漫画原作の実写化では設定改変がファンの不評を買うことも多いですが、今回のドラマでは核となるテーマや登場人物像がブレずに再現されている点が高く評価されています。カレー沢は放送前、「原作どおりに作ってダメなら原作が悪いと言われてしまう」と胃を痛めていたそうですが、杞憂に終わったようで「概ね好評のようで安心している」と安堵のコメントを発表しています。ドラマならではの見どころとしては、綾瀬はるかをはじめ豪華キャスト陣の熱演や、実写ならではの細やかな演出・音楽によって、作品世界にリアリティと厚みが増している点があります。原作のコマでは表現しきれない部屋の散らかり具合孤独死現場の生々しさなども映像で具体的に描かれ、視聴者に強いインパクトを与えています(伯母・光子が亡くなったゴミ屋敷の浴室シーンなどはその典型でしょう)。一方で漫画特有の内面描写やギャグも、ナレーションや台詞回しでうまく表現されており、原作ファンも違和感なく楽しめる仕上がりです。総じてドラマ版『ひとりでしにたい』は、原作のエッセンスを大切にしつつ実写映像としての魅力を加味した良質なアダプテーションと言えます。

「ひとりで死ぬ」現実と50代以上の女性への響き

本作の中心テーマである「ひとりで死ぬ」こと(孤独死)は、現代日本で現実味を帯びた社会問題です。ドラマや原作では、伯母の光子が退職後に人間関係が希薄になり、自宅マンションをゴミ屋敷と化して孤独死してしまった姿が描かれています。光子は生涯独身でキャリアウーマンとして生きてきた女性でしたが、晩年は孤立し、亡くなってから長期間発見されないという悲劇に見舞われました。このエピソードは決してフィクションだけの話ではなく、日本各地で実際に起きている現実です。警察庁が初めてまとめた統計によれば、直近の一年間で自宅で亡くなった一人暮らしの人は全国で約7万6千人に上り、そのうち約8割(5万8千人強)が65歳以上の高齢者でした。さらに、その中で死亡後1週間以上経ってから発見されたケースは2万2千人以上にのぼっています。このように「誰にも看取られずに亡くなる」孤独死は高齢社会の陰の側面として拡大しており、ドラマが描く内容は極めてタイムリーかつリアルな問題提起と言えます。

特に50代以上の女性にとって、「ひとりで死ぬ」ことは他人事ではありません。日本では一般に女性の方が長寿であるため、夫と死別して高齢で一人暮らしになる女性が非常に多いのが実情です。統計によれば、65歳以上の一人暮らし高齢者は女性が約440.9万人、男性は約230.8万人と女性の方が約1.9倍も多く、75歳以上の高齢女性では4人~5人に1人が一人暮らしというデータもあります。背景には、女性の平均寿命(87.57歳)が男性(81.47歳)より6年ほど長いことや、夫が年上であるケースが多いことなどから、既婚女性でも最終的に独り身となるケースが多い点が挙げられます。実際、孤独死というと「独身のまま年を取ると起きるもの」と考えがちですが、専門家は「現在孤独死している人のほとんどは元既婚者だ」と指摘しています。ソロ社会研究の第一人者・荒川和久氏は「結局、死ぬときはみんな一人。結婚していようがしまいが避けられない問題なのに、『結婚しないと孤独死するぞ』というのは的外れだ」と述べています。さらに荒川氏は、たとえ家族と同居していても不在時に急死すれば発見が遅れることもあり得るとして、「死ぬ瞬間の心配より、たとえ一人でもどう生きるか考えた方がいい」と提言しています。このような見解は、ドラマの主人公・鳴海の前向きな姿勢とも通じるものがあります。鳴海は一人で最期を迎える可能性に気付きつつも、それを悲観するのではなく「じゃあ悔いなく生きよう」「周りに迷惑をかけない準備をしよう」と行動を起こします。その姿は、同世代より一足先に終活に着手したロールモデルともいえ、50代以上の女性視聴者にも強い共感と刺激を与えているでしょう。「自分もいずれは一人かも…」という不安を抱える女性にとって、鳴海の奮闘は他人事ではなく、「今からできることがあるんだ」と前向きなメッセージとして響いているはずです。

現代日本における終活事情と女性おひとり様の課題

終活(しゅうかつ)とは、人生の終わりに向けた準備活動の総称で、遺言やお墓の準備、財産整理、葬儀の手配から、エンディングノート作成や生前の身辺整理まで幅広い内容を含みます。2010年前後から使われ始めた比較的新しい言葉ですが、今ではシニア世代に広く浸透しつつあります。ある調査によれば、50~79歳の男女のうち「終活」という言葉を知っている人は約9割に達し、実際に「すでに終活を始めている」人も44.0%に上ることが分かりました。約半数近くが終活実践中というのは驚くべき数字で、終活がもはや特別なことではなく、「安心して人生を送るための新たな生活習慣」になりつつあると分析されています。逆に「終活は必要ない」と考える人は約22.6%にとどまり、多くのシニアが多かれ少なかれ終活に関心を寄せている現状がうかがえます。

具体的にどんな終活をしているのか?

