皆さんこんにちは、相続専門税理士の秋山です。
今日は、夫婦共有口座は税務調査を誘発する恐れあり!というお話をします。
視聴者の方からの質問
これは、以前投稿した贈与税の調査についての動画にいただいた質問なんですが、質問の内容は、住宅購入の頭金として1000万円を収めようとしています。
内200万円は、私の口座から出しますが、残り800万円は夫婦共有財産として認識している、妻名義の口座で貯めているお金を使います。
こちらから800万円を下ろして、私の口座に移動させ1,000万円を支払った場合に、贈与税の対象になりますか?
というものです。
この動画の結論なんですが、この質問はコメント欄に寄せていただいた内容だけでは、判断が難しいんですが、夫婦のうちどちらがお金の本来の持ち主か、という明確な証拠がない状態なので、場合によっては税務署から贈与と指摘される可能性があります。
今回の動画では、まず夫婦共有財産として認識している妻名義の、口座の中のお金は誰のものなのか、というところを説明した後に、税務署が本来のお金の持ち主があやふやな預金から税金を取る手法について解説していきます。
口座の中のお金って一体誰のもの?
ではまず、口座の中のお金は誰のものか、というところなんですが、預金口座の中のお金と言いますのは、預金口座の名義人ではなく、預金口座の中に入ってるお金の本来の持ち主のもの、ということを理解していただく必要があります。
どういうことか、三つのケースを例に説明するんですが、今回質問頂いた方をAさんとしてお話を進めます。
まず預金口座の名義人と、本来のお金の持ち主が一致するのは、どんな場合かと言いますと、ケース1はAさんが自分で稼いだお金を、Aさんの口座に預金している場合。
この場合でしたら、Aさん名義の口座の中に入っているお金は、Aさんのものです。
次にケース2ですね。
Aさんが奥さんに対して、お互いの合意のもとで贈与を行い、奥さん自身が管理している預金口座に、Aさんの口座からお金を振り込む場合。
この場合でしたら、Aさんと奥さんの間で贈与が成立しているので、Aさんが奥さんの口座に入れたお金は、奥さんのものになります。
では、預金口座の名義人と、本来のお金の持ち主が一致しない場合なんですが、これはですね、Aさんが奥さんに内緒で、Aさんが管理している奥さん名義の口座にお金を振り込んでいたり、奥さんがAさんに内緒でAさんのお金を自分の口座に入れていた場合。
この場合、奥さん名義の口座に入っているお金は、Aさんのものになるんですね。
いわゆる名義預金と呼ばれているものになります。
ようは、お金と言いますのは、口座に入金するだけでは、所有権は移動しないんです。
お互いの合意のもとで贈与を行うことで、初めてお金の所有権が移動するんですね。
では、Aさんの場合は、どうなるのかと言いますと、質問の内容によると、奥さん名義の口座に入っているお金は、「結婚後に私が生活費として引き落とした現金の中で、余ったものを数ヶ月に一度入金してたまったものです」、とあります。
夫婦間で合意があるようなので、一見ケース2のように贈与が成立してるように見えますが、「妻名義ではありますが共有財産という認識でいます」、ということですので、この場合Aさんの認識では、奥さんへお金の所有権が移っていないことになります。
つまり、贈与が成立していないんですね。
となると、奥さん名義の口座に入っているお金は、Aさんのもの。
要は名義預金、と判断することもできます。
つまり、奥さんの口座の中のお金の本来の持ち主はAさんですから、自分のお金を自分の口座に移して、住宅を購入するだけなので、奥さんからAさんへの贈与にはなりません。
しかしですね、奥さん名義の口座に入っているお金がAさんのものであるという証拠ってどこにもないんですよね。
口座の中のお金の本来の持ち主があやふやな状態ですから、このお金を使って大きな買い物をすれば、税務署から贈与を疑われることになります。
税務署は〝お金の持主があやふやな預金〟からどうやって税金を取るのか
では、税務署が本来のお金の持ち主が、あやふやな預金からどうやって税金を取るのかというところなんですが、今回の質問の内容のように、持ち主があやふやな状態である預金を、Aさん名義の口座に入れて住宅購入資金に充てた場合、税務署は奥さんからAさんへの贈与と主張することが可能なんですね。
税務署は、「夫は生活費の余りを、贈与税の基礎控除である年間110万円の範囲内で妻に贈与していた。
長期の婚姻期間の中で、贈与額が800万円以上になった、つまり、夫婦の間で贈与があった。妻名義の口座に入っているお金は、妻のお金。
妻名義の口座から、800万円を夫の口座に移して住宅を購入したのは、妻から夫への贈与になり、夫は贈与税の申告と納税が必要」、と主張します。
Aさんが妻名義の口座のお金は、私が預金していたお金です、妻もそのように認識しています、と主張して奥さんもそれに同意しても、奥さん名義の口座に入っているお金が、Aさんのお金という明確な証拠がないわけですから、税務署に反論することができないんです。
今回の動画のまとめ
では、今回の動画のまとめなんですが、視聴者の方からの質問は、住宅購入の頭金として1000万円を収めようとしています。
内、200万円は私の口座から出しますが、残り800万円は、夫婦共有財産として認識している、妻名義の口座で貯めているお金を使います。
これから800万円おろして私の口座に移動させ、1000万円を支払った場合に、贈与税の対象になりますか?
