人生で葬儀に関わる機会はそう多くはありません。いざその時を迎えると、慣れない言葉や慣習に戸惑う方も多いのではないでしょうか。本記事では、葬儀に不慣れな方が喪主あるいは遺族として葬儀に参加する際に、流れに沿って理解しやすいよう、葬儀に関連する専門用語や慣習を簡潔にまとめました。
目次
臨終後すぐの対応に関する用語
亡くなられた直後は、ご遺族にとって最も心が乱れる時間です。そんな中、病院や葬儀社とのやり取りがすぐに始まり、状況を飲み込む前に「決めなければならないこと」が次々と現れます。
普段聞きなれない言葉が多いので、意味を理解しておきましょう。
臨終からご遺体の搬送・安置までによく使われる言葉
死亡診断書
医師が記入する、亡くなられたことを公式に証明する書類です。火葬許可証を申請するために必要となります。
死体検案書
急死や事故死などの場合に、警察を通じて医師が発行する死亡証明書です。通常の死亡診断書とは扱いが異なります。
エンゼルケア
ご遺体の口元や手足を整え、きれいな姿でお見送りできるよう施される死後処置のことです。多くは看護師によって行われます。
ご遺体搬送(ごいたいはんそう)
病院や施設で亡くなられた場合に必要になります。葬儀社に依頼して、自宅または安置所へ故人を運ぶことを指します。
寝台車
ご遺体を搬送する専用の車両で、病院や施設から自宅や安置所へ移動する際に使用されます。葬儀社が手配します。
安置
ご遺体を一定期間、静かな場所に落ち着いてお休みいただくことです。ご自宅や会館、専用の霊安室などが利用されます。
枕飾り
安置時に枕元に設ける簡易な祭壇で、線香立て、ろうそく、鈴、小さな花などが供えられます。
北枕
仏教の風習に基づく安置の向きで、故人の頭を北に向けて寝かせることが一般的です。
火葬許可証
死亡届を市区町村に提出すると交付される書類で、火葬を行う際に必要となります。
葬儀の準備段階で使われる用語
ご遺体を安置した後、葬儀の日取りや内容を決めるために、遺族と葬儀社との打ち合わせが行われます。この時点で、喪主や施主としての立場が明確になり、さまざまな選択を迫られます。ここでは、打ち合わせの場でよく使われる言葉を解説します。
葬儀の準備段階でよく使われる言葉
葬儀社/葬儀業者
葬儀全般を取り仕切る会社。搬送、安置、通夜、葬儀、火葬、会食、返礼品、法要の手配まで一括で依頼できます。
喪主
葬儀全体の進行を担う遺族の代表者です。一般的には配偶者や長男・長女などが務めます。
施主
葬儀費用を支払う責任を持つ方のことを指します。喪主と同一人物であることも多いです。
宗旨・宗派
仏教や神道、キリスト教、無宗教など、葬儀の宗教形式を示す用語です。宗派によって儀式内容も異なります。
戒名
仏教において、故人があの世で使用する名前として僧侶から授けられるものです。白木の位牌や墓石にも刻まれます。
遺影写真
葬儀式場に飾る故人の写真です。笑顔や落ち着いた表情のものが選ばれることが多く、背景を加工することもあります。
知っておきたい見積もりの用語
葬儀の準備では、精神的な負担だけでなく、現実的な費用の心配もついてまわります。「どこまでが基本費用なのか」「追加料金が発生するのはどんなときか」など、見積もりの内容を理解するためには、使われる用語を事前に知っておくことが大切です。
見積書で目にする機会の多い言葉
見積書
葬儀にかかる費用の内訳を記載したもの。祭壇、棺、霊柩車、返礼品、料理、会場使用料などが含まれます。
プラン葬/セット葬
祭壇・棺・火葬・車両などをパッケージ化した料金体系。家族葬、一般葬、一日葬などに分かれています。
変動費/実費
料理や返礼品など、参列者数によって金額が変わる費用。見積もりに含まれていないこともあるため確認が必要です。
祭壇
故人をお祀りする壇のことで、宗教様式に沿って設置されます。白木を使ったものや生花を中心に構成されたものがあります。
湯灌(ゆかん)
故人の体を清め、化粧を施す儀式です。儀式的な意味合いの強いサービスで、ご希望に応じて追加されることが多いです。専用の湯灌車が自宅に来て対応するケースもあり、オプション扱いとなります。
ドライアイス
ご遺体の保存状態を保つために使用される冷却材です。安置期間が長くなる場合は、追加日数に応じて費用が加算されます。見積書では「○日分」として日数単位で記載されるのが一般的です。
安置料
自宅以外の施設(葬儀社の霊安室や会館)でご遺体を安置する際に発生する使用料です。1日単位で計算されることが多く、施設によって設備内容や料金体系が異なります。
司会進行料
葬儀の進行を担当する司会者(プロのナレーターやスタッフ)に対する費用です。ナレーション形式や故人紹介などを含む内容の場合、基本プラン外として追加料金が発生することもあります。
控室料(待合室使用料)