終活と一口に言っても内容は様々ですが、アンケートによると既に実行済みの項目で最も多いのは「年賀状じまい」(38.4%)でした。年賀状じまいとは、高齢になったことを機に「来年以降は年賀状のやりとりを控えます」と周囲に知らせる風習で、「自分の最期が近いかもしれない」という心構えや人付き合いの整理を象徴するものです。また「お墓の準備」(24.0%)や「お墓じまい(墓を撤去し永代供養等に切り替える)」「葬儀方法の検討」といったお墓・葬儀関連の準備も多くの人が進めています。そのほか、「家の中の荷物整理・処分」「財産の整理(預貯金や証券の整理)」「加入保険の見直し」など身の回りや資産の整理も終活の主要テーマです。近年はパソコンやスマホ内のデータ整理、SNSアカウントの削除準備などデジタル終活への意識も高まっており、「エンディングノート(自分の希望や資産情報を書き残すノート)の記入」を行う人も約26.7%います。終活を実際に始めた人からは「将来への不安が和らぎ、日々の生活満足度が上がった」という声もあり、備えあれば憂いなしとばかりに心の安定につながっている面も注目すべきポイントです。

女性の一人終活と支援サービス

特に身寄りのない女性高齢者にとって、終活で重要なのが自分の死後の手続きをどうするかという問題です。身近に頼れる親族がいない場合、死亡届の提出から葬儀の手配、遺品整理、銀行口座の解約、賃貸住宅の退去手続きに至るまで、死後の事務手続きを代行してくれる人が必要になります。このニーズに応えるべく登場したのが「死後事務委任契約」という仕組みです。これは生前に信頼できる第三者(専門業者や弁護士・司法書士、NPOなど)と契約を結び、自分が亡くなった後に必要となる各種手続きをその受任者が代行することを定めておくものです。具体的には、死亡届の提出や火葬・納骨の手配、住居の明け渡し交渉、公共料金やクレジットカードの解約、遺品整理、ペットの引き取り先探しに至るまで多岐にわたる事務を委任できます。財産の相続に関すること(遺産分配など)は含められませんが、それ以外の煩雑な手続きを一括して任せられるため、身寄りのない人にとっては「最後の安心契約」とも言えるでしょう。近年、この死後事務委任契約の相談件数は増加傾向にあります。少子化や未婚化・核家族化の進行で「死後の手続きを担う親族がいないケース」が珍しくなくなったためで、まさに現代社会の要請に応じたサービスと言えます。実際、「おひとり様」の増加とともにこうした契約や生前相談は急増しており、司法書士や行政書士など専門家による終活相談窓口も各地で整備されつつあります。

アイキャッチ 『おひとりさまの終活』身寄りがなくても安心な葬儀準備完全ガイド【2025最新】

他にも、独居高齢者向けには見守りサービス(一定期間連絡がないと安否確認する仕組み)や、万一の時に駆けつけてくれる身元保証サービスなども普及し始めています。身元保証サービスとは、高齢者施設入居や病院入院の際に保証人となってくれたり、緊急連絡先を引き受けてくれる民間サービスで、家族の代役を担う存在です。終活マーケットにはこのように様々なプレイヤーが参入しており、「孤独死保険」(一人暮らしの賃貸入居者が死亡時の残置物処理費用などをカバーする保険)を提供する企業もあります。まさに「終活ビジネス」が一つの産業として発展している状況です。ドラマや原作漫画でも、エンディングノートの存在や終活セミナーの描写などがあり、こうした現実のサービスや活動とリンクしています。読者や視聴者としては、「何から始めればいいのか」と尻込みしがちな終活について、鳴海の行動を通じて具体的なイメージを得られる点も大きなメリットでしょう。50代以上の女性にとって、終活は決して早すぎるテーマではなく、「いつか」ではなく「そろそろ私も…」と行動を促す現実的な課題として迫ってきています。その意味で、本作はエンタメでありながら実用的な示唆にも富んだ作品と言えます。

