皆さんこんにちは。相続専門税理士の秋山です。
今日は「家族が亡くなった後に多くの方が直面する手続きに関する悩み11選」についてお話します。
家族が亡くなった後に、多くの方が直面する悩みが故人の手続きについて「一体何から始めればいいのか分からない」というものです。
家族が亡くなった後の手続きには、相続発生後すぐに行うべきものや、葬儀までに行うべきもの、葬儀後に速やかに行うべきものといった悲しみに暮れる暇がありません。
手をつけなければならない手続きの他、故人にはどんな財産や借金があったのかの調査や、遺言書がある場合には遺言書を正式に受け取るための手続きも必要です。
また故人に所得がある場合には、準確定申告の手続きや、相続税がかかる場合には相続税の申告といった様々な手続きを行う必要があるんですね。
これら全ての手続きを一から自分で調べて実行するのは本当に大変です。
今回の動画では、家族が亡くなった後に多くの方が直面する手続きに関する悩み11選と、それらについての対処法について手続きの期限が早いものから順番に解説を行っていきます。
今回の動画は相続税がかかる、かからないに関わらず、家族の死を経験する全ての方にとって必要な情報をまとめております。
今回の動画では、細かな書類の書き方までは全て解説できませんが、ざっくりとでもこの時期には、この手続きを行う必要があるということさえ知っておいていただければ、将来家族が亡くなった際にもある程度冷静に故人の手続きを進めることができるでしょう。
そのための事前知識として今回の動画を活用していただければと思います。それでは早速、本編を見ていきましょう。
目次
①家族の死亡後すぐに行うべき手続き
最初に解説するのは、家族の死亡後すぐに行うべき手続きについてです。
ⅰ 死亡診断書(死亡検案書)の受け取り
家族が亡くなった場合、最初にやるべきことは死亡診断書を受け取ることです。
死亡診断書がないと、葬儀や火葬、納骨などの手続きができません。
この死亡診断書の受け取り方には大きく2通りありまして、家族が病院で亡くなったのであれば、臨終時に立ち会った医師に死亡診断書を書いてもらえます。
逆に家族が自宅で亡くなった場合は、病院から医師に訪問してもらうことになります。
その際、かかりつけの病院がある場合はまずはその病院に連絡をしましょう。
故人がその病院の担当医から24時間以内に診察・治療を受けており、持病によって亡くなったのであれば、担当医が臨終に立ち会わなくても死亡診断書を発行してもらえます。
たとえ生前の診察を24時間以上経過していたとしても、担当医が自宅に来てくれて持病による死亡で間違いないと確認できたら、死亡診断書が発行されます。
逆にかかりつけの病院がない場合には、家族が亡くなったことの連絡は警察に対して行います。
連絡後、監察医や検察官が自宅にして検視を行い、死亡に事件性がないと判断されると、死亡診断書と同じ内容の死体検案書を受け取ることができます。
ⅱ 死亡診断書(死亡検案書)の費用
死亡診断書の発行にかかる費用は、一般的に1枚3,000円から1万円程度です。
一方、死体検案書の場合、死因調査のための検案代や遺体の搬送代金、保管料などがかかるため、1枚3万円から10万円ほどの費用がかかります。
死亡診断書の発行を受けるか、死体検案書の発行を受けるかで、その費用に10倍ほどの差がありますので、現在高齢の家族がいて、かかりつけの病院がないという方は、これを機にぜひお近くで病院を見つけていただければと思います。
②葬儀までに行うべき手続き
死亡診断書を受け取りましたら、次は家族の死亡届を市役所に提出します。
ⅰ 死亡届の提出
死亡届については先ほど受け取った死亡診断書の左半分が死亡届となっていますので、空欄に必要事項を記入しましょう。
記入する内容としては、亡くなった方の氏名、生年月日、死亡した時間と場所、住所、本籍地、配偶者の有無、故人と同一世帯で暮らしている方の職業と故人の職業。そして最後に故人と死亡届の届け出人の関係性にチェックを入れ、死亡届の届け人の住所、本籍地、署名をした上で市役所に提出します。
一般的に死亡届の提出は、葬儀の依頼先である葬儀社が行ってくれますが、書類上の届け出人に関しては、戸籍法上、同居親族の他、その他の同居者、亡くなった場所である家屋または土地の所有者、もしくは家屋管理人、土地管理人などが届け出人となります。
故人の死亡届を届け出人自らが提出する場合は、故人の本籍地または死亡地、届出人の現住所地のいずれかの市役所に提出を行ってください。
その際の注意点として、死亡届を一対になっている死亡診断書に関しては、その後の金融機関や保険会社での手続きで必要になることがあります。
