高齢になってくると、自分の人生の最期をどのように迎えるかについて考える機会が増えてきます。最近では「終活(しゅうかつ)」と呼ばれる生前の身の回り整理や準備を行う方も多く、特に葬儀の内容を 事前に相談・予約 しておくサービスへの関心が高まっています。
かつては「生きているうちから葬儀の準備をするなんて縁起でもない」と敬遠されがちでしたが、現在では安心して最期を迎えるための前向きな準備として捉える方も少なくありません。
本記事では、60代以上の方向けに葬儀の事前相談・予約サービスの仕組みやメリット、利用方法について丁寧に解説します。終活を考えるうえでぜひ参考にしてください。
目次
シニア世代で高まる終活への関心と背景
日本では少子高齢化が進み、人生100年時代とも言われる現代、シニア世代の終活への意識が年々高まっています。実際、ある調査では終活は必要だと思うと答えたシニアが約8割にも上り、「終活」という言葉自体の認知度も9割以上に達しています。背景には、核家族化の進行や平均寿命の延伸により、「万が一のときに周囲に迷惑をかけたくない」「自分の希望する形で人生の締めくくりをしたい」と考える高齢者が増えていることがあります。
特に「家族に負担をかけたくない」という想いは多くのシニアに共通しています。株式会社終活のまどぐちが65歳以上を対象に行った意識調査でも、人生の最期に最も重視することとして「周囲に負担をかけないこと」を挙げた人が最も多く、約4割にのぼりました。また、「遺言書やエンディングノートを残したい」と考える人の理由でも「自分の死後、残された家族に迷惑をかけないため」が70%以上と圧倒的に多く、家族思いのシニアの姿勢がうかがえます。こうしたニーズから、生前に自分の葬儀を準備しておくことへの関心が高まっているのです。
さらに近年は、コロナ禍を経験したことで「もしもの時」の備えを見直すきっかけになった方もいます。身近な人の急な訃報に接したり、自らの健康不安を感じたりして、「終活を早めに始めよう」と思い立つケースも増えました。従来は子供や親族が故人の葬儀を執り行うのが当たり前でしたが、現在では、自分自身で葬儀の形を決めておきたいという方が増えています。特に盛大な葬儀よりも家族葬や質素なお別れを望む声も多く、「自分の希望に沿った形で最期を迎えたい」という想いが強くなってきています。
葬儀の事前相談・予約サービスとは?最近増えるその仕組みと特徴
葬儀の事前相談・予約サービスとは、その名の通り生前のうちに自身の葬儀について専門家に相談し、必要に応じて予約をしておくサービスです。本人や家族が元気なうちに葬儀社や終活相談窓口を訪ね、葬儀の内容や費用について相談できます。具体的には、以下のようなポイントについて事前に話し合うことが可能です。
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希望する葬儀の形式や規模(例:家族葬にしたい、大勢呼びたい等)
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葬儀で行いたい内容や演出(例:音楽葬にしたい、お別れ会形式にしたい等)
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葬儀にかけられる予算や費用の目安
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希望する葬儀会場やお寺・斎場の場所
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その他、本人・家族のこだわりや要望全般(宗教的な配慮や演出の希望など)
葬儀のプロに事前に相談することで「何から準備すれば良いのかわからない」「費用はどのくらいかかるのか」といった、漠然とした不安や疑問を解消できます。また、生前のうちに具体的な希望を伝えておくことで理想の葬儀像が明確になり、家族も安心して当日を迎えられるでしょう。
最近増加する事前相談のニーズとサービスの種類