葬儀・終活業界への影響と作品の社会的意義

『ひとりでしにたい』が提起するテーマは、葬儀業界や終活関連ビジネスにも少なからぬ影響を及ぼしています。まず、このドラマによって「終活」への関心が一段と高まることが期待されます。実際、ドラマ放送後には視聴者から終活セミナーやエンディングノートに関する問い合わせが増えたという声も報じられており、業界にとっても追い風になっているようです。現代は葬儀の形も多様化しており、家族葬や直葬(通夜や告別式を省き火葬だけ行う)を選ぶ人、一切の葬儀をせず「自然葬・散骨」を希望する人も増えています。身寄りがない人の場合、自治体が火葬・埋葬を行い無縁仏として合葬墓に納めるケースもありますが、それを避けるために生前に墓友(はかとも)と呼ばれる仲間と共同墓を準備したり、永代供養のお寺と契約したりする動きもあります。葬儀社や石材店、保険会社などは、こうしたニーズに応える商品・サービス開発を進めてきました。まさに終活市場は拡大傾向にあり、民間調査によれば終活関連ビジネス(身元保証サービスや生前整理代行など限定2分野)の市場規模は2024年度で約234億5,000万円、2025年度は約257億3,000万円に達する見込みとされています。年率約10%の成長が見込まれる有望市場であり、高齢社会の進行とともに生活者のニーズが高まっている分野と言えるでしょう。

このドラマや原作のように終活や孤独死を正面から扱った作品が注目を集めることは、業界にとっても非常に意義深いことです。一つには、タブー視されがちな「死」についてオープンに語るきっかけを作った点です。日本では「縁起でもない」と死の準備を敬遠する向きもありましたが、作品を通じて終活の大切さがエンタメとして共有されることで、シニア世代が前向きに自分の最期を考える後押しになります。また、葬儀社や終活関連サービス提供者にとっても、利用者が事前知識を持って相談に来てくれることで話がスムーズに進む利点があります。ドラマ中で描かれる具体的な終活サービス(例えば遺品整理業者や終活カウンセラーの存在など)は、実在のサービスへの関心喚起につながるでしょう。現実の終活イベントでは、50代以上の単身女性を対象にした終活フェアセミナーが盛んに開催されています。そこではエンディングノートの書き方講座や、葬儀費用の相場解説、介護施設の選び方など実践的な情報提供が行われていますが、本作はそうした場に初めて足を踏み入れるハードルを下げる役割も果たしそうです。

初めてのエンディングノート はじめてのエンディングノート〜今から始める安心の備え〜

まとめ

最後に、本作の社会的意義について触れておきます。『ひとりでしにたい』は、「人生の終わり」をテーマに据えながらも決して悲観一色ではなく、「どう生きるか」という前向きなメッセージを発しています。劇中の鳴海は、終活を通じて家族と真剣に老後について話し合い、同僚たちとも本音で語り合う中で、人と人とのつながりの大切さを再認識していきます。タイトルは一見ショッキングですが、実は「一人で死ぬかもしれないけど最後まで自分らしく生きたい」という決意にも読めます。50代以上の女性読者・視聴者にとって、自身のこれからの生き方を考えるヒントが随所にある作品でしょう。終活とは決して死に備える暗い作業ではなく、「これからをよりよく生きるための活動」だというメッセージは、多くの共感を呼んでいます。実際、原作の帯には「よりよく死ぬにはよりよく生きる。」との言葉が掲げられています。人生100年時代とも言われる中、自分の最期まで責任を持ってデザインしようとする姿勢は、自立した現代女性にふさわしい生き様とも言えるでしょう。『ひとりでしにたい』は、そんな凛とした生き方をコミカルな筆致で描き出し、読後・視聴後には不思議と爽やかな勇気が湧いてくる作品です。現代日本の終活のリアルと向き合いながら、「私も自分らしい幕の引き方を考えてみよう」と前向きな一歩を踏み出すきっかけを、この作品は与えてくれるのではないでしょうか。

【参考資料】

ドラマ公式サイト『ひとりでしにたい』
原作漫画『ひとりでしにたい』(カレー沢薫・講談社)
文化庁メディア芸術祭 第24回受賞作品
朝日新聞デジタル「孤独死7万6千人超 初の統計」
総務省統計局「高齢者の暮らし」
内閣府 高齢社会白書
ハルメク・エイジマーケティング「終活に関する意識・実態調査2025」
司法書士法人永田町事務所コラム「死後事務委任契約の意義」
荒川和久「死ぬときはみんな一人。独身でも結婚していても、孤独死の問題は避けられない」(エキサイトニュース)

葬儀の依頼・相談・資料請求は小さなお葬式へ!24時間365日受付

0120-701-754

資料請求で最大3万円割引!