皆さんこんにちは、相続専門税理士の秋山です。
今日は、子供の預金の管理と名義預金について頻繁に聞かれる疑問点5選、という話をします。
現在の相続税の調査というのは、名義預金に関するものが9割といっても過言ではありません。
これまでこのチャンネルでは、この名義預金に関する動画を数多く投稿してきたところ、視聴者の方から、子供の預金を親が管理していた場合、それも税務署から名義預金だと指摘されてしまうんでしょうか、といった内容のご質問を沢山いただきました。
ですので今回の動画では、子供の預金と名義預金の関連性について、名義預金についての簡単なおさらいをした上で、お客さんや視聴者の方からよく聞かれる次のような5つの疑問に対して回答を行っていきます。
是非この動画を最後まで見て頂き、子供さんやお孫さん名義の預金口座を正しく管理できているのか、間違った管理をして名義預金になっていないのか、こういったところを確認してみてください。
目次
名義預金の概要
まずは名義預金とはどういったものを指すのか、というところをおさらいしますね。
名義預金というのは、預金口座の名義人と実際に預金をしている人、これが異なる預金で、贈与した人が、贈与を受けた人の預金通帳やカード・印鑑を管理していて、贈与を受けた人が自由にお金を使えないのに、贈与をした人はあげたはずのお金を自由に使える状態の預金のことを、他の人の名義を使った預金、つまり名義預金と言います。
贈与というのは契約ですから、お金をあげる側・もらう側の双方の合意があって初めて成立するんですね。
多くの方が良かれと思って、内緒で自分が管理している子供や孫名義の口座にお金を入れているのですが、この行為はお互いの合意がない状態で行われていることですから、せっせと名義預金をしているだけで、実は何の意味もない行動なんです。
でも、子供や孫名義の預金が実は名義預金だなんて、第三者から見れば分からないんじゃないの、とこう思われるかもしれませんが、税務署が名義預金かどうかを判断する際には、このスライドのような5つのポイントがあるんですね。
各項目については、こちらの動画「【国税OBが語る】名義預金の調査手法と税務署から名義預金と疑われない為の5つのポイント!」 で詳しく解説しておりますので、良ければご覧になってみてください。
これらの項目のうち、仮に一つでも満たしていなければ、口座名義人の預金は税務署に名義預金と判断されてしまい、贈与者が亡くなった際に、亡くなった方の相続財産に含めるように言われてしまいます。
ですがその際、未成年の子供の預金を親が管理していても、それは名義預金となるのでしょうか。
「子供はまだ未成年なので、とても大金を管理させることができません。なので、子供名義の通帳は親である私が管理しています」
こういった家庭は多いと思います。
この動画を見てくださっている方の中にも
「未成年の子供の通帳は私が管理しています。まだまだ小さい子供に大金を持たせるのは不安です」
という方も少なくないでしょう。
ですが安心してください。
子供が大きくなるまでは、親や祖父母が預金を管理するというのは、社会通念上当たり前のことです。
税務署としましても、未成年や年若い子供が大金を持つ危険性はわかっていますから、ある程度の年齢まででしたら、親が子供の預金を管理していることに対しては寛容な判断をします。
ですがこれは、子供の預金を親がどう管理しようと全て寛容に判断してもらえる、というわけではもちろんありません。
何事にも限度というものがありますから、管理方法を間違えれば名義預金になってしまうこともあり得ます。
そこで次は、未成年や成人して間もないような子供の預金を親が管理する場合、どのようなことに気をつけるべきなのかというところを、視聴者の方からの質問にお答えする形で説明していきます。
同一世帯の子供の預金を親が管理した場合、贈与になる?名義預金になる?
