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2025年における宇宙葬の現状と展望

宇宙葬とは?その歴史・背景・目的

宇宙葬(スペース・バリエル)とは、故人の遺灰をロケットで宇宙空間へ運び、地球外で供養を行う新しい葬送の形態です。いわゆる自然葬(散骨)の一種であり、海洋散骨や樹木葬と同様に、「故人を自然の循環に還す」という発想から生まれました。ただし宇宙葬の場合、その“自然”は地球を越えて広大な宇宙となります。宇宙への憧れや「自分も星になりたい」という想いを込めて、生前宇宙旅行を夢見ていた方などが選ぶケースも増えつつあります。

歴史を振り返ると、宇宙葬が初めて実現したのは1997年のアメリカでした。世界初の宇宙葬は同年4月21日、スタートレックの生みの親として知られる映画プロデューサーのジーン・ロッデンベリーら24名の遺骨を搭載したロケットによって行われています。このロケットは人工衛星軌道上を周回した後、約5年後に大気圏へ再突入しオーストラリア付近に落下しました。ロケットが流れ星のように燃え尽きる様子から、宇宙葬は「流れ星供養」とも呼ばれます。その後も著名人の宇宙葬として、月探査機ルナ・プロスペクターに搭載された地質学者ユージン・シューメーカー博士の遺灰(月面到達)や、冥王星探査機ニュー・ホライズンズに搭載された冥王星発見者クライド・トンボーの遺灰(太陽系外への旅)などが実施されています。これらはそれぞれ月面宇宙葬や深宇宙宇宙葬の初例となりました。

当初はごく一部の限られた人々だけの特別な供養方法でしたが、技術の進歩と民間宇宙ビジネスの発展に伴い徐々に一般の人にも門戸が開かれてきました。1997年から現在までに宇宙葬を利用した人は、世界全体でも延べ300~400人程度とされていますが、最近ではサービス提供企業の増加や低価格化により年々利用者数は拡大しています。宇宙葬の目的は人それぞれですが、「壮大な宇宙に還りたい」「最後に地球を見下ろしたい」「自分の死を希望に満ちたものにしたい」といった未来志向の思いや、宇宙好きだった故人の夢を叶えるためなど、ロマンあふれる動機が多いようです。また、「自分の死が家族にとって前向きな思い出になるように」という願いから選ばれるケースもあります。広大で神秘的な宇宙への旅立ちは、残された人々にとっても悲しみだけでなく希望や慰めを感じさせる新たな供養スタイルといえるでしょう。

宇宙葬を提供する最新の企業・サービス(国内外)

宇宙

現在、宇宙葬を提供する企業はアメリカを中心に複数存在し、日本国内にも提携会社や新興企業が登場しています。以下に、代表的な国内外のサービスを紹介します。

セレスティス社(Celestis, 米国)

世界で初めて商業的な宇宙葬サービスを開始した先駆者的企業です。1997年の初打ち上げ以来、地球周回軌道への遺灰打ち上げや月面到達、深宇宙飛行など多様なプランを提供し、2024年時点で累計19回以上の打ち上げ実績があります。セレスティス社は「メモリアルフライト」と称するシリーズを継続的に行っており、地球周回軌道に留まるプランから月面着陸(Lunaサービス)、さらには地球・月系を離れて太陽周回軌道へ旅立つプラン(Voyagerサービス)まで選択可能です。日本では株式会社銀河ステージがセレスティス社の正規代理店としてサービスを提供しており、2013年から多くの宇宙葬を取り扱って国内最多の実績を持ちます。銀河ステージの「スペースメモリアル」事業を通じて、国内から申し込んだ遺灰が実際に米国のロケットで宇宙へ送られています。

エリジウムスペース社(Elysium Space, 米国)