ですので、市役所への提出前に死亡診断書のコピーを5~10枚ほどとっておいてください。
これは葬儀社に死亡届の提出を代行してもらう場合も同様です。
その後の手続きのために、死亡診断書に関してはしっかりと複数枚手元に保管しておきましょう。
ⅱ 埋火葬許可証の申請
死亡届を届人が提出する場合、同時に市役所の窓口で埋火葬許可申請書を受け取り、必要項目を記入の上で担当者に提出してください。
そうするとその場で埋火葬許可証が発行されます。
この埋火葬許可証を火葬場に提出し、火葬が済むと火葬場が火葬許可証に日付と証印を押し、返却をしてくれます。
そしてこれが埋葬許可証となり、墓地に埋葬する際に必要となるというわけですね。
③葬儀後に速やかに行うべき手続き
無事に葬儀が終わり、目の前の忙しさが多少落ち着いたのも束の間、次は葬儀後に速やかに行うべき手続きに取りかかる必要があります。
葬儀後に速やかに行うべき手続きについては、主なものに年金受給権者死亡届の提出、世帯主変更届の提出、医療保険に関する資格喪失届の提出、介護保険に関する資格喪失届の提出などがあります。
ⅰ 年金受給権者死亡届の提出
年金を受けていた方が亡くなった場合、故人が厚生年金に加入していた場合は死亡後10日以内、国民年金に加入していた場合は、死亡後14日以内に年金事務所または年金相談センターに対して遺族の方が受給権者死亡届の提出を行い、年金の受け取りを提出する必要があります。
その際の届け出に必要な添付書類としては、亡くなった方の年金証書の他、下図にある書類のいずれかとなります。
ちなみに、故人が生前にマイナンバーの収録、つまりマイナンバーと基礎年金番号の結びつけを日本年金機構や市区町村、事業主に届け出ていた場合には、この受給権者死亡届の提出は必要ありません。
この動画を見られている親御さんで、自分のマイナンバーの収録状況がわからないという場合には、ねんきんネットか、近所の年金事務所に問い合わせをしてみてください。
収録が完了していない場合には、こちらの個人番号と登録届を提出することで無事にマイナンバーの収録が完了します。
ⅱ 世帯主変更届の提出
葬儀後に速やかに行うべき手続きの2つ目は、世帯主変更届の提出です。
亡くなった方がその家庭における世帯主だった場合には、世帯主の死亡後14日以内に、世帯の居住地を管轄する市区町村役場に対し、世帯主変更届を提出する必要があります。
届け出人となる人は、新しい世帯主か同一世帯の人、もしくは委任状を持った代理人です。
届け出に際して必要な添付書類としては、本人確認書類と代理人が届け出を行う場合には委任状が必要となります。
ちなみに、この世帯主変更届に関しては届け出が必要ないケースもあります。
それは世帯主が亡くなったことにより、世帯に誰もいなくなった場合か、もしくは2人暮らし世帯の夫婦のうち世帯主の夫が死亡し、次の世帯主が妻であると明白な場合、その他には世帯主が亡くなったことにより、世帯に残った人が親と15歳未満の子供だけという場合です。
15歳未満の子供は世帯主になることができませんので、自動的に親が世帯主となることが明白だからですね。
つまり世帯主が亡くなり、その世帯に15歳以上の人が2人以上残っている場合に限り、世帯主変更届の提出が必要ということを覚えておいてください。
ⅲ 医療保険に関する資格喪失届の提出
葬儀後に速やかに行うべき手続きの3つ目は、医療保険に関する資格喪失届の提出です。
日本は国民皆保険制度が導入されていますので、会社員や公務員の方は健康保険、自営業や無職の方は国民健康保険、75歳以上の高齢者の方は後期高齢者医療制度に加入しています。
そしてどの保険に加入しているかによって、書類の提出先や必要手続きは変わってきます。
亡くなった方が国民健康保険加入者だった場合は、死亡の翌日にその資格を失います。
大抵の市区町村においては、先ほどお話した故人の死亡届を提出した際に資格喪失手続きが完了しますので、改めて手続きをする必要はありません。
しかし、別途手続きが必要な市町村もあるようですので、その場合は故人の死亡後14日以内に故人の住所を管轄する市役所に対し、国民健康保険資格喪失届を提出する必要があります。
届け出人となる人は世帯主が同一世帯の人、もしくは委任状を持った代理人で届け出に際して必要な添付書類としては、下図に記載されている書類が必要となります。
また亡くなった方が後期高齢者医療制度加入者だった場合も、死亡の翌日にその資格を喪失します。
大抵の市区町村においては、先ほどお話した故人の死亡届を提出した際に資格喪失手続きが完了しますので、改めて手続きをする必要はありません。
しかし、別途手続きが必要な市区町村もあるようですので、その場合は、故人の死亡後14日以内に故人の住所を管轄する市役所に対し、後期高齢者医療制度資格喪失届を提出してください。