まず一つ目の質問は、同一世帯の子どもの預金を親が管理した場合、贈与になるのか、名義預金になるのか、というものです。
頂いた内容を先に紹介しますと
「名義預金と判断する5つのポイントの①について、受贈者が未成年の場合において、管理を親がしていた場合は、税務署としても名義預金か否か判断が難しいとのことですが、最終的に他の4つのポイントをクリアしていても最初の①の項目を満たしていなければ名義預金として判断される可能性もあるということでしょうか」
このような質問をいただきました。
贈与を受けた人物が未成年であった場合、ポイント1の預金の管理運用は、子や孫がしていたのか、というところがクリアできないわけですが、先ほども言いましたように、税務署は子供がある程度の年齢まででしたら、親が子供の預金を管理していることに対しては、寛容な判断をします。
子供が未成年であれば、ポイント1で言う、通帳の管理は当然親が行うのが普通ですし、ポイント2の口座の開設も親が行いますから、届出印が親と同じこともあるでしょう。
ポイント3も同一世帯ですから、当然、届出住所も親と一緒に住んでいる家ですし、ポイント5は110万円以上の贈与したのであれば、贈与税の申告などの手続きは親が代わりに行うでしょう。
ただし、ポイント4の子供名義の預金の利息を親名義の口座に入れるなんてことは、くれぐれも行わないようにしてください。
これは明らかに、子供にあげたはずのお金を親が自分のものとして自由に使っている証拠になります。
このように、税務署も未成年の子供の預金を同一世帯の親が管理するというのは当たり前という考え方をしますから、1から5のポイントのうち、2つや3つ不備があったとしても、税務署が、子供の預金は親の名義預金だと言ってくることは稀ですね。
また2から5のポイントが完璧でしたら、税務署がこの預金を名義預金だと判断するのは、かなり難しいでしょう。
子供へのお祝い金等を口座に預金して親が管理、これも名義預金?
次に質問の二つ目は、子供へのお祝い金などを口座に預金して、親が管理をする、これも名義預金とみなされるのか、というものです。
質問の内容は
「出産時のお祝いや親戚からのお年玉など、お金をもらった子供名義の口座を作って預金をしておりました。新生児でしたので印鑑は私のもので口座開設をしています。この預金も名義預金とみなされますでしょうか?現在すでに子供達は成人しているのですが、未成年の間にお祝いでもらった、まとまったお金を親が管理して、子供名義の通帳に入金していた件に関して、後々問題になることはありませんでしょうか?」
というものです。
おさらいになりますが、名義預金と言いますのは、お金をもらった人が自由にお金を使えないのに、お金をあげた人があげたはずのお金を自由に使える状態の預金のことを指しますので、この場合子供さんにお祝いやお年玉などのお金をあげたのは、祖父母をはじめとした親戚の方で、子供名義の預金を管理しているのは、親である質問者さんです。
子供名義の口座を作った時の届出人が、質問者さんのものであろうと、贈与者と管理者が別の人ですから名義預金には当たりません。
また、子供が未成年の時に祖父母や親戚からもらったお金を、親が子供名義の口座に入金し管理を続けていた場合、子供が未成年の間は、親が子供の預金を管理するということは当たり前のことですから、子供がもらったお金が、積もり積もって高額になったからといって、未成年の間に親が子供の預金を管理していたことについて、子供が成人した後で問題になる事はありません。
ただし、子供さんが独立や結婚をして家を出る時には、質問者さんが管理していた通帳を子供さん本人に渡すようにしてください。
その際に、口座の届出印を子供さん本人のものに変えるように伝えておいてくださいね。
子ども名義の口座に贈与された金は、定期的に使ってないと名義預金?
