この記事では、香典の金額、入れ方、渡し方と、香典袋の書き方・包み方をご説明いたします。
目次
そもそも香典って何?
香典とは
香典とは現金を不祝儀用の水引を結んだ袋に包んだものをさします。
古くはお通夜や葬儀・告別式に参列する人は故人に対してお線香や香木、抹香などをお供えしていましたが、現代ではこれが現金に置き換わっています。
相互扶助の意味合いもある
死は突然の出来事で、遺族にとっては葬儀は突然の出費です。香典はその出費に対して、金銭面で助け合うという相互扶助の精神があるといえます。
いくら包めばいいのか(相場)
アンケート調査による香典の相場一覧表
故人との関係 | 最多回答額 | 平均額 |
---|---|---|
祖父母 | 10,000 | 17,978 |
親 | 100,000 | 72,155 |
兄弟姉妹 | 50,000 | 45,979 |
おじ・おば | 10,000 | 17,325 |
上記以外の親戚 | 10,000 | 13,372 |
職場関係 | 5,000 | 5,573 |
勤務先社員の家族 | 5,000 | 5,130 |
取引先関係 | 5,000 | 7,436 |
友人・その家族 | 5,000 | 5,939 |
隣人・近所 | 5,000 | 5,583 |
その他 | 5,000 | 5,327 |
全国調査による香典の金額のアンケートです。葬儀関係のアンケートは平均額が釣り上がる傾向にあるので、最多回答額を参考にしたほうが良いでしょう。
出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会 第4回香典に関するアンケート調査
親戚は10,000円〜、親族以外は5000円が一般的
故人が親戚関係にある場合は、10000円以上、親族以外の場合は香典は5000円ほど包むのが一般的です。親兄弟など近い人物の場合はより多く包む傾向があるようです。
3000円以下は避ける
多くは出せないが、少しでも力になればという気持ちで少額の香典を渡すのは避けたほうが良いです。通夜料理と香典返しで赤字になり、遺族にとっては負担となってしまいます。
自分の年齢や地域や付き合いの程度によって臨機応変に
上記は一般的な金額であり、実際は付き合いの程度によっても包む金額は変わってきます。分からない場合は身近な人に相談してみると良いかもしれません。
香典袋について
無地の香典袋は何でもOK
無地の香典袋は基本的にはどの宗教でも使えるので、神式の葬儀の他、相手の宗教が分からない時にも使うと良いでしょう。
蓮の花の香典袋は仏式以外では不適当
蓮の花が描かれている香典袋は仏教用なので、相手の宗教が分からない時は使わない方が良いです。仏式ではもちろん無地も使えます。
ユリの花、十字架ののし袋はキリスト教式
ユリの花や十字架が描かれたのし袋はキリスト教式です。
金額による香典袋の種類
香典袋は香典の金額に合わせたものを選ぶのが作法です。下の表の金額や種類などはあくまでも一例ですが、高額になるほどのし袋もそれにあわせた高級感のあるものを使用するようにしましょう。基本的には一万円以上の場合は実物の水引きがかかっているものを選ぶと良いです。
香典の金額 | 香典袋の種類 |
---|---|
3千~5千円 | 水引きが印刷された略式香典袋 |
1万〜2万円 | 白黒の水引きをかけたもの 等 |
3万~5万円 | 高級和紙に銀の水引きをかけたもの 等 |
10万円 | さらに手の込んだ装飾がされているもの |
香典袋 表書きの種類
香典の表書き 早見表
御霊前 | 御仏前 | 御神前 | 御玉串料 | 御花料 | 忌慰料 | 御香典 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
仏教 | ◯(~49) | ◯(49~) | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ |
浄土真宗 | ☓ | ◯ | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ |
