葬儀は大切な人を偲び、遺族が心を寄せ合う大切な時間です。しかし実際には、親族同士のトラブルが起きてしまうことも少なくありません。悲しみの中で余計な苦しみを抱えないためにも、事前の準備と心構えがとても大切です。
この記事では、葬儀でよく起こる親族間のトラブル例とその予防方法をわかりやすくお話しします。
目次
葬儀前後によくある遺族間トラブル
普段あまり会わない親族同士が集まる葬儀では、思わぬ不満やすれ違いが表に出てしまうことがあります。とくに誰が喪主になるのか、どんな葬儀にするのか、そして費用の負担をどうするのかは揉めやすいポイントです。
よくある遺族間トラブルの例
葬儀にまつわる遺族同士のトラブルには次のようなものがあります。
- 葬儀代をだれが払うかで揉めてしまう
- 喪主が全部負担するのか、兄弟で分けるのかで意見が分かれる
- 香典や故人の貯金を使う場合、相続人全員の同意が必要なのに話がまとまらない
- 「なぜあの人が喪主なのか」という不満が出る
- 喪主の進め方に対して「もっとしっかりやれ」と責められる
- 決め方に納得できない親族が反発する
トラブルが深刻化すると法的問題に
こうしたトラブルは一度こじれると遺恨が長引きがちです。実際に、遺産分割を巡る家庭裁判所への申立件数[1]は年間約1万3千件にのぼります。
死亡者数が年間約138万件であるに対し、家庭裁判所での調停となるケースは約87件に1件[2]の割合です。金銭面や形見の扱いで合意できないまま法的手続きに進展する事例も珍しくありません。
【相続】遺産分割協議の『基礎知識』と『分割協議の際に勘違いしやすいポイント』を解説します!| 国税OB 税理士 秋山清成
なぜトラブルが起きやすいのかを知っておこう
葬儀でのトラブルは多くの場合、準備する時間が短いことと心に余裕がないことから生まれます。身近な人を亡くせば、だれでも動揺するものです。限られた時間の中で決めなければならないことがたくさんあって、戸惑うのは当たり前のことです。
まずは「どんなことが揉め事の原因になりやすいのか」を知っておくことで、少しでも心の余裕を持って準備に取り組めるようになります。
事前の話し合いと準備で防げる遺族間トラブル
葬儀での親族間トラブルは、多くの場合「事前の話し合い不足」が原因です。
急な不幸の場合は難しいこともありますが、できる範囲で役割や費用のことを確認しておけば、あとで誤解や不満が生まれるのを大幅に減らせます。
喪主や葬儀の方針を早めに決定・共有する
葬儀のときに一番最初に決めるべきは、だれが喪主になるかです。
故人の希望や遺言があれば、それを一番に考えます。それがなければ配偶者、次に長子が務めることが多いです。候補が何人かいる場合は早めに話し合って決めて、全員に共有しましょう。
また、葬儀をどのくらいの規模でやるか、どんな形にするかも、前もって確認しておきたいポイントです。
「家族だけでこじんまりとやりたい」
「親族や関係者を招き、ある程度の人数でお見送りしたい」
このように、故人の希望や家族の意向をすり合わせておくことが大切です。
葬儀費用の分担ルールを決めておく
お金の問題は特に深刻になりやすいので、だれがどのくらい負担するかを事前にはっきりさせておきましょう。
決めておくべきこと
項目 | 内容 |
---|---|
負担の仕方 | 誰がいくら負担するか |
香典の扱い | 喪主が受け取るか、全員で分けるか |
故人のお金の活用 | 保険金や貯金をどう使うか |
法律で「葬儀費用は誰が払う」と決まっているわけではありませんが、一般的には喪主が負担することが多いとされています。兄弟姉妹で分担する場合は、必ず前もって全員の同意を得ましょう。
葬儀費用は誰が負担?兄弟姉妹の揉めない費用分担法を徹底解説
複数の葬儀社で見積もりを取る
複数の葬儀社の見積もりを比較検討することも有効です。費用が不透明なままだと不安から意見が割れやすいため、早めに相場観を持つと良いでしょう。
効率的に複数社の見積もりを取りたい方は、「安心葬儀」のような葬儀社紹介サイトの活用がおすすめです。安心葬儀では、全国の葬儀社・葬儀プランをまとめて比較できます。
葬儀社ごとの費用や特徴、利用者の口コミまで確認できるため、自分たちの希望や予算に合った葬儀社を効率的に選べます。
エンディングノートや遺言書で想いを形に残す
親族間での争いを根本から減らすには、故人が事前に意思を示しておくことが最も効果的です。
エンディングノートの活用