では次の三つ目の質問は、子供名義の口座に贈与されたお金は、定期的に使っていないと名義預金とみなされるのか、というものです。
これに関しては、長年贈与を繰り返す中で、子供が贈与を受けたお金を一銭も使わなかったとしても、それだけで名義預金とみなされることはありません。
名義預金かどうかの判断ポイントは、先ほどから何度も紹介していますように、この5つのポイントを満たしているか、いないかで判断します。
このポイントを全てクリアしているのであれば、正式な贈与の形になっていますから、子供がお金を一銭も使っていなかったとしても、名義預金とみなされることはありません。
ですが子供が贈与を受けたお金を使うことは、ポイント1の預金の管理運用は子や孫がしていたか、というところを裏付けすることにもなりますから、贈与の成立を完璧に証明したいのでしたら、少しぐらいは使っておいたほうがベターですね。
子供が未成年であれば、親が預金を管理していると思いますので、親が引き出して子供の学用品に当てたりとか、成人していましたら、公共料金などの生活に必要な支払いなどに当てるように言っておいた方が良いでしょうね。
親が子供(大学生)の口座を管理し必要な都度子供に送金。これは名義預金?
では次の質問に移りましょう。
これは親が子供(大学生)の口座を管理し、必要な都度子供に送金、これは名義預金とみなされるのでしょうか、というものなんですが、質問の内容を紹介します。
「義父から子供に対し、相続税対策として数年に分けて1000万円ほど頂きました。贈与税の申告もしてありますが、大学生になった子供の手元にあると、たくさん使いそうだから通帳一式は実家に置いてあります。その上で必要な時に私がそこから引き出し、子供に送金をしているのですが、これは名義預金にあたるのでしょうか」
という質問です。
これにつきましても、質問者さんのお子さんは、実家を出ているとはいえ、まだ学生ですから質問者さんが大金が入っている子供さん名義の預金を管理するのは、当たり前のことです。
そして二つ目の疑問点と同じく、贈与者は祖父、贈与を受けたのは孫、預金の管理は孫の親ですから、贈与者と管理者が異なりますね。
また110万円以上の贈与が行われた際には、きちんと贈与税の申告もされていますので、子供さんが学生のうちでしたら、質問者さんが子供さんの預金を管理していたとしても、その預金が祖父の名義預金であると疑われることはないと考えていいでしょう。
ただし、大金だからといって、子供さんが四十歳や五十歳になっても親御さんが子供名義の預金を管理している場合、それは税務署に、祖父ないし、質問者さんの名義預金だ、と判断される可能性がありますので、その点は注意をしてください。
親が子供(成人)の口座を管理し必要な都度子供に送金。これは名義預金?
では最後に5つ目の質問です。
これは、親が子供(成人)の口座を管理し、必要な都度子供に送金、これは名義預金とみなされるのでしょうか、というものです。
先ほどの質問と似ていますが、この場合は残念ながら名義預金と判断されることになるでしょう。
質問の内容としましては
「成人した子供に対し贈与を検討しています。子供が通常使う通帳に送金するのが一番良いとは分かっているのですが、その場合、子供がお金を使ってしまうと思うので、別通帳を新しく作り、そこから必要な都度子供に送金をしたいと思っています。この場合も名義預金と見なされるのでしょうか」
というものです。
質問者さんを含めて、こういったことを考えられる方は多いのですが、しかし実行に移してしまうと、税務調査官のターゲットになるんですね。
これまで説明をしてきたように、子供が未成年から大学生くらいまででしたら子供の通帳を親がガッチリと管理していても仕方ないか、と税務調査官もスルーすることはありますが、成人して判断能力もきちんとある子供の通帳を、親がしっかり管理しておれば、それは贈与したとは言えませんよね。
将来、親が亡くなった時に、親が管理していたと丸分かりの子供名義の通帳を、調査官が見れば、名義預金として親のお金と判断されることになります。
ですので、成人した上でも子供の無駄遣いが心配、でも贈与はしたい、ということでしたら、最初から子供の預金は作らずに、現状のまま子供さんにお金が必要になった都度、送金した方が無難でしょうね。