神式 | ◯ | ☓ | ◯ | ◯ | ☓ | ☓ | ☓ |
カトリック | ◯ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ | ☓ | ☓ |
プロテスタント | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ | ◯ | ◯ | ☓ |
仏式:四十九日法要以前は「御霊前」、四十九日法要以後は「御仏前・御佛前」
仏教では亡くなってから四十九日間は閻魔大王による裁きが行われるとされています。したがって、四十九日法要以前はまだ「霊」から「仏」にはなっていないので、四十九日より前は「御霊前」、四十九日より後は「御佛前」とするのが正しいです。
香典は主に通夜や告別式で渡すので、「御霊前」が使われることが多いのです。
浄土真宗は四十九日以前でも「御仏前」
一方、仏教でも浄土真宗は死後すぐに仏様になるという考えですので、「御霊前」は使わず「御仏前」を使います。弔問前に相手の宗派を確認するのが大事ですが、一般会葬者は相手の宗派を知らないことも多く「御霊前」を使ってしまうことも多いようです。気づいた時に遺族に知らなかった旨をお伝えし、弔う気持ちをしっかりと伝えるようにしましょう。
神式の場合は「御神前・御玉串料・御榊料・御霊前」
神道では神式特有の書き方として「御神前・御玉串料・御榊料」に加え、「御霊前」も使うことが出来ます。
キリスト教式の場合は「御花料・御霊前」
キリスト教には線香や焼香はないので御香典はなく、御花料というのがキリスト教版香典と言えます。「御霊前」は浄土真宗以外の仏式と神式とカトリックで使える汎用性の高さがあるといえます。
同じキリスト教でもプロテスタントでは「御霊前」は使わず、カトリックで使う「御花料」に加え「忌慰料」という書き方もあります。
なお、カトリックでは「御ミサ料」と書くという情報も散見されますが、ミサは本来無報酬であるため御ミサ料という書き方は誤用です。
香典袋・不祝儀袋の書き方
用途の記入
使うものは筆または筆ペンで、薄墨のものを使います。不祝儀袋の水引きから上の場所に「御霊前」などの表書きを書き、水引きの下に自分の名前をフルネームで書きます。
代理のとき
妻が夫の代理で弔問しているときは夫の名前の左下に「内」と小さく書き添えます。会社の上司の代理で出す時は会社名と上司のフルネームの左下に「代」と小さく書きます。会社を代表して会葬するときは、会社名と代表者の氏名を書きます。
連名にするとき
連名は可能ですが多くても3名までで、それ以上の場合は一人のフルネームを書いて、その左に「外一同」という風に書きます。会社や団体などの場合は「◯◯株式会社 ◯◯部一同」のように団体全体を指す名称を書きます。
そして中袋に全員の名前、住所と個別の金額を記した明細を入れておくようにします。香典のお返しを辞退するときはその旨も記しておきます。
中袋の書き方
中袋は、表袋とは別に管理するので、中袋にも住所・氏名・金額を楷書で書きます。裏側に住所と氏名を書きます。
金額は漢数字で書きます。漢数字でも壱(一)、弐(二)、参(三)、阡(千)、萬(万)にはカッコ内の漢数字を使わないように注意です。
香典のお札と入れ方
新札は使わない
新札は死を予想して準備していたようで不適切とされています。どうしても新札しか用意できない場合は新札に折り目をつけて入れると良いです。また、過度に古すぎるお札を入れるのもNGですので、やはり新札に折り目をつけるのが無難かもしれません。
中袋へのお札の入れ方
お札は表(肖像画がある方)を中袋の下(名前・住所を記載した方)に向けるように入れます。二枚以上のお札を入れる時は、お金の向きを揃えて入れるようにしましょう。
中袋を外包みで包む
中袋にお金を入れたら、外包みで包みます。外包みを開き、外包みの中央に中袋の表側が下になるように置きます。外包みの左、右、下、上の順で包みます。水引きの中に入れれば完成です。
ここで重要なことは上側を下側に被せるところです。結婚式など慶事では幸せを受け止められるように下側を上側に被せますが、弔事では逆で不幸が過ぎ去ってくれるようにという意味が込められています。
