皆さんこんにちは。相続専門税理士の秋山です。
今日は「【2023年版】贈与税の申告は誰でも出来る!!贈与契約書の作成方法から申告書の作成・提出方法までを徹底解説」していきます。
家族間で贈与を実行する際には、贈与を行う側、贈与を受ける側の両者間で贈与契約書を作成した上で、受け取る贈与額が110万円を超える場合には、翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告を行う必要があります。
この動画を見られている多くの方が「贈与契約書や申告書の作成なんて複雑そうだし、どんな書類を集めればいいのかわからないから専門家に依頼しなくちゃいけないな」とこう考えていらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、ちょっと待ってください。
実はこれらの書類の作成というのは意外と簡単です。
実際に私のお客さんにも今回の動画でお話する内容を伝えておりますが、皆さん難なくご自身で贈与契約書と贈与税の申告書を作成されております。
皆さんにもぜひ今回の動画を参考に、ご自身で贈与契約書と贈与税の申告書作成にチャレンジしていただければと思います。
ちなみに今回の動画の内容は、2023年現在において最も多くの方に利用されている「現金での暦年贈与」をもらった場合に関するお話です。
相続時精算課税制度を利用する場合の申告書の作成方法や、贈与税の特例制度を使った場合の申告書の作成方法については、また別の動画で詳しく解説をしていきたいと思います。
それでは本編を見ていきましょう。
目次
①贈与を行う際に『贈与契約書』も作成しておくべき理由
贈与契約書についてのお話ですが、実は贈与契約書というのは、贈与を行う際に絶対に交わさなくてはいけないというものではありません。
「実際に110万円の贈与を金融機関を通して行っているし、取引の証拠も残っているから必要ないでしょう」と贈与契約書を作っていない方もいらっしゃいますし、贈与税の申告要件の中に贈与契約書の添付は含まれていません。
ですが、私としましては贈与を行う金額の多い少ないに関係なく、贈与契約書は贈与した人、贈与を受けた人の間できっちりと取り交わしておくべきだと考えています。
なぜなら贈与契約書というのは、対税務署にはほとんど効果がない反面、対身内においては有効な証拠となるからです。
どういうことか順番に解説していきます。
ⅰ 贈与契約書は『対税務署』には殆ど効果はない
税務調査官が相続税の調査の際に、名義預金と疑わしい子供名義の預金を見つけたとします。
この名義預金というのは、預金口座の名義人と実際に預金をしている人が異なる預金のことです。
贈与をした人が、贈与を受けた人の預金通帳やカード・印鑑を管理していて、贈与を受けた人が自由にお金を使えないのに、贈与をした人は、あげたはずのお金を自由に使える状態の預金のことを他の人の名義を使った預金、つまり名義預金と言います。
そして、名義預金と疑わしい子供名義の預金を調査で見つけた場合、税務調査官は「この預金は子供の名義を使った名義預金じゃないですか?」と指摘するわけです。
するとここで相続人の方が「これを見てください」と意気揚々と取り出されるものがあります。
それが何かというと、贈与契約書なんですね。
「これを見てください。このようにちゃんと贈与契約書を作っています」と相続人の方は言われるんです。
しかしこのとき多くの調査官が心の中で「その贈与契約書がどうしたの?」と思っています。
なぜなら税務の世界では、実質課税の原則という基本理念があり、調査官はその理念のもとでお金の流れの実態を調査しているからなんです。
どういうことかこの実質課税の原則を先ほどの名義預金の話に当てはめて見てみます。
どんなにきちんと贈与契約書を作り、形式上は贈与契約が成立しているようになっていたとしても、税務調査官は贈与契約書のあるなしという形式よりも、きちんと贈与が成立していたのかどうかの実態を見て判断します。
つまり贈与契約書というのは、対税務署に向けて作ってもほとんど意味がないんですね。
「なるほど。税務署に対して、贈与契約書のあるなしの主張は意味がないということは分かった。手間をかけてまで贈与契約書を作る必要なんてないんじゃない?」と思われた方もいらっしゃるでしょうが、そうではありません。
先ほどもお話した通り贈与契約書の効力というのは、対身内において力を発揮するんです。
ⅱ 贈与契約書は『対身内』には効果がある
どういうことかこちらの山田家をモデルに見ていきます。
山田家の長男Aさんは10年前に父親から住宅購入資金として1,000万円の贈与を受けていましたが、当時、父親との間で贈与契約書を交わしてはいませんでした。