エンディングノートには、次のようなことを書いておくとよいでしょう。
- どんな葬儀にしてほしいか
- 連絡してほしい人のリスト
- 残したものをどうしてほしいか
一般社団法人終活協議会の調査[3]では、終活で最初に取り組むべきこととして「エンディングノートを書く」と答えた人が27%と最も多くなっています。
はじめてのエンディングノート〜今から始める安心の備え〜
遺言書の効力
法律的な効力を持つ遺言書で葬儀費用の出所や遺産の配分を定めておけば、相続争いのリスクも大幅に下がります。書面が一つあるだけで、遺族間の判断材料が明確になり、無用な揉め事を避けられます。
葬儀社の事前相談を利用してみる
万が一に備えて、葬儀社の事前相談を利用しておくのもおすすめです。無料の生前相談を受け付けている葬儀社も多く、祭壇の種類や規模、費用プランについて生前に希望を伝えて契約しておくこともできます。
たとえば「小さなお葬式」では、事前に葬儀内容や費用を決めておける生前契約プランを用意しています。預けた料金は信託会社・弁護士が管理しており、利用がなかったり解約したりした場合は返金されるため、安心して依頼できます。
事前に方針さえ決まっていれば、いざというとき遺族同士で感情的な衝突をする必要がなくなります。平常時に冷静な取り決めをしておく意義は大きいでしょう。
葬儀当日・後日を円満に進める工夫
どんなに事前準備をしても、葬儀当日の進行や葬儀後の手続きで新たな問題が出てくることもあります。大切なのは、その場ごとに冷静に対処することです。
必要に応じて専門家の力も借りながら、感情的な衝突にならないよう気をつけましょう。
当日の進行はプロに任せ、喪主は気配りに専念
葬儀当日は喪主や遺族にとって慌ただしく、緊張が続く一日です。式の段取りや席順・焼香順などは、できるだけ葬儀社のスタッフに任せるのが賢明です。プロに委ねた方が円滑に進みますし、遺族間の不公平感も生じにくくなります。
席順は一般的に「故人と関係が深い人ほど祭壇に近い上座に」というルールがあります。葬儀社との打ち合わせのときに、主要な親族がどんな関係なのかを伝えて、席順で気をつけることがないか相談しておきましょう。
悲しみの中でも言葉遣いに注意
葬儀の場では、普段以上に礼節と気遣いが求められます。
- ほかの親族の態度を批判する
- 「もっと準備してくれていれば…」など責める言葉
- 感情的な言い合い
意見の違いがあっても後日改めて話し合うことにして、その日は故人をお見送りすることに集中するのが一番です。
遺品整理・形見分けは全員参加で公平に
遺品の整理は、できるだけ関係者全員で行うのが理想的です。特定の人だけで進めると「勝手に処分された」「私だけ大変な思いをした」といった不満が残りやすいからです。
事前に決めておくルール例 | 内容 |
---|---|
欲しいものが重なったとき | じゃんけんで決める |
価値の高いものの扱い | お金に換えて全員で平等に分ける |
専門家への相談 | 弁護士や司法書士に依頼する |
遺品が多い場合には、専門の遺品整理業者に依頼するのも有効です。
たとえば「遺品整理110番」は、全国どこでも対応可能で、見積もりは無料。仕分けから搬出、清掃まで一括で任せられるため、家族の負担を大幅に減らせます。料金体系もわかりやすく、急な依頼にも対応してくれるので、遠方の親族が多い場合や時間が限られている場合にも安心です。
プロに任せることで作業がはかどり、親族の体力的・精神的な負担が軽くなります。第三者が入ることで中立的な視点が加わるので、公平性も保ちやすくなります。
遺族が円満に見送るために
葬儀は人生の中でもとくに非日常的な出来事であり、予期せぬハプニングや心の乱れが生じやすい場面です。しかし、事前の備えと当日の冷静な対応によって、遺族同士のトラブルは大幅に減らせます。
- 費用や役割分担は生前から話し合っておく
- 当日はプロにお任せできることはお任せする
- 故人への思いを一番大切にする気持ちを忘れない
葬儀は単なる儀式ではなく、家族の絆が試される時間でもあります。お互いの気持ちに耳を傾け、専門家の力も借りながら進めれば、きっと円満に故人を送り出せるでしょう。
何より忘れてはならないのは「皆、故人を想う気持ちは同じ」ということです。立場や意見の違いがあっても、「悲しみを乗り越え、故人をしっかり送り出したい」という気持ちは共通しているはずです。その気持ちに立ち返れば、たとえ衝突しそうになっても歩み寄ることができるでしょう。
出典