日本では葬儀のほとんどが仏式で行われます。しかし最近では、キリスト教式や神道式、無宗教の新しい形など、仏教以外の形式で執り行われることも増えてきました。初めて仏教以外の葬儀に呼ばれた場合、勝手が分からず戸惑う方も多いでしょう。
本記事では、キリスト教の葬儀について、カトリックとプロテスタントそれぞれの違いを含めて詳しく解説します。また、神式の葬儀や、新しい形として広まりつつある無宗教の葬儀についても、それぞれの流れや参列マナーをご紹介します。
目次
キリスト教葬儀の流れと参列マナー
日本でのキリスト教式のお葬式は全体のわずか約1%程度と非常に珍しく、多くの人にとって参列経験がないものです。
キリスト教にもカトリックとプロテスタントという二大宗派があり、葬儀の呼び名や進行にも違いがあります。例えば、カトリックでは司祭(神父)がミサ(葬儀ミサ)を執り行い、プロテスタントでは牧師が礼拝形式の葬儀式を執り行います。また、カトリックでは葬儀と告別式を分けて行うのに対し、プロテスタントは葬儀・告別式を一連の式典として一緒に行うのが一般的です。
ここでは、キリスト教葬儀に参列する際に知っておきたい基本的なマナーを解説します。
キリスト教葬儀の式の流れ
キリスト教の葬儀は、概ね次のような流れで進められます。
※地域や教会により異なる場合があります。
献花(供花)
仏式の葬儀では参列者が順番に焼香を行いますが、キリスト教式では代わりに献花(供花)を行います。
式中に司会者や神父・牧師から案内があったら、祭壇の前に進み、係の人から花が右手側、茎が左手側になるようにして一輪の花を両手で受け取ります。その後、故人の遺影とご遺体に一礼し、花の根元が祭壇側に向くよう時計回りに回して献花台に捧げます。
最後に再度遺影に一礼して黙祷し、遺族に一礼して席に戻ります。献花の細かい手順は式場スタッフの指示に従えば問題ありません。
香典袋の表書き
仏式の葬儀では参列者が喪主に対して香典を渡しますが、キリスト教の葬儀には香典の習慣がありません。
その代わりに、お花料と呼ばれる金封を用意して渡すのが一般的です。カトリックでは不祝儀袋の表書きを「御ミサ料」、プロテスタントでは「御花料」とし、百合の花や十字架の模様が描かれたキリスト教用の不祝儀袋を用いるとよいでしょう。
金額の相場は仏式の香典とほぼ同様で、親族であれば数万円、知人友人であれば数千~1万円程度が目安です(地域や関係性によって異なる場合があります)。
お悔やみの言葉に注意
キリスト教では死は悲しいものではありますが、“不幸”ではなく神による永遠の命への旅立ちと捉えられます。
そのため、仏式で用いがちな「お悔やみ申し上げます」「ご冥福をお祈りします」といった表現はキリスト教の考え方にそぐわず、基本的には使いません。代わりに「安らかな眠りをお祈りいたします」など、故人の安息を祈る言葉で哀悼の意を伝えるのが一般的です。
服装については、仏式の葬儀と同じく黒のブラックフォーマルを着用すれば問題ありません。
キリスト教式のお葬式では、仏式とは異なるマナーや習慣がいくつもあります。特にカトリックとプロテスタントで儀式の進め方や香典の扱いが違う点に注意が必要です。しかし何より大切なのは、故人を偲び遺族に寄り添う気持ちを持つことです。不明な点があれば当日の教会係員に尋ねるか、周囲のクリスチャンの参列者の動きに倣い、慎み深い態度で式に参加しましょう。
神式の葬儀の流れと参列マナー
日本古来の宗教である神道の形式で行う葬儀を、神葬祭(しんそうさい)と呼びます。
仏式とは死生観が異なり、神道では故人は亡くなった後に神々の世界へ帰り、『祖霊』として子孫の守護神になると考えられています。神式の葬儀は明治時代に公的に認められて以降、一定数執り行われていますが、現在でも仏式に比べればその割合は多くありません。
それでも故人や遺族が熱心な崇敬者であった場合などに神葬祭が行われることがあります。ここでは神式葬儀に参列する際のマナーとして、玉串奉奠の作法や香典の表書きなど知っておきたいポイントを説明します。
神式葬儀(神葬祭)の一般的な流れ
神道式の葬儀(神葬祭)では、以下のような流れが一般的です。
※神社や地域により異なる場合があります。
玉串奉奠の作法