その後、父親が亡くなり、兄弟間で遺産分割の話をしている際に、次男Bさんは、長男Aさんが過去に父親から1,000万円の住宅取得資金の贈与を受けていたことを知りました。
それに対しBさんは「そんな話、初めて聞いた。そんな不公平な贈与なんて認めないし、何より親父は当時、認知症を患っていたはずだ!!」と不満を爆発させ、裁判所に提訴します。
Bさんの提訴内容としては「長男は過去に父親から1,000万円を受け取っているが、当時、父親は認知症を患っており判断能力が欠如していた。そのことは家族である自分が一番分かっている。なので、父親が長男に行った1,000万円の贈与は無効だ!」という主張でした。
実際には、贈与当時の父親はまだ認知症の診断を受けておらず、物忘れなどはあったものの、自分の意思能力は残っていたときに、長男であるAさんへの贈与を行っていたのですが、それを証明する証拠はどこにもありません。
Bさんの主張自体も明確な証拠はないのですが、この場合Aさん側にも証拠がないため、Aさんが昔、父親からもらった1,000万円全額を相続財産に戻すか戻さないかの話になってくるんです。
しかしこの際、Aさんと父親が過去に結んだ贈与契約書があれば、それは証拠の一つとして使うことができますよね。
また、贈与契約書があることで、兄弟間での揉め事が裁判にまで発展することなく、お互いの話し合いのみで収まる可能性も十分あります。
ですので、過去の贈与を巡る対身内との争いを回避するためにも、確かに贈与を受けたという証拠になる贈与契約書は、贈与を受ける前に確実に作成しておいていただければと思います。
ではその上で、次の章ではいよいよ贈与契約書の具体的な作成方法について見ていきたいと思います。
②贈与契約書の作成方法
ⅰ 具体的な作成手順
まず贈与契約書の作成方法ですが、この贈与契約書は署名・捺印以外の箇所は、パソコンで作っていただいて結構です。
インターネット上には、贈与契約書のテンプレートが公開されているサイトもありますので、それをダウンロードして必要箇所を書き換えればOKです。
まずは本文中に贈与者(甲)と受贈者(乙)がそれぞれ誰なのかを書きましょう。
次に、お金をいくら贈与するのか、いつまでにお金を振り込むのか、そして、贈与契約を結ぶ日を書きます。
そして最後は、贈与者と受贈者の住所を書いて印刷しましょう。
贈与契約書は、贈与をした人と贈与を受けた人それぞれが持っておくものですので、2部印刷する必要があります。
あとは2部両方に署名・捺印をすれば完成です。
ⅱ 贈与契約書に押印する印鑑には特に決まりはない
贈与契約書に捺印する印鑑には特に決まりはありません。
贈与を受ける側が口座を開設する際に、銀行に提出した銀行印である必要もありませんし、また実印である必要もなく、認印であっても正式な贈与契約書として認められます。
しかし贈与者の印鑑と受贈者の印鑑が同じものですと、お互いの合意のもとで贈与契約が行われたという客観的な信憑性が薄いですから、贈与契約書に押す印鑑は、贈与をする側・受ける側で別々の印鑑を使うようにしてください。
ⅲ 署名欄の署名は極力本人が書くべき
「親が病気のため、うまく文字が書けません。代筆での署名でも有効でしょうか?」という質問や「子供が未就学児のため、まだ文字が書けません。親が代わりに署名をしてもいいでしょうか?」という質問もよくいただきます。
繰り返しになりますが、贈与契約書というのは、お互いに「贈与します」「贈与を受けます」という合意のもとに作成する文章です。ですので、震えた字でも構いませんから、署名欄の署名は贈与者である親に書いてもらってください。
その方がかえって、贈与者本人が書いたものとして信憑性が増します。
また贈与を受ける孫が未就学児で、字が上手に書けないという場合においても同様です。
全部がひらがなであっても構いませんので、署名欄の署名はお孫さんを本人に書いてもらうようにしてください。その方が贈与契約書の信憑性が増しますからね。
③贈与税の申告書の作成方法
ⅰ 贈与税の申告書の作成方法(書き方)
贈与契約書も作成できて、実際に110万を超える贈与を行いましたら、次は贈与税の申告書の作成です。
今回は父親である太郎さんから300万円、母親の花子さんから300万円、合わせて600万円の贈与を長男の一郎さんが受けたというモデルケースをもとに、贈与税の申告書作成方法について見ていきます。
贈与税の申告書の作成については、初回は税理士さんに作成を依頼されてもいいかもしれませんが、冒頭でもお話したように、暦年贈与を行った場合の贈与税の申告書の作成は非常に簡単ですので、ぜひご自身でチャレンジされることをおすすめします。