その際の届け出人となる人は、世帯主か同一世帯の人、もしくは委任状を持った代理人です。
資格喪失届の提出の際には、故人の被保険者証も忘れずに窓口で返却するようにしてください。
次に亡くなった方が健康保険加入者だった場合は、死亡の翌日にその資格を喪失しますが、資格喪失届の提出などは基本的に亡くなった方の勤務先が行ってくれます。
その際の提出期限は、死亡後5日以内と決まっておりますので、ご家族が亡くなった場合には速やかに故人が勤めていた会社に連絡を入れるようにしてください。
ちなみに医療保険に関する資格喪失届を行う際の重要なポイントとして、亡くなった方が国民健康保険に加入しており、さらに世帯主だった場合は、世帯主の資格喪失手続きの際に、同一世帯の国民健康保険加入者の保険証にある世帯主欄を変更する必要があります。
ですので、世帯全員分の保険証も手続きの際に窓口に持参してください。
また、亡くなった方が健康保険加入者で、扶養家族がいる場合には、加入者が死亡すれば扶養家族も加入資格を失うことになります。
そのため、扶養家族は加入者の死亡後に、他に健康保険に加入している人がいれば、その人の扶養に入り直す必要がありますし、健康保険加入者がいなければ、国民健康保険に加入する必要があります。
ⅳ 介護保険に関する資格喪失届の提出
葬儀後に速やかに行うべき手続きの4つ目は、介護保険資格喪失届の提出です。
亡くなった方が介護保険加入者の場合は、死亡の翌日にその資格を失います。
これまで同様、介護保険資格喪失届に関しても大抵の市町村においては、故人の死亡届を提出した際に資格喪失手続きが完了しますので、改めて手続きをする必要はありません。
別途手続きが必要な場合は、故人の死亡後14日以内に故人の住所を管轄する市区町村役場に対し、介護保険資格喪失届を提出してください。
届け出人となる人は世帯主か同一世帯の人、もしくは委任状を持った代理人で、届け出に際して必要な添付書類としては下図にある書類が必要となります。
書類を提出する際には、故人の被保険者証などを窓口で返却するようにしてください。
④四十九日までを目途に行うべき手続き
次に家族が亡くなった後に行うべき手続きは、公共サービスや月額サービスの名義変更または解約です。
ⅰ 公共料金の名義変更や解約
亡くなった方が契約者となって、故人の口座から引き落とされていた電気代やガス代、水道代といったものは、故人が亡くなった後においても料金が発生し続けます。
同居親族が引き続き電気・ガス・水道を使いたい場合には、契約者の名義変更を迅速に行いましょう。
相続手続きの忙しさなどから契約者名義をそのままにしていると、口座凍結のタイミングや故人の口座の残高不足が起こった際に、サービスの提供が止められる恐れがありますからね。
逆にもう誰も使わないのなら、余分な支払いを防ぐためにも相続人の方がサービスの契約先に対して解約の連絡を入れましょう。
同様の理由から亡くなった方が契約者となり、その方の口座から引き落としされていた固定電話料金や携帯電話料金、新聞料金やNHK受信料、その他月額サービス料金に関しても、同居親族が引き続き利用する場合には、契約者の名義変更を迅速に行いましょう。
もしくは誰も使わないのなら、契約元に連絡を入れて解約をしておきましょう。
ⅱ クレジットカードの解約
亡くなった方がクレジットカードを所有していた場合「クレジットカードは解約しなければいけないのか?名義変更をすれば家族が引き続き利用可能なのか?」という質問もよく受けます。
結論として、クレジットカードに関しては契約者が死亡した場合には、解約しなければならないと、規約によって定められているところがほとんどです。
つまり、故人のクレジットカードの名義変更をして、引き続き家族が利用するということはできないというわけですね。
そのためクレジットカードの所有者が亡くなった場合には、速やかにクレジットカード会社に解約の連絡を入れましょう。
しかし、その際の注意点として、公共料金などの支払いが故人のクレジット払いになっており、残された家族がそのサービスを引き続き利用したい場合には、クレジットカードの解約よりも前に各会社に連絡を入れ、各サービスの名義変更並びに支払い方法の変更手続きを行っておきましょう。
この手順でカードの解約を行わないと、電気やガスが使えなくなる可能性がありますからね。
⑤遺言書がある場合の手続き
ここまでが家族が亡くなってから2ヶ月以内に行わなければならない手続きとなります。
ここからの手続き⑤~⑪は、これまでの手続き①~④が終わってから始めても十分に間に合いますので、落ち着いて対処していきましょう。