火葬中に遺族や参列者が待機する控室の利用料です。飲食付きの控室や個室タイプなど、内容により料金が変わります。火葬場や葬儀会館が提供する施設によっては、あらかじめプランに含まれていることもあります。
遺影写真加工費
遺影として使用する写真を引き伸ばし、背景を修正・加工する費用です。カラーやモノクロ、額縁のデザインなどによって料金が変わることがあります。予備の小型写真をセットで作成することも可能です。
通夜・告別式の場でよく使われる用語
葬儀の中心となるのが通夜と告別式です。この2つの場面では、多くの人が集まり、儀式の進行も本格的になります。宗派による違いもある中で、一般的によく耳にする用語を知っておくことで、慌てず対応できるようになります。
通夜・告別式でよく使われる言葉
通夜
葬儀の前日に執り行われる儀式で、親族や近しい方々が集まり、故人と静かに過ごす時間です。近年では1〜2時間の「半通夜」が主流です。
葬儀
僧侶による読経などを通して、故人の冥福を祈る儀式です。宗教的な意味合いが強く、葬送の中心的な行事です。
告別式
参列者が故人に最後の別れを告げる式で、宗教儀礼に続けて行われることが多いです。
会葬
葬儀や告別式に出席することを指します。参列者は「会葬者」と呼ばれます。
会葬礼状
葬儀にご参列いただいた方へ、お礼の気持ちを伝えるためにお渡しする文書です。返礼品に添えられることが多いです。
焼香
香を焚いて祈りを捧げる行為で、仏教の葬儀ではほぼ必ず行われます。宗派により回数や作法に違いがあります。
喪服
葬儀の場にふさわしい服装で、男女ともに黒を基調としたフォーマルな装いが求められます。
導師
仏式の葬儀において、読経や法話などを担う僧侶を指します。
弔辞
故人との思い出や感謝の気持ちを述べるお別れの言葉で、代表者が式中に読み上げます。
弔電
参列できない方が、哀悼の意を伝えるために送る電報です。通夜や告別式で読み上げられたり、祭壇に飾られることもあり、ご遺族への気持ちを形に残す手段として利用されています。近年では、【VERY CARD】のようなオンラインで電報を申し込むことができるサービスもあり、急な訃報にも安心して利用できます。
参考 弔電・お悔やみ電報VERY CARD位牌
故人の戒名や俗名、没年月日などが記された木製の牌で、葬儀や法要の際にお祀りされます。葬儀時には「白木位牌」が用いられ、後日、本位牌として仏壇に安置されることが一般的です。
お布施
僧侶に対して、読経や戒名の授与など仏事の勤めに対してお渡しする謝礼のことです。金額に決まりはありませんが、地域や宗派、ご家族の事情に応じて包むのが通例です。
通夜ぶるまい
通夜の後に、参列者や親族に振る舞う食事のことです。簡単な軽食や寿司、煮物などが用意され、故人を偲びながら語り合う場となります。現在は感染症対策等から弁当対応や簡略化されることも増えています。
出棺・火葬・収骨に関する用語
告別式が終わると、いよいよ故人との最期の別れとなる「出棺」と「火葬」の場面へ移ります。感情が大きく揺れるこの時間にも式次第に従って進行が進みます。落ち着いて対応できるよう、用語について知っておきましょう。
火葬までの流れでよく使われる言葉
出棺
葬儀が終わった後、ご遺体を霊柩車に乗せて火葬場へ向かうことを指します。「お別れ花」を納める儀式もこの時に行われます。
霊柩車
火葬場へご遺体を搬送するための専用車両です。地域によって洋型や宮型などデザインが異なります。現在は高級セダン型やバン型の霊柩車が主流です。
お別れ花
出棺前に、ご家族や参列者が棺の中にお花を手向ける儀式です。最後のお別れの場面として大切にされています。
火葬
ご遺体を荼毘に付す葬送の儀式です。地域によっては読経の後に火葬を行い、骨上げ(収骨)を遺族が行います。
収骨
火葬後に遺骨を骨壺へ納める儀式です。通常はご遺族が二人一組で箸を使って行います。
骨壺
収骨した遺骨を納めるための容器で、陶器製や漆塗りなどがあります。納骨まで自宅などで保管されます。
埋葬許可証
火葬が終了した後に発行される書類で、遺骨をお墓などに納める際に必要になります。
葬儀後・法要に関する用語
火葬が終わったからといって、すべてが終わるわけではありません。ご遺骨を自宅に迎えてから、四十九日法要までの間にも、必要な対応や儀礼が続きます。個人を弔うために大切な儀式も多いため、よく理解しておきましょう。
葬儀後の供養や返礼などに関連する言葉
後飾り祭壇
ご自宅でご遺骨や遺影を安置するために設ける小さな祭壇です。四十九日までの仮祭壇として使用されます。
初七日
亡くなられてから7日目に営まれる法要で、現在では葬儀当日に繰り上げて行う「繰り上げ初七日」が一般的になっています。
四十九日
故人が極楽浄土へ旅立つとされる節目の日で、忌明けの法要を行い、納骨や香典返しなどを行います。