最初に贈与税の申告書を用意します。
贈与税の申告書の用紙は、最寄りの税務署でもらってきてもいいですし、ご自宅にプリンターがあるようでしたら、国税庁のホームページからダウンロードして印刷をしてください。
パソコンが得意な方は、国税庁のホームページから確定申告書等作成コーナーにアクセスし、インターネット上で入力することで申告書を作成したり、e-Taxでの申告もできます。
これについてはまた別の機会に解説したいと思いますので、今回は手書きでの申告書作成方法についてお話します。
申告書を国税庁のホームページからダウンロードして印刷する場合、今回のケースで必要なのは、贈与税の申告書等の様式一覧ページの『申告書第1表」と『本人確認書類(写)添付台紙(様式)』です。
必要書類が手元に準備できましたら、まず贈与税の申告書第1表の一番上に、申告書を提出する税務署名といつ提出するかを書きます。
真ん中にはいつ贈与を受けたのか、年度を書きましょう。令和4年に贈与を受けた分の申告をする場合は、04と記入します。
ⅱ 贈与を受けた人の欄を記載しよう
次に贈与を受けた人の住所、氏名、ふりがな、個人番号、生年月日、職業を記入しましょう。
生年月日の一番頭には元号の番号を書きます。
どの元号がどの番号かというのは、欄外に記入してあります。明治なら1、大正なら2、昭和は3、平成は4、令和は5といった具合ですね。
ⅲ 贈与をした人の欄を記載しよう
その次は誰からいくら贈与を受けたのかを記入します。
その際、特例贈与財産分と一般贈与財産分の欄があるのですが、今回の例題は親から18歳以上の子供への贈与ですから、特例贈与財産分の欄に記入します。
これが親から18歳未満の子供への贈与や夫から妻への贈与の場合は、一般贈与財産分の欄に記入することになるので注意してくださいね。
ではまずは、父親の太郎さんから300万円の贈与を受けたことを記入しましょう。
枠内に太郎さんの住所、氏名、ふりがな、生年月日、続柄を記入してください。
生年月日の頭は先ほども説明しました、元号の番号を記入します。続柄は父親なので「1」を記入しましょう。
次はどんな財産をもらったのかを記入します。
今回は現金300万円をもらったので、種類に「現金預貯金等」と書いて、その横の細目にも「現金預貯金等」と書き、利用区分・銘柄の欄に「現金」と記入します。
現金をもらった場合は、所在場所等の欄に贈与者の住所を書きます。
預貯金をもらった場合は、所在場所等の欄には預貯金をしていた金融機関名や所在地を書きましょう。
もし過去にも父親から贈与を受けていて、そのときに、贈与税の申告書と一緒に、父親である太郎さんと一郎さんの関係性がわかる戸籍謄本などの書類を提出していましたら、過去の贈与税の申告状況の欄に、贈与を受けた年の年度と、贈与税の申告書を提出した税務署名を記入します。
次は財産をもらった日を記入し、その下にいくらもらったのかを書きます。
次は先ほどと同じように、お母さんから300万円をもらったことを書きましょう。
そして、お父さんからもらったお金と、お母さんからもらったお金の合計を①の欄に記入します。
ⅳ 贈与額の合計と贈与税額の計算をしよう
次は、申告書左下のIの欄の④、暦年課税分の課税価格の合計額の欄に、①の欄の数字+(②の欄の数字-③の欄の数字)の計算結果を記入します。
⑥の欄の⑤の控除後の課税価格には、④の数字-⑤基礎控除110万円の計算結果を記入します。
そして⑦の欄の⑥に対する税額の欄には、贈与税の税額を記入します。
贈与税額がいくらになるかは「⑥で計算した課税対象額×税率-税額控除」で計算します。
今回はお父さん、お母さんからもらったお金の合計が600万円で、基礎控除110万円を引いた課税対象価格が490万円ですので、下記の特例贈与の税率表を見ると、贈与税率は20%、税額控除30万円となっています。
つまり計算の結果、一郎さんが支払う贈与税額は68万円ということになります。
⑦の欄には68万円と記入しましょう。
⑩の差し引き税額の欄には、⑦の欄の数字から⑧と⑨の欄の数字引いた税額を記入します。
ここまで記入できれば、次は右横のⅢ合計の欄の記入に移ります。
まず、⑬の課税価格の合計額の欄には、①と②と⑪の欄の合計を記入します。
次に⑭の差し引き税額の合計の欄に、⑩と⑫の欄の合計を記入します。
ではいよいよ最後に、⑳の欄、申告期限までに納付すべき税額を記入しましょう。
ここは⑭の欄の数字から、⑮⑯⑰⑱⑲の欄の数字を引いた金額を記入します。
さて今回の例題ですと、最終的に一郎さんが支払う贈与税額は68万円になりました。
これで申告書は完成です。
ⅴ 申告書の提出をしよう