近年、このような葬儀の事前相談を利用する方は年々増加しています。昔は「亡くなってから葬儀社に連絡し、慌ただしく準備を整える」のが一般的でした。しかし現在では、前もって情報収集し自分に合った葬儀社やプランを決めておく流れにシフトしつつあります。特に「亡くなってからすべてを決めるのは不安だ」と感じる方が増えており、それが事前相談利用者の増加につながっています。
事前相談・予約のサービス形態も様々です。多くは葬儀社が提供する無料相談サービスで、専門のプランナーや葬祭ディレクターが相談に乗ってくれます。予約不要で随時相談を受け付ける葬儀社もありますが、事前に予約しておけば時間をかけてじっくり話を聞いてもらえるでしょう。相談は対面のほか電話やオンラインで対応してくれるところもあり、自宅に居ながら気軽に質問できるケースもあります。
また、実際に契約を結ぶかどうかは利用者の希望次第です。相談だけで終えることもできますし、希望に応じて生前契約や会員登録を行い、正式に予約をしておくこともできます。例えば大手葬儀社では、生前に基本プランの契約を結んで予約金を預けておく「葬儀の生前予約プラン」を用意している場合があります。契約内容は後から変更可能で、支払い方法も一括前払いから当日精算まで様々です。
契約をせず情報収集のための相談だけでも全く問題ありません。自分の状況に合わせて柔軟に利用できるのが事前相談サービスの特徴です。


葬儀の事前相談・予約サービスの具体的な流れ
では、実際に葬儀の事前相談・予約サービスを利用するとき、どのような手順で進めれば良いのでしょうか。一般的な利用の流れを、以下にステップごとにまとめました。
1. 相談先を探して問い合わせ
まずは葬儀社や終活相談サービスに連絡し、事前相談をしたい旨を伝えます。地域の葬儀社に直接電話したり、ウェブサイトの問い合わせフォームから予約したりできます。複数社に問い合わせてみて、対応や提案を比較するのもおすすめです。信頼できそうな相談窓口を見つけたら、面談の日程を決めましょう。
2. 専門スタッフとの相談
予約した日時に相談窓口や葬儀社を訪問し、専門スタッフと具体的な打ち合わせを行います。対面以外に電話やオンライン相談を実施するサービスもあります。
相談では、どのような葬儀にしたいか希望を伝え、疑問点を質問しましょう。スタッフが葬儀の種類やプラン内容、過去の事例などを説明してくれるので、分からないことは遠慮なく相談します。場合によっては会場の設備見学ができることもあり、担当者の人柄や社風を直接感じられる良い機会です。
3. プラン提案と見積もり
ヒアリングした内容をもとに、スタッフが葬儀内容の提案や見積もり金額の提示をしてくれます。例えば「家族葬で30人程度なら○○プランで約○○万円」といった具体的なプランが示されるでしょう。
見積もりはあくまで仮のもので、実際の葬儀時に変更も可能です。この段階で複数社の見積もりを比較検討すれば、おおよその相場観もつかめます。費用面で不安がある場合は遠慮なく質問し、追加費用の有無や含まれるサービス内容を確認しておくと安心です。
4. 内容の決定と契約
提示されたプランや金額に納得できたら、事前予約の契約に進みます。具体的には、葬儀社との間で「〇〇プランで葬儀施行を依頼する」という 生前契約書 を交わす流れです。契約時に予約申込金(手付金)を支払うケースもあります。一方で「契約はせず、見積書だけ保管しておいて必要時に改めて依頼する」という形でも問題ありません。
その場で決めきれない場合は一旦持ち帰って家族と相談し、後日改めて契約することもできます。契約後でも内容の変更やキャンセルは可能ですので、将来状況が変わった際は柔軟に見直しができます。
契約した場合は、葬儀社から予約内容を記載した書面や会員カード等が発行されることがありますので大切に保管しましょう。
5. 万一の時の連絡と葬儀の施行
生前相談・予約を済ませておけば、いざという時の連絡と手続きもスムーズです。契約した葬儀社には、ご本人が危篤状態になった段階で事前に連絡しておくこともできますし、亡くなられた後に連絡することも可能です。葬儀社は事前に打ち合わせた内容に沿って準備を進め、遺族と改めて最終的な打ち合わせをした上で葬儀を執り行います。