動画で見てみる
袱紗(ふくさ)
香典はそのままで持っていかずにふくさに包む
香典は「ふくさ」に包んで持参するのが作法です。ふくさは「お金を汚さないように」という思いやりから来ていると言われています。
ふくさの種類
ふくさは本来四角い布ですが、最近では金封タイプの金封ふくさや、爪つきや台付きのものなどが出てきています。
ふくさの色
弔事のふくさの色は緑・青・鼠色・紺色・紫など暗めの色を用います。慶事でも兼用で使える色は深めの色を選び、男性の場合は青色、女性の場合はえんじいろ、男女両方で使えるのは紫色になります。
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ふくさの包み方
香典袋をふくさ中央よりやや右の方へ寄せておきます。次に、右、下、上、左へ折りたたみます。
ポイントは左で右を押さえることです。普段開け閉めに使う方を押さえることで「不幸が簡単に繰り返されないように」という意味が込められています。
動画でふくさの包み方を見る
香典の渡し方
香典を渡すタイミング
香典を渡すタイミングは通夜だけの出席はもちろん、通夜・告別式に出席する場合も通夜に出すことが多いようです。葬儀・告別式にのみ出る場合は出席したときに持参します。
香典は何度も渡すことは「不幸が重なる」ことを連想させるので、自分が弔問するタイミングで1回でお渡しするようにします。ただし、通夜前に取り急ぎ弔問する時は香典は渡す必要はありません。
また、通夜・葬儀・告別式に参加できそうになく、代理も立てられない時は香典を郵送で送りましょう。
香典の渡し方
受付がある場合は記帳を済ませ、ふくさから香典袋を取り出し、お悔やみの言葉を添えて両手で差し出します。当然ですが、名前は係の人から読めるような向きで差し出します。
渡す際には「このたびはご愁傷さまでございます。ご霊前前にお供えください」と一言添えて一礼して渡すようにします。
香典を渡す際は、ふくさの上に不祝儀袋を乗せて差し出します。
受付がない場合は、拝礼の時に御霊前に供えるか、遺族に手渡します。御霊前に供える時は、表書きを自分が読める方向にして供えます。
動画で香典の渡し方を見る
通夜・葬儀・告別式に参列出来ない時
参列出来ない時は香典を現金書留で郵送します。その時は添え状に参列できない理由とお悔やみの言葉を添えましょう。
香典を辞退された時
前もって遺族が香典を遠慮している時は、遺族の意向を尊重して持参しないほうがよいでしょう。
香典返し辞退の書き方と文例
もともと香典は遺族に対して相互扶助の意味合いありますので、香典返しを辞退することは失礼に当たりません。
遺族の負担を考えたときや、会社の部署で連名で渡す場合など香典の額が少額になる場合などに香典返しを辞退するケースが多いです。
香典返しを辞退する側は香典袋に香典返しを辞退する旨を書いて伝えます。書く場所は
- 香典袋(外包み)の裏側(住所氏名の脇の余白など)
- 中袋(お金を入れる封筒)の裏側
辞退をする旨を書けば何でも良いですが、文例としては
- お返しのご配慮は遠慮させて頂くようお願い申し上げます
- 誠に勝手ながらお返しは辞退させていただきます
- 香典のお返し等はご無用に願います
口頭で伝える場合は香典袋にも辞退の旨を明記した上で伝えると丁寧です。
受け取った人は香典返しへのお礼は必要?
お礼を繰り返すのは縁起が悪い
返礼品を受け取ったら、品物をいただいたお礼をしなければ、と思いがちですが、香典返し自体が香典へのお礼ですので、香典返しへのお礼はお礼を繰り返すことになります。
葬儀において、「不幸を繰り返さない」という意味を込めて文言や行為などの繰り返しを気をつけるのがマナーですので、香典返しへのお礼は避けるべきでしょう。
受け取った報告は必要か
喪主にとって届いたかどうかが不安なので、香典返しを受け取ったことを報告したほうがよいという意見もありますが、宅配便などでは不在や住所が間違っていた場合は送り主のところに返送されるので、喪主にとっては基本的に香典返しが届いた報告は不要です。
親しい間柄であれば、電話で受け取ったことを報告してもよいでしょう。