申告書の控えに関しては、税務署からもらってきた申告者の場合は最初から複写式になっていますので、1枚目に記入すれば控えの用紙にも複写されます。
国税庁ホームページからダウンロードして印刷した場合は、控えの用紙に複写はされませんので、提出用の申告書をコピーして手元に保管しておいてください。
控えの書類にも受付印を押して欲しいという場合には、税務署からもらってきた用紙でしたら、複写された控えを提出。
自宅で印刷した用紙の場合でしたら、提出用の申告書のコピーを提出しましょう。
その他の提出書類としては、本人確認書類としてマイナンバーカードの表裏のコピーか、それがなければ個人番号通知書のコピーと、運転免許証のコピーなどを本人確認書類(写)添付台紙に貼り、提出をする必要があります。
また同じ年に、父母や祖父母から受けた贈与の合計金額が、贈与税の基礎控除である110万円を差し引いても300万円を超えるようでしたら、贈与を受けた人の戸籍謄本や抄本などを提出して、贈与を受けた人が贈与をした人の直系卑属であると証明する必要がありますので、これらの書類の提出も忘れないようにしておいてください。
ちなみにこの戸籍謄本や抄本については原本でなくコピーの提出で問題ありません。
既に過去の申告時において提出をしている場合には、当年における提出は必要ありません。
さて、贈与税の申告書が完成し添付書類の用意もできましたら、申告書の提出と納税を行いましょう。
これらのタイミングは贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの期間中に行ってください。
申告書の提出は直接税務署に持ち込んでも郵送で送っても、どちらでも構いません。
直接税務署に持ち込む場合には、提出の際に納付書をもらうようにしてください。
郵送で税務署に提出する場合には、納付書が欲しい旨を記載したメモと、切手を貼った返信用封筒を同封してから申告書を郵送するようにしてください。
ⅵ 納付書の記載をしよう
納付書が手に入りましたらまず年度を書きましょう。
記入は全て黒のボールペンで書いてください。
注意点として、ここには税金を納める年度ではなく、譲与を受けた年度を書きます。
令和4年に贈与を受けた分の納税でしたら「04」となりますね。
次に税目と税目番号、税務署名と税務署番号ですが、これは税務署の窓口で納付書をもらうときに「どこの税務署の何の納付書ですか?」と聞かれますので「〇〇税務署の贈与税の納付書です」と答えれば印字したものをもらえます。
この贈与税の納付書に関しても、贈与を受けた人の住所地を管轄する税務署を記載する必要がありますので、その点は間違わないようにしておいてください。
税目番号が記入されていない場合は「051」と書きましょう。すぐ下の税目の欄にも「ゾウヨ」と書いておきます。
税務署番号に関しては、インターネットで「税務署番号 全国」と検索していただき、贈与を受けた方の最寄りの税務署の番号を記載してください。
次に整理番号ですが、ここは別に書かなくても問題ありません。
次は贈与税の税額を記入します。申告書を作成したときに計算した税額ですね。
贈与税の申告書で申告期限までに納付すべき税額の欄に書いた金額と同じ額を、納付書の本税と合計額の欄に記入します。
合計額の欄には、数字の頭に¥マークを書いてください。本税の方は¥マークは要りません。
次に納税等の区分の欄ですが、贈与税の場合は、年だけ書いていればOKです。月と日は書く必要はありません。ここに書く年も、一番最初に書いた贈与を受けた年を書きます。
次は申告区分ですね。贈与税の申告を行う場合は、4の確定申告に丸をつけます。
では、いよいよ最後、贈与を受けた人の住所、電話番号と氏名を書くことで、納付書の記入は全て完了です。
後は納付書とお金を用意して、最寄りの郵便局や銀行などの金融機関、もしくは贈与を受けた方の住所を管轄する税務署で3月15日までに納付をしてください。
どうだったでしょうか?
皆さんが考えていらっしゃったよりも、贈与契約書の作成も贈与税の申告書の作成も案外簡単だったと思います。
冒頭でもお話したように、贈与税の申告書や贈与契約書の作成については、余分な出費を抑えるためにも、ぜひご自身でチャレンジされることをおすすめします。
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それでは次回の動画でお会いしましょう。
最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
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