ⅰ 亡くなった方が自筆証書遺言を残していた場合
亡くなった方が自宅に自筆証書遺言を残していた場合、その遺言書は遺族が勝手に開封してはいけません。
それは、相続人全員の同意の元でも同様です。
なぜなら、自筆証書で作成された遺言書というのは、第三者による偽造等が行われていないかを確認するため、相続発生後に一度、家庭裁判所で検認手続きを行う必要があると、民法で定められているからです。
この検認手続きを行わなかったとしても、遺言書自体が無効になることはありません。
しかし、検認手続きを行わずに遺言書を勝手に開封してしまうと、最悪の場合、5万円以下の過料に処される可能性がありますし、何よりも不動産の名義変更を行う際には、検認済み証明書を添付した遺言書が必要になります。
遺言者が自筆証書遺言を残されていた場合は、勝手に中身を確認せず、家庭裁判所で検認手続きを行っていただければと思います。
また誤って開封してしまったとしても、検認を受けることは可能ですので、必ず検認手続きを行うようにしてください。
検認手続きにかかる時間としては、家庭裁判所に検認の申し立てを行ってから、実際に検認が行われるまで大体1~2ヶ月程度となります。
ⅱ 亡くなった方が自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合
亡くなった方が生前に遺言書を法務局で保管してもらう自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合の手続きです。
基本的に法務局側は、遺言者が死亡した事実をすることができませんので、遺族自らが法務局に対して遺言書の受け取りを申請することになります。
その際に必要となるのが、亡くなった方が保管制度を利用した際に受け取っていた保管証です。
この保管証には、遺言者の氏名、出生年月日、手続きを行った遺言保管所の名称、そして保管番号が記載されており、遺族が遺言書受け取る際には、この保管番号を交付請求書に記入して申請を行う必要があります。
もしあなたが遺言書を残す立場の場合、相続発生後に家族の方たちがスムーズに遺言書を受け取ることができるよう、遺言書は法務局に遺言書を預けていることを家族に伝えた上で、保管証のコピーを渡しておいてください。
ちなみに自筆証書遺言書保管制度に関しては、法務局で保管が行われるという特性上、第三者による偽造等が起こりませんので、家庭裁判所での検認手続きも不要です。
ⅲ 亡くなった方が公正証書遺言を残していた場合
亡くなった方が公正証書遺言を残していた場合は、遺言書の原本自体は、公証役場で保管されることになります。
それと同時に原本と同じ効力を持ち、相続手続きが可能な正本と、法的効力自体はないですが遺言内容の確認用として利用できる謄本を受け取っているはずです。
これらの書類が、亡くなった方の自宅や貸金庫などに保管されていないか確認をしてみましょう。
もしあなたが公正証書遺言を残す立場の場合は、公正証書遺言を作成した旨を相続人たちに伝えた上で、正本は厳重に保管し、謄本は家族に渡しておいていただければと思います。
ちなみに公正証書遺言に関しても、原本が公証役場に保管されるという特性上、家庭裁判所による検認手続きは不要です。
⑥故人の財産・負債の把握
次に家族が亡くなった後に行うべき手続きは故人の財産・負債の把握です。
なぜなら亡くなった方の財産額・負債額が分からないと、相続放棄や準確定申告、相続税の申告が必要かどうかが判断できないからです。
この判断を行う上で必要となる書類に関しては、以前投稿したこれらの動画で詳しく解説しておりますので、ぜひこれら2本の動画を参考に、故人の財産・負債を把握してみてください。
【保存版】相続が発生した際に〝自宅〟で集めなくてはいけない書類
【保存版】相続が発生した際に〝公共機関や金融機関〟で集めなくてはいけない書類と集め方
ある程度の書類が集まれば専門知識がなくても、ざっくりとですが亡くなった方の財産額・負債額が見えてきます。
このざっくりとした金額さえ把握できれば、この後の相続放棄や準確定申告、相続税の申告を行うべきかの判断は可能です。
しかし、不動産の相続税評価額などは、集めた書類の表面上の金額だけではわからないケースも多いです。
故人の正確な財産額・負債額を知った上で、今後の税金に関する手続きを進めていきたいという方は、財産・債務を把握する初期の段階で相続専門の税理士などに依頼をされるのがいいでしょう。
ちなみに、亡くなった方が遺言書を残されていた場合も、財産と債務の把握は改めて行われた方がいいです。
といいますのも、実は遺言書に記載されている財産というのは、遺言書を作成した後においても使用することが可能なんですね。
