近年、都市部を中心としてお墓不足が問題になっています。
令和2年度の都立霊園の公募受付数は約2.5万でしたが、
それに対し、公募倍率は一般埋蔵施設などは4.6倍、合葬埋蔵施設は3.4倍、樹林型合葬埋蔵施設(樹林墓地)は14.4倍、樹木型合葬埋蔵施設(樹木墓地)は1.1倍となっています。
参考 令和2年度 都立霊園公募受付状況と抽選会について東京都樹林型合祀埋蔵施設(樹林墓地)の倍率が14.4倍と目立つのは、生前の申込みが可能なことが特徴の一つであり人気があるためです。
なぜ、こんなにもお墓が不足しているか。
大きな理由として、都市部への人口の流入があげられます。
東京など都市部の大学に進学した学生や、就職先を求めて移住した人がそのまま住むケースが多いからです。
また、日本では少子高齢化が加速しています。
年間死亡者数は、2020年は138万4千人ですが、もっとも亡くなる方が多くなると予想される2040年には、1年間で165万人を超える見込みです。
多くの人口を抱える都市部では、今後さらにお墓の需要が増すことになり、益々、深刻な問題となります。
こういった事情もあって、都市部では地方と比較すると供養方法の多様化が進みやすい傾向にあります。
その辺りについて将来の予測なども含めて、説明をさせていただきます。
東京への人口の一極集中
人口の東京への一極集中は、お墓不足の大きな原因になっています。
やっぱり東京は魅力的な街です。賑やかで楽しく、何でも欲しいものは揃います。
企業の本社も多くありますし、大学や学校も数多くあります。
ただ、便利過ぎ、人が集まり過ぎて、様々な弊害をもたらしており、お墓不足もその問題の一つです。
総務省統計局の統計を見てみると、東京・神奈川・埼玉・千葉の東京圏は、約12万人の転入超過で22年連続の超過になります。
下のグラフを見ると、地方から都市部、特に東京圏に人口を吸い上げているのがわかります。
都市部の墓不足と並行して地方のお墓の無縁化、墓じまいが進んでいますが、原因を顕著に示したグラフになっています。
地方の人口は年々減ってきており、少しづつ疲弊してきています。国政としても地方創生を掲げて、年間1兆円もの予算を掛けて、地方の活性化を促しています。
それでも都市部への人口の流入は止まらず、東京一極集中は依然として変わっていません。
家から家族、個人へと供養方法が多様化
「先祖代々から受け継がれた土地とお墓を守っていく。」
東京一極集中により、昔ながら引き継がれてきた家制度が変わってきています。
都市部への移住により核家族化が進み「家」ではなくて「家族」という単位で考える方が増えました。
さらに、未婚率が上がってきており、生涯独身だったり「個人」単位への変化も進んでいます。
今まで通り家制度を維持できるケースが少なくなり、それぞれのニーズに応じて供養方法が多様化してきています。
そういった世相を反映して、墓地の需要を満たすために、公営墓地においても合葬埋蔵施設、樹林型墓地など、新たな形式の墓地整備が進んでいます。
全国で最初に合葬式墓地ができたのは横浜市で、1993年に市営墓地である「日野公園墓地」に開設されました。
横浜では、他にも「メモリアルグリーン」においても2006年に合葬式墓地が開設されています。
都立霊園としては、1998年に東京都の「小平霊園」につくられ、他には「多磨霊園」(2003年)、千葉県の「八柱霊園」(2013年)にも開設されています。
2002年には埼玉県さいたま市の「思い出の里市営霊園」に開設され、2008年には千葉県市川市の「市川市霊園」に開設されています。
民間においてもロッカー式の永代供養墓や合葬型の樹木葬など、新しい形式の墓地を提案が増えています。
従来のお墓を求めるニーズは依然として高い
その一方で、従来のお墓を求めるニーズは依然として高いです。
平成27に行われたインターネット都政モニター「東京都の霊園」アンケートで「合葬埋蔵施設、立体埋蔵施設等の利用について」という問いに対して、
- 「現在の墓地事情等を勘案すると利用してもよい」(48%)
- 「積極的に利用したい」(15%)
- 「利用するつもりはない」(32%)
約3割の方が合葬型や立体埋蔵施設の利用に否定的であって、墓地事情を考えると利用しても良いという人も含めると8割になります。
一方で、積極的に肯定する人は15%しかいません。
「皆で入る合葬墓よりも家族と一緒のお墓に眠りたい」というニーズが根強くあることを伺えます。
ただ、墓地の用地取得の問題があり、需要に対してのアプローチがほとんどできていない状況です。
従来型の一般墓地の供給数が圧倒的に不足しているのが都営霊園の現状でもあります。
お墓不足は一層深刻化する?
東京都には1万弱の墓地施設がありますが、墓地用の土地を新たに確保することが難しいため、新たな墓地施設はほぼ開設されていません。
既存墓地施設の増設あるいは既存区画の再募集により、なんとか一定の供給数を確保している状況です。
このような状況の中、墓地の需要は年2万基程度とされていますが、需要に供給が追い付いていない慢性的な墓不足の状態になっています。
将来的には、少子高齢化による多死時代が更に追い打ちを掛けます。
2025年問題という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
日本は2025年になると団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない未曾有の『超・超高齢社会』を迎えます。
現在、年2万基程度の墓地の需要は2028年に3万基、2040年に4万3千基まで増えると推測されています。
現在でもやむをえず、空きのある他県の霊園を頼ったり、自宅で手元供養としての形で遺骨を保管したりする人もいらっしゃいます。
これでは、とても増えるお墓の需要を賄えるわけもなく、都市部でのお墓不足はもっと加速するとと予測されます。
まとめ
都市圏を中心とした墓不足問題、特に東京圏は、都営霊園の倍率に見られるように既に問題が顕在化しています。
墓不足が起こる原因は、東京への人口の一極集中であり、少子高齢化により今後の死亡者数が増えることも拍車を掛けています。
それによって、家族の形態も変わってきて、先祖代々から受け継ぐ家制度から家族、更には個人へと単位が移り供養方法の多様化も進んできています。
現実的に都内で一般墓地用の土地を確保することは難しく、行政側の対応としては溢れる墓地需要を満たすために、合葬埋蔵施設、樹林型墓地など、新たな形式の墓地整備が進んでいます。
今後は、益々、年間死亡者数が増え、都市部の墓不足問題は深刻化していくと予想されます。
解決策としては、都市部への人口流入の緩和であり、地方の活性化をして、地方で生活をする人を増やすことですが、国の政策として、地方創生を掲げてはいるものの難しいのが現実です。