生前予約してある旨を伝えておけば、遺族も一から葬儀社探しをする手間が省け、落ち着いて見送りの準備に専念できるでしょう。葬儀後の支払いについては、事前に全額前払い済みであれば追加費用のみ精算、予約金のみの場合は残額を支払う流れになります。
以上が一般的な流れです。まとめると、「問い合わせ」→「事前相談」→「見積もり確認」→「契約(任意)」というステップで進み、事前準備をしておくことで緊急時にも慌てずに済むようになります。初めてのことで不安も多いかもしれませんが、専門のスタッフが丁寧に対応してくれますので、一人で抱え込まず気軽に相談してみましょう。
事前に葬儀を準備しておくメリット
葬儀の事前相談・予約を利用し、生前に準備を整えておくことには多くのメリットがあります。「まだ元気なのに早すぎるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、早めの備えには以下のような利点があるのです。
精神的な安心感
あらかじめ最期の段取りを決めておくことで、「自分の葬儀はどうなるのだろう?」という将来の不安が和らぎます。特に高齢になると漠然と死への心配を抱くものですが、事前にプロに相談しておけば心構えができ、残りの人生をより穏やかな気持ちで過ごせるでしょう。実際、「心配事を残さず穏やかに最期を迎えたい」という理由で終活に取り組むシニアも少なくありません。
家族の負担軽減
大切な家族を失った直後、遺されたご家族は深い悲しみの中にいます。その最中に葬儀社探しや打ち合わせ、各種手配を一から行うのは心身ともに大きな負担です。
事前に基本的な段取りや希望内容が決まっていれば、遺族は指示に沿って動くだけで済み、精神的・肉体的負担が格段に減ります。また故人の希望が明確であれば、「どんな式にすれば故人が喜ぶか」と悩む必要もなくなり、家族の迷いや後悔も減らせます。
多くのシニアが終活を考える最大の理由である「周囲に迷惑をかけたくない」という思いを、事前相談によって具体的な形で叶えられるのです。
費用の見通し・金銭計画が立てられる
葬儀にはどのくらい費用がかかるのか、不安に思う方も多いでしょう。事前相談を利用すれば希望するプランの見積もりを事前に把握できるため、葬儀費用の目安がわかって安心できます。
おおよその金額が分かれば生前に貯蓄や保険などで準備することも可能ですし、「思ったより高額だったので内容を見直そう」と計画修正することもできます。逆に準備なしで急な葬儀を迎えると、時間がない中で十分比較検討できずに高いプランを選んでしまい、後から「もっと安くできたのでは」と後悔するケースもあります。
事前に複数社の見積もりを比較しておけば、不要な出費を省いて費用を抑え、納得できる形で葬儀を行える可能性が高まります。葬儀後のアンケートでも「生前に準備しておいたおかげで費用の透明性が高く、納得して送り出せた」という声があり、金銭面でのトラブル防止にもつながります。
自分の希望に沿った葬儀を実現できる
人生の締めくくりを自分らしく飾りたい、と願う方も多いでしょう。事前に希望を伝えておけば、本人や家族が本当に納得できる葬儀の形を実現しやすくなります。時間に余裕のあるうちにプランを検討すれば、「やはり家族葬がいいかも」「音楽はこの曲を流してほしい」など細かなこだわりも叶えやすいです。他の選択肢と比較しながらじっくり決められるため、「本当はこうしてほしかったのに…」といった後悔も減らせます。
事前相談はあなたの理想の葬儀像を形にする有力な方法と言えるでしょう。
以上のように、事前に葬儀準備をしておくことは本人にとっても家族にとっても多くのメリットがあります。精神面・経済面双方の安心を得られるうえ、いざという時に慌てず落ち着いて行動できるのは大きな利点です。「まだ早いかな」と思わず、できるうちに備えておくことが後悔しない最期につながると言えるでしょう。
信頼できる相談窓口・サービスの選び方
葬儀の事前相談をしようと思ったとき、どのような相談窓口やサービスを選べば良いのでしょうか。大切な最期の準備を任せるのですから、信頼できる相手を見極めることが大切です。選択の際にチェックしておきたいポイントをまとめました。
実績や評判が良いか