無駄遣いが心配なのであれば、住宅取得資金の贈与や、結婚子育て資金の贈与など、あげたお金の使い道が限定されるような方法を使って、贈与されるのが良いかと思います。
今回の動画のまとめ
では今回の動画のまとめです。
子供が未成年から大学生くらいまでの間でしたら、子供が親や祖父母親戚などからもらったお金を、親などの保護者が管理をするというのは、社会通念上は当たり前のことだと税務署も分かっていますから、子供がもらったお金が、積もり積もって高額になったからといって 、名義預金と言われたりだとか、税務上問題になるといったことはありません。
ですが、だからといって子供の預金を親がどう管理してもいいというわけではもちろんありません。
管理方法を間違えれば、名義預金になってしまうこともありえます。
子供名義の預金の利息を、親名義の預金口座に移したりだとか、親が自分のためにお金を使ったりだとか、子供が社会人になっても通帳一式を本人に渡さないとか、このような行動をとっていた場合、子供名義の預金は将来、名義預金と判断されます。
そして皆さんにとって一番の心配事は、子供さんに通帳一式を渡すタイミングですよね。
理想をいえば、子供が結婚や就職などで家を出るときに渡した方が、対税務署で考えた場合には安全なんですが、全ての人間がそうだとは言いませんが、通常はお金があったら辛抱が効かないんですよね。
私は貧乏な家で育ちましたが、もしも実家が裕福で就職してすぐに、数百万円数千万円も入っている通帳を受け取っていたら、確実に5回は仕事を辞めていましたね。
もしも社会人になってすぐのお子さんが、散財しそうな性格の場合は、未成年の間に貯まった預金は、本人にいっぺんに渡すのではなく、贈与者である親御さんや、祖父母の年齢・体調も考えながら、相続が発生するまでに数年にわたって送金を行った方が、お子さんの人生を考えた場合には良いかもしれません。
また、成人した子供に今から贈与を行うという場合でしたら、住宅取得資金の贈与や、結婚・子育て資金の贈与など、あげたお金の使い道が限定されるような方法を使って、贈与をされたりだとか
あえて若いうちはお金の贈与を控えて、大金を持たせても大丈夫だと子供が精神的に成熟するまで待ってから贈与を行うという選択も良いかもしれませんね。
前回の動画「【贈与の重要性】将来の相続税対策を一日でも早く始めるべき3つの理由」で、将来の相続税の節税のために生前贈与は1日でも早く始めましょう、といった内容をお話しましたが、いくら子供や孫に贈与を行うことで将来の相続税が減ったとしても、そのせいで、子供たちの人生がめちゃくちゃになってしまったら元も子もないですから、これから贈与を行う親御さんたちは、そういった面も考慮した上で、賢く効果的な生前贈与を行っていただきたいと思います。
以上で、今回の動画は終わりです。
最後に皆様にお知らせです。
この度私の2冊目の著書「厳しい税務調査がやってくる」が中央経済社から発売されることになりました。
第一冊目は「間違いだらけの相続税対策」として、相続に的を絞って書いたのですが、おかげさまで第9版まで増刷されまして、発売から約1年3ヶ月間 Amazon の相続贈与の売れ筋ランキングでは第1位を取らせてせていただきました。
ですので、2冊目はどうなのかとちょっとプレッシャーを感じています。
2冊目の方では、相続に関する内容も入れておりますが、メインのコンテンツとしては贈与税に関する調査と、不動産の売却に伴う譲渡所得税の調査について書いております。
贈与をすることで将来の相続税を減らしたいと考えておられる方や、不動産の売却で損をしたくないと考えておられる方に対し、こんな方法を取ってしまうと税務調査を誘発しますよ、とか、逆に税務調査の対象にならないためにはここに気をつけましょうと言った内容について、私のこれまでの40年の経験をもとに実際の調査事例をふんだんにご紹介しております。
Amazonでも予約販売が始まっており、この動画の概要欄にも販売ページのリンクを掲載しておりますので、機会がありましたら是非手にとっていただければと思います。
それでは次回の動画でお会いしましょう、最後までご視聴いただきありがとうございました。
秋山清成
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