忌明け(きあけ)
四十九日法要をもって喪に服する期間が終わること。香典返しもこのタイミングで行われます。
納骨
火葬後のご遺骨をお墓や納骨堂に納めることを指します。四十九日と同時に行われることが多いです。
香典返し
葬儀や法要でいただいた香典に対して、お礼の気持ちを込めて品物を贈ることです。通常は忌明け後に行います。
法要
亡くなられた方の供養のために、定期的に行われる儀式です。四十九日や一周忌、三回忌、七回忌などがあります。
精進落とし
葬儀や法要のあとに、ご遺族が参列者へお礼の気持ちを込めて振る舞う会食です。本来は四十九日までの「精進期間」を終える食事のことですが、現在では葬儀後に参列者へ振る舞うことが増えています。
新しい葬儀のかたち
現代の葬儀では、形式や価値観も多様化してきています。「家族葬」「直葬」「一日葬」など、従来の一般葬にとらわれない新しい選択肢が増え、それに伴って使われる用語や葬送のスタイルも変わってきました。ここでは、近年注目されている葬儀のかたちと、それぞれの特徴についてご紹介します。
新しい葬儀に関する用語
家族葬
ご家族や親しい方のみで行う、少人数で落ち着いた葬儀の形式です。準備や費用の負担を抑えながら、故人との時間をゆっくり過ごせる点が支持されています。【小さなお葬式】や【よりそうお葬式】など、家族葬を中心に扱う葬儀社も増えており、地域や予算に応じて柔軟に対応してくれます。
一日葬
通夜を行わず、葬儀と告別式・火葬を一日で済ませる形式です。時間や費用の負担を抑えたい方に選ばれています。葬儀プランの比較検討には、全国対応の【安心葬儀】のような葬儀社の一括見積・口コミ比較サイトの活用も効果的です。
参考 葬儀社一括見積サービス安心葬儀直葬(火葬式)
通夜や葬儀を行わず、ご遺体を直接火葬する形式です。宗教儀礼を伴わないことが特徴です。
無宗教葬
特定の宗教に依らずに行う葬儀で、音楽や映像を取り入れた自由なスタイルも増えています。
葬儀に関するQ&A
ここでは、初めて喪主や遺族として葬儀に関わる方が抱きがちな不安や疑問について、簡潔にお答えします。
葬儀社との打ち合わせはどのタイミングで行うのですか?
ご遺体を搬送した直後、または安置が済んだ直後に行われるのが一般的です。
早ければ臨終の当日中に1回目の打ち合わせがあり、通夜や葬儀の日程、式場、費用、形式などを決めていきます。
「喪主」と「施主」は違うものですか?
厳密には異なる意味ですが、実務上は兼任されることが多いです。
喪主は儀式の代表者、施主は費用負担者の意味ですが、両方を遺族代表が担うケースがほとんどです。
「家族葬」でも通夜と葬儀は必要ですか?
家族葬にも通夜・葬儀を行う場合が多いですが、省略することも可能です。
最近は「一日葬」といって、通夜を省略し葬儀と火葬だけを行う形式も選ばれています。状況や意向に応じて選べます。
宗派が分からないときはどうすればいいですか?
仏教であれば、仏壇や位牌、お墓の形から宗派が分かることがあります。
どうしても不明な場合は、葬儀社が中立的な僧侶を紹介してくれることもあります。事前に親族と相談しておくと安心です。
費用を抑えたいとき、どうすればよいですか?
火葬式(直葬)や一日葬を選ぶことで、費用は大幅に抑えられます。
また、必要最低限のオプションだけを選び、返礼品や会食の範囲を調整することで予算内に収めることができます。不安な場合は「予算を○万円以内にしたい」と率直に葬儀社へ伝えても問題ありません。
香典返しはすぐに渡すものですか?
地域によって異なりますが、全国的には忌明け(四十九日)後に郵送でお返しするのが一般的です。
通夜や告別式の場で「即返し(当日返し)」として品物を手渡すケースも増えていますが、事前に準備が必要です。
火葬後のご遺骨はどこに安置すればよいですか?
四十九日までは、ご自宅の後飾り祭壇に安置するのが一般的です。
その後、お墓に納骨するか、納骨堂へ預けるなどの選択肢があります。寺院の意向も確認しておきましょう。
葬儀に関する用語やしきたりは、初めて経験される方にとって大きな負担に感じられることもあるでしょう。しかし、「知らないことは恥ずかしいことではありません」。大切な人を心から送りたいという想いがあれば、それだけで十分です。
まとめ
葬儀は突然訪れるうえ、限られた時間の中で多くの判断を迫られます。用語を知っているだけで、葬儀社とのやりとりがスムーズに進み、心の余裕にもつながります。
本記事で紹介した言葉は、あくまで一般的なものです。宗派や地域、個別の状況により異なる場合もあるため、不明点があれば遠慮なく葬儀社に確認することをおすすめします。
「大切な人をきちんと送りたい」。その想いを支えるために、正しい知識は大きな力になります。