神式の葬儀では、参列者は玉串奉奠(たまぐしほうてん)という儀礼で故人に拝礼します。玉串とは、神様が宿るとされる榊(さかき)の枝に紙垂(しで)という紙を結び付けたもので、神道の葬儀において亡き魂に捧げる神聖な供物です。
玉串奉奠は、仏式でいう焼香にあたる儀式です。葬儀では遺族や参列者が順番に祭壇の前に進み、神職(神主)から玉串を受け取り、それを玉串案という専用の台へ捧げて拝礼を行います。その際、二礼二拍手一礼の作法で拝礼しますが、弔事の場合の柏手(拍手)は音を立てない忍び手で行うのがマナーです。
香典袋の表書き
神式の場合、参列時に持参する不祝儀の表書きには「御玉串料」または「御霊前」と書くのが一般的です。蓮の花が描かれた不祝儀袋は仏式用、百合の花が描かれたものはキリスト教式用なので避け、無地か白黒の水引が付いた香典袋を選びましょう。
包む金額の相場は仏式の場合とほぼ同じで、関係性に応じた金額を不祝儀袋に入れます。神式では僧侶へのお布施は不要ですが、代わりに神職への御礼(祭祀料)を別途用意するケースもあります。
言葉遣いや所作にも注意
神式葬儀では、振る舞いや使う言葉にも仏式との違いがあります。
例えば数珠(念珠)は仏教の仏具であり、神道の儀式では用いないため参列者は持参しません。また「成仏」「冥福」など仏教由来の言葉は避け、遺族へのお悔やみは「この度はご愁傷様です」「心よりお悔やみ申し上げます」など一般的な表現で問題ありません。神式でも不幸に関する忌み言葉(「重ね重ね」「再三」「四(死)」「九(苦)」など)は仏式同様に避けましょう。
地域や神社によって細かな作法が異なる場合もありますが、当日は神職や係員の指示に従って行動すれば大丈夫です。
神式の葬儀では、仏式とは異なる独自の儀礼やマナーがあります。玉串奉奠の作法や柏手の仕方、仏教用語を避けることなど、事前に基本的なポイントを押さえておけば落ち着いて対応できるでしょう。宗教は違えども故人を敬い見送る気持ちは同じですから、真摯な態度で参列すればご遺族にもきっと心が伝わるはずです。
無宗教の葬儀の流れと参列マナー
宗教にとらわれず自由に行うお葬式を無宗教葬儀と呼び、自由葬やお別れの会ともいいます。読経や聖歌などの宗教的な儀式を行わない代わりに、故人らしい演出で送り出せるのが特徴です。
日本では従来、仏式葬儀が一般的でしたが、近年では無宗教葬儀を選ぶ人も徐々に増えてきました。ここでは無宗教形式の葬儀に参列する際に知っておきたい一般的な流れやマナーを紹介します。
無宗教葬儀の一般的な流れ
無宗教葬儀には決まった形式がありませんが、多くの場合は仏式の葬儀から宗教色を取り除いたような進行になります。一例として、葬儀・告別式は次のような流れで進行します。
その後、出棺して火葬場へ向かいます。火葬後、親族や近親者で精進落とし(会食)を行うこともあります。
参列者のマナー
無宗教の葬儀であっても、参列者の服装は他の葬儀と同様に黒の礼服(ブラックフォーマル)が基本です。香典も準備して持参しましょう。宗教色のない一般的な不祝儀袋(または白封筒)に包み、表書きは「御霊前」や「御花料」とするのが一般的です。
宗教的な儀式がないとはいえ、式典中は私語を慎み、黙祷や献花など求められた所作を丁寧に行うことが大切です。故人を静かに見送る気持ちはどの形式の葬儀でも共通ですので、形式にとらわれず真心を込めて参列しましょう。
無宗教葬儀は決められた進行がない分、ご遺族の意向に沿って式の内容がさまざまに工夫されます。基本的なマナー自体は仏式を含め他の葬儀と変わりませんので、過度に構えず一般的な弔事マナーを守って参列してください。分からないことがあっても周囲の様子を見て行動すれば問題なく、何よりも故人への想いを大切にすることが大事です。
キリスト教や神式、無宗教など、仏教以外の葬儀の準備や手配でお悩みの場合は、『小さなお葬式』などのさまざまな宗教形式に対応している葬儀会社に相談するとよいでしょう。
まとめ
キリスト教・神式・無宗教と、仏教以外のスタイル別に葬儀マナーのポイントを解説しました。
宗教や形式ごとに作法や習わしには違いがありますが、いずれの場合も故人を悼み見送る気持ちは共通です。まずは基本的なマナーを押さえ、各形式に応じた振る舞いができれば、ご遺族にも安心してもらえるでしょう。
初めて参列する形式の葬儀でも落ち着いて行動し、心を込めて故人にお別れを伝えることが何よりの供養になるはずです。