なので、遺言書に記されている財産が実はもう既に亡くなっていたというケースもありますし、逆に遺言書を作成した後に、財産が増えるというケースも稀にですが発生します。
ですので、遺言書が見つかったとしても、亡くなった方の財産・債務の把握は、改めてきちんと行っていただければと思います。
⑦相続放棄をするべきかの判断&手続き
亡くなった方の財産額・負債額が判明しましたら、最初に行うべき行動が相続放棄が必要かどうかの判断です。
相続放棄は、亡くなった方の財産が預金や有価証券といったプラスの財産よりも、債務や借金といったマイナスの財産の方が多い場合、相続放棄を行いたい相続人の方が、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して「相続放棄を行います」という申し立てを行うものです。
この期間中に相続放棄の手続きを行わないと、強制的に亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産を相続する単純承認が適用されてしまいますので、相続放棄を実行するかどうかの判断は故人の財産内容が把握でき次第、すぐに行っていただければと思います。
その上で実際に手続きを行う際に必要となる書類は、相続放棄の申述書と添付書類は下図の通り、亡くなった方や相続放棄を行う方の戸籍関係の書類がメインとなります。
相続放棄の申述書に記入する内容としましては、申述を行う人の基本情報と亡くなった方の基本情報、そして相続の開始を知った日を記入し、登記の理由と財産・負債の概略を書いた上で、申述書を提出する裁判所名と、提出する日の日付、申述人の署名と印鑑の捺印をしてください。
ちなみにこの際の印鑑に関しては、実印である必要がなく認印で問題ありません。
最後に添付する書類にチェックを入れ、800円分の収入印紙を貼って完成となります。
⑧準確定申告が必要かの判断&申告手続き
次に家族が亡くなった後に行うべき行動は、準確定申告が必要かどうかの判断です。
皆さんがよく耳にする所得税の確定申告というのは、1月1日から12月31日までに得た収入を翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に対して申告をする、というものですよね。
しかし、所得税の申告をしなければならない本人が、年度の途中で亡くなってしまった場合、翌年の確定申告をすることはできません。
そこで必要になるのが準確定申告です。
準確定申告というのは、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に亡くなった方の相続人全員が共同で、故人の死亡した年の1月1日から死亡日までの所得に対して申告書を作成し、亡くなった方の住所を管轄する税務署に提出を行うというものです。
準確定申告をする必要がある人は、死亡した年に事業所得や不動産所得があった方や公的年金による収入が400万円以上あった方、死亡した年に不動産や株式の売却を行い利益が出ていた方が対象となります。
実際に準確定申告が必要な人というのは、そこまで多くはないんですね。
ちなみに相続放棄を行った方というのは、もう相続人ではありませんので、準確定申告を行う義務はありません。
むしろ逆に相続放棄を行ったのに、その後に準確定申告を行い、納税をしたり、所得税の還付を受け取ってしまうと、結果的に相続放棄が取り消されるリスクもありますので注意が必要です。
この準確定申告の具体的な申告書の書き方や手続きの方法については別途動画を作成する予定ですので、気になるという方はぜひ動画の公開をお待ちいただければと思います。
⑨相続税が掛かるかの判断&申告手続き
次に家族が亡くなった後に行うべき行動は、相続税がかかるかどうかの判断です。
ここまでの流れから、遺族の方たちは亡くなった方の財産額と負債額の把握ができていますよね。
後はその金額が相続税の基礎控除である3,000万円+600万円×法定相続人の人数を超えれば、相続税の申告が必要です。
超えなければ相続税の申告は必要ありません。
ちなみに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といったお得な制度を使った結果、亡くなった方の相続税額が0円になったとしても、相続税の申告自体は必要となりますので、その点はしっかりと覚えておいてください。
ではその上で、相続税の申告が必要だとわかった場合、申告書の作成は基本的に相続人全員で進めることになり、相続の開始を知った日から10ヶ月以内に申告書を作成し、亡くなった方の住所を管轄する税務署に対して提出を行ってください。
その際の添付書類としては、これらのものが必要となります。