というものでした。
結論としましては今回の質問は、夫婦それぞれの収入状況、年齢、婚姻期間、年間どれくらいの金額を奥さん名義の口座に入れていたのか、など詳細が分からないので、質問の答えとしましては曖昧なものになってしまうのですが、まず、預金口座を共有財産として扱うのは、非常に危険です。
妻名義の預金口座に、夫婦二人が共有財産のつもりでお金を入れていても、税務署はその口座の中のお金を二人の共有財産とは考えず、税金が取れる機会があれば、どちらか片方の財産だと主張してきます。
今回の場合でしたら、奥さん名義の口座の中のお金の、本来の持ち主は誰か、というところがあやふやな状態ですから、お二人が奥さん名義の口座の中のお金は、Aさんのものであるとして、800万円をAさんの口座に移して住宅の購入費用に充てれば、税務署はこれを否認して奥さんからAさんへの贈与と主張することができます。
また、お二人が奥さん名義の口座の中のお金は、奥さんのものであるとしますと、800万円を奥さんが出したら、当然Aさんは贈与税を払う必要がありますよね。
そこで例えば住宅購入費が頭金も含めて2000万円だったとして、そのうち800万円を奥さんが出して、残り1200万円をAさんが出したとしましょう。
奥さんが出した800万円分は、今回の例で言えば、購入費全体の2/5ですね。
住宅を登記するときに、住宅の2/5は奥さんのもの、3/5はAさんの物として夫婦共有名義にすれば、奥さんが住宅購入費として800万円を出しても、Aさんへの贈与にはならないわけです。
ところがですね、何回も言ってますが、奥さん名義の口座の中のお金の本来の持ち主は誰か、というところがあやふやな状態ですから、税務署は奥さんの口座から支払った800万円は、もともとAさんのお金であるとして、住宅を共有名義にしたのは、Aさんから奥さんへの贈与、と主張することもできてしまうんです。
どんなに仲の良い夫婦でも、税務上は他人ですから、どちらの預金かはっきりしないお金は、のちのち問題を起こすことになるんです。
夫婦間でのお金の管理はどのようにすればいいのか
では、夫婦間でのお金の管理は、どのようにすればいいのかと言いますと、口座の名義人と、口座の中のお金の本来の持ち主は、同じにしておくことが重要です。
夫婦それぞれが、自分で稼いだお金は、各自自分名義の口座で管理するようにしましょう。
またもしも、現状においてきちんと贈与が行われていない状態で、旦那さんのお金を奥さんの口座に預金していましたら、税務署から奥さんの口座のお金は誰のお金なのかを追求されかねません。
そうならないためにも、預金を正式に奥さんのお金とするために、三つの手順を踏む必要があります。
その方法なんですが、以前へそくりは、旦那にバラしましょうという、動画でも説明しましたように、一度旦那さん名義の口座に奥さんのへそくりないし、夫婦共有の預金を戻しまして、次に妻にお金をあげる、妻はお金をもらう、という贈与契約書を作成します。
そしていよいよ最後、旦那さん名義の口座に入れたお金を、奥さん名義の口座に振り込めば、そのお金は奥さんのお金、ということになります。
こう説明すると、一度妻名義の口座に入れたお金を、夫名義の口座に移したりしたら、私から夫への贈与になって、夫は贈与税を払わないといけないんじゃない?
と、このように思われるかもしれませんが、この場合、夫婦間でのお金の流れを正しい形に戻しただけですから、税務署はこの行為を贈与とは言いませんので、安心してください。
このようにですね、奥さんが持っているへそくりや、あやふやな夫婦共有のお金を一旦旦那さんに戻すことで、夫婦間でのお金の境界線をきちんと正すことができるんです。
その上で、旦那さんから奥さんにお金を贈与するという契約書もありますし、通帳には旦那さんから奥さんにお金が移動した事実が載っています。
これでもし、旦那さんが亡くなってしまわれた時に、奥さんが高額な預金を持っていたとしても、税務署に対してこの預金は、正真正銘奥さんのものであるという証拠ができるんですね。
以上で今回の動画は終わりです。
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それでは、次回の動画でお会いしましょう、ありがとうございました。
秋山清成
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