地元で長年営業している葬儀社や、公的機関・信頼できる企業が運営する相談サービスを選びましょう。
利用者の口コミや評判も参考になります。「相談してよかった」「親身に対応してくれた」といった声が多いところは安心です。逆に強引な勧誘の噂がある所は避けたほうが無難です。
費用やサービス内容の説明が明確か
見積もりの内訳を丁寧に説明してくれるか、質問にきちんと答えてくれるかも重要です。信頼できる業者は、素人には分かりにくい葬儀費用の項目についても一つひとつ丁寧に教えてくれます。
事前相談の段階で不明瞭な費用がないか、説明に納得できるかを確認しましょう。契約内容やキャンセル規定についても、しっかり説明してくれるところが望ましいです。
こちらの希望や話をきちんと聞いてくれるか
良い相談窓口は、こちらの要望をまず丁寧にヒアリングしてくれます。自社の高額プランばかり押し付けてくるようなところよりも、利用者の立場に立って適切な提案をしてくれる相手を選びましょう。
相談時の印象や担当者の対応も大切です。初回相談で違和感を覚えた場合は、無理に契約せず他を当たる勇気も必要です。
複数の選択肢を比較する
一社だけで即決せず、可能であれば2~3社ほど相談してみるのがおすすめです。各社の提案や費用を比較することで、より自分に合ったサービスが見えてきますし、相場感も掴めます。複数相談することで「こちらの会社の方が説明がわかりやすい」「費用が適正」といった判断材料も増えるでしょう。
こうしたポイントを踏まえて、自分や家族が信頼できると感じる相談先を選びましょう。不安なこと、分からないことを何でも相談できる相手がいれば心強いはずです。
専門の終活相談サービスを利用する選択肢も
最近では、個別の葬儀社だけでなく終活全般の相談に乗ってくれる専門窓口も登場しています。
例えば、東京・新宿にある「終活と相続のまどぐち」という常設相談窓口では、葬儀の準備はもちろん相続手続きや身元保証※の相談まで含めてワンストップで対応してもらえます。専門資格を持つスタッフや提携弁護士が在籍しており、終活や葬儀に関するあらゆる悩みを無料で相談できるのが特徴です。
葬儀社の紹介だけでなく、遺言書作成やお墓のこと、生前整理の方法など幅広く支援してもらえるため、「何から始めればいいかわからない」という方には心強いサービスでしょう。
※身元保証: 高齢者が病院入院や施設入所をする際に求められる身元引受人(保証人)となってくれるサービス。身寄りがなかったり家族に頼みにくい場合に代行してもらえる。
この「終活と相続のまどぐち」のように、公平な立場で専門家と繋いでくれる相談窓口を利用するのも一つの方法です。終活全般のプロデュースをしてくれるので、葬儀の事前相談だけでなく、その後の相続や遺品整理まで含めたトータルサポートが受けられます。
特に「どの葬儀社を選べば良いかわからない」「葬儀以外にも色々準備したいことがある」という場合に便利です。信頼できる相談窓口を上手に活用し、賢く終活を進めていきましょう。
早めの相談で安心して最期の準備を
人生の終盤を迎えるにあたり、葬儀の事前相談・予約サービスはシニア世代にとって安心をもたらす有用な手段です。終活への関心が高まる背景には「家族に迷惑をかけたくない」「自分らしい最期を迎えたい」という切実な思いがあり、生前に葬儀を準備することはその思いを実現する一助となります。実際に事前相談を行っておけば、いざという時に慌てずに済み、残される家族も心にゆとりを持って送り出せるでしょう。
「終活はまだ早いかな」と迷われている60代の方も、思い立った今が始めどきです。相談は無料でできる窓口も多くありますし、準備をしたからといってすぐにどうこうなるものではありません。むしろ元気なうちだからこそ冷静に考えられ、周囲とも話し合いながら納得のいく計画を立てられます。専門家の力を借りながら進めれば難しい手続きもスムーズです。
ぜひ信頼できる相談先を見つけて、一歩踏み出してみてください。早めの準備が、これからの人生をより安心して豊かに過ごすことにつながるはずです。残りの人生を自分らしく、そして大切なご家族と笑顔で過ごすためにも、葬儀の事前相談・予約サービスを上手に活用してみましょう。