このうち、最後の財産評価明細書についてですが、代表的なものに「土地および土地の上に存する権利の評価明細書」というものがあります。
これは亡くなった方の所有していた土地が、いびつな形をしていたり、間口や奥行きの距離が短かったり長かったりで、使い勝手が悪い場合、この評価明細書で土地の減額要素を計算した上で「こういった理由で亡くなった方の土地の評価額を下げていますよ」と税務署に報告する書類なんですね。
この財産評価明細書の作成に関しては、かなり専門的な知識が必要となります。
亡くなった方の所有している土地が綺麗な正方形ではないという場合や、土盛りや土留めが必要な土地であるといった場合には、相続税に精通した税理士に申告書の作成を依頼されることをおすすめします。
⑩遺産分割協議書が必要かの判断&作成手順
次に家族が亡くなった後に行うべき行動は、遺産分割協議書の作成が必要かどうかの判断です。
遺産分割協議書というのは、亡くなった方の財産を誰がどのように相続するのかをまとめた書類です。
ⅰ 作成する必要のない家庭
遺産分割協議書を作成する必要のない家庭、ある家庭というのは決まっております。
まず亡くなった方の財産を相続する法定相続人が1人しかいない場合か、亡くなった方が生前に自分の全ての財産について、一つも漏らすことなく遺言書で分け方を記しており、相続人たちがその遺言書通りに財産を分ける場合、この二つの過程においては、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
ⅱ 作成する必要がある家庭
しかし、それ以外の家族、つまり遺言書がない家庭や、遺言書通りに財産を分けない家庭、遺言書に一部の財産しか記載されていない家庭においては、遺産分割協議書は作る必要がある、もしくは作っておいた方がいいんですね。
なぜかと言いますと、先ほども出てきました配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例といったお得な特例制度を利用するためには、相続税の申告書を提出する際に、遺産分割協議書を添付して誰が相続したどの財産に対して特例を適用したいのかを税務署に届け出ないといけないんです。
もしもあなたの家庭が相続税がかかる家庭で、相続人が複数人おり、亡くなった方が遺言書を残していない、もしくは残してくれた遺言書とは違う分け方で遺産分割を行いたいという場合には、特例を受けるために遺産分割協議書の作成が必要というわけなんです。
ⅲ 相続税がかからない家庭においても作成しておく理由
遺産分割協議書は、相続税がかからない家庭においても作成しておく必要があります。
なぜかと言いますと、亡くなった方の不動産名義を相続人名義に変更する際や、預金や株式等の金融資産の名義変更を行う際に、亡くなった方の財産を誰が相続するのかが正式に記されている遺産分割協議書が必要になるからです。
その他にも、遺産分割協議書を作っておけば、過去に行った遺産分割協議自体の証拠資料にもなりますので、遺産分割協議で決まった内容を反故にしようとする人に対しての抑止力にもなります。
こういった理由から、基本的に法定相続人が1人しかいない場合か、亡くなった方の遺言書通りに財産を分ける場合、この2つの家庭以外においては、財産の多い少ないに関わらず、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
その際の遺産分割協議書の作成手順については、以前投稿したこちらの動画で詳細のスライド付きで解説を行っております。
動画の内容に興味があるという方は、ぜひご覧になってみてください。
【保存版】遺産分割協議書を自分で作成する方法!作成時の注意点も解説
⑪ 故人の預金や不動産の最適な名義変更時期
最後に家族が亡くなった後に行うべき行動は、亡くなった方の預金や不動産の名義変更を最適なタイミングで行うというものです。
相続税の申告期限というのは、家族に相続が発生してから10ヶ月以内と決まっています。
しかし、現在の法律においては、亡くなった方の預金や有価証券、それに不動産の名義変更について、絶対にこの日までに名義変更を行わなければならないといった記述は決められておりません。
そのため多くの方が「いつどのタイミングで親から相続した財産の名義変更をするのがベストなのか?」その時期に悩まれているんですね。
では相続財産の名義変更を行う最適なタイミングはいつか?ですが、その答えはズバリ、財産全体の遺産分割協議が完了した後となります。
この詳しい理由についても、以前投稿したこちらの動画でこれら2つのケースをもとに解説しております。
親から相続した預金や不動産!名義変更をすべき最適なタイミングとは?
今回はこのうちのケース1、特定の財産だけを一足先に名義変更してしまったことで、小規模宅地等の特例が使えなくなった家族について解説していきます。
まず前提としてこの家族の長女は2年前に夫と死別しており、近々、自分名義の自宅を売却し、父親所有の自宅で大学生の子供を含めた4人で暮らそうと話をしていた折に父親の相続が発生しました。
そのため今回のケースにおける相続人は、配偶者である母親と長女の2人になります。
その後、父親の四十九日も終わり財産の相続について考え始めた2人は、次のような会話を行います。
「亡くなったお父さんには3,000万円の自宅不動産と500万円の預金しかないから、財産をどのように分けても、今回相続税はかからないよね?」
「だったら自宅不動産の名義変更手続きを1回で済ませるためにも、今回の相続ではあなたが自宅を相続すればいいじゃない。そうすれば、登記の手間とお金が節約できるし、お得よね」とこのように話し合い、実際に父親の不動産は長女名義に変更をしました。
ですがその後、父親の相続財産に関する書類を集めていたところで、衝撃の事実が発覚します。
なんと、この父親には自宅不動産3,000万円と預金500万円の他に、4,000万円のタンス預金が発覚したんです。
つまりこの父親の財産額は全て合わせて7,500万円にもなったんですね。
この一家の場合、相続税の基礎控除は4,200万円ですので、当然相続税がかかることになります。
そしてこの場合、非常に重要な問題になってくるのが、亡くなった方が実際に住んでいた土地であれば、一定の要件を満たす相続人が相続した場合、その土地の330平方メートルまでを80%引きの価格で相続できる小規模宅地等の特例をこの親子は使えるのか?ということです。
一定の要件を満たす相続人というのは、亡くなった方の配偶者か、亡くなった方と一緒に住んでいた同居親族、もしくは亡くなった方と別居しており、3年以上自分の持ち家や配偶者が所有する家に住んでいない親族のことを指します。
今回のケースの場合、故人の配偶者である母親が自宅を相続していれば、小規模宅地等の特例は問題なく使えました。
しかし、今回父親の自宅は父と同居しておらず、自分の持ち家で暮らしている長女が相続し、名義変更をしましたよね。
つまり長女は父親の同居親族にも該当せず、別居親族にも該当しないため、小規模宅地等の特例を使うことができないというわけなんです。
細かい計算は省略しますが、仮に母親が小規模宅地等の特例を使って自宅不動産を相続していた場合の家族全体の相続税額は、一次相続、二次相続を通して26万円だったのに対し、小規模宅地等の特例を使えない長女が自宅不動産を相続した際の家族全体の相続税額は、一次相続、二次相続を通して248万円です。
つまりこの親子はきちんと全ての財産を把握せず、不動産の名義変更を先走って行ってしまったばっかりに、222万円もの余分な税金を支払う羽目になったんですね。
ですので、この動画を見られている皆さんにおかれましては、亡くなった方の相続財産の名義変更は、財産全体の遺産分割協議が全て完了した後に行うという部分は絶対に守っていただければと思います。
まとめ
それでは今回の動画のまとめです。
今回は「家族が亡くなった後に多くの方が直面する手続きに関する悩み11選」ということで、手続きの期限が早いものから順番に、これら11個の項目を見てきました。
冒頭でも話したように、今回の動画は相続税がかかる、かからないに関わらず、家族の死を経験する全ての方にとって必要な知識を解説してきました。
皆さんにとってこの動画の内容が改めて必要になった際には、どの時期にどんな手続きを行う必要があるのかを思い出すツールとして、この動画を活用していただければ幸いです。
最後に皆さんにお知らせです。
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それでは次回の動画でお会いしましょう。
最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
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