2013年創業の新興企業で、小型人工衛星(立方体衛星)を使った宇宙葬を特徴としています。遺灰を納めた1Uサイズ(10cm立方)の衛星「イリジウム・スター」によって遺灰を地球周回軌道へ送り出し、およそ2年間軌道を回った後に大気圏で流れ星のように燃え尽きるサービスを提供しています。エリジウム社は専用のスマートフォンアプリを用意しており、打ち上げ後は人工衛星の現在位置や衛星から見た地球の映像を確認できるのも売りの一つです。さらに、同社は民間月面着陸船を使った月面供養(遺灰カプセルを月面に届け安置するサービス)を世界で初めて計画した企業として注目されました。2022年以降、月面着陸ミッション(アストロボティック社のペレグリン着陸船など)を活用した月面宇宙葬も準備中で、近い将来月を墓標とすることも現実味を帯びています。

スペースNTK社(SPACE NTK, 日本)

日本初の宇宙葬専門ベンチャー企業です。2017年に葛西智子氏によって創業され、人間およびペットの遺骨を宇宙に届けるサービスを展開しています。スペースNTKは2022年4月に初の宇宙葬専用人工衛星「MAGOKORO号」を打ち上げ、日本人遺族による宇宙葬を実現しました。MAGOKORO号には故人やペット計10体分の遺灰がアルミ筒に収められて搭載されており、他にも遺族からの折り鶴200羽やメッセージカード3000枚が一緒に積まれるなど、故人と遺族の想いを象徴する工夫がなされています。この衛星はスペースX社のロケットに相乗りで打ち上げられ、約5~6年後に大気圏再突入して燃え尽きる設計で、最期は流れ星となって地球に還る予定です。スペースNTKはこの他、生前に本人の髪の毛や爪など一部を宇宙に送り出す「宇宙生前葬」にも取り組んでおり、2025年には最初の実施が予定されています。日本発のサービスとして今後の展開が期待されており、将来的には月や火星への遺灰散骨も視野に入れているとのことです。

参考 スペースNTK公式サイト

その他の国内サービス

上記以外にも、日本では既存の葬儀社や散骨事業者が宇宙葬に参入し始めています。たとえば、銀河ステージ社はセレスティス社と提携したロケット宇宙葬のほか、自社企画による成層圏バルーン散骨(「バルーン宇宙葬®」)も提供しています。バルーン宇宙葬では特殊素材で作られた巨大風船に遺灰カプセルを取り付けて空高く放ち、成層圏でバルーンが破裂した際に遺灰を散布します。高度約30~40km程度までしか達しないため厳密には「宇宙空間」ではありませんが、手頃な費用で実施でき、環境負荷も少ない散骨方法として注目されています。他にも、国内大手の葬祭会社が宇宙葬サービスを企画中である例もあります。例えばアルファクラブ武蔵野株式会社は、スペースNTKとの提携により低価格な宇宙葬プランを準備中であり、将来的に日本のH3ロケットで遺灰カプセルを打ち上げる計画も検討しています。この構想が実現すれば、国内(種子島宇宙センター)で宇宙葬の打ち上げセレモニーが行えるようになり、家族が直接見送りに参加しやすくなるでしょう。

参考 銀河ステージ公式サイト

費用とプランの比較

月

宇宙葬というと高額なイメージがありますが、近年はプランの多様化と価格帯の拡大が進んでいます。費用は打ち上げ先の種類(高度)や遺灰の量(カプセルサイズ)によって大きく異なります。それぞれの大まかな相場は以下の通りです。

成層圏バルーン散骨

約30万円前後。バルーンを使用する場合、比較的簡易な装備で済むため数十万円程度の低コストで実施可能です。地上からバルーンを放つセレモニー費用込みの価格設定が多く、手軽に「宇宙に近い場所」へ遺灰を届けたい方向けのプランです。

地球周回軌道へのロケット宇宙葬

おおよそ 30万~270万円 程度と幅があります。もっとも基本的な地球周回コースであれば、最近では参加者の増加により一人当たり数十万円程度から利用可能です。例えば米エリジウムスペース社では遺灰の一部を地球周回衛星に載せるサービスを約1,990ドル(約20万円)で提供していた実績があります。一方、米セレスティス社の同様プランは約45万円からとやや高めですが、その代わり打ち上げ実績の信頼性豊富な付帯サービスが魅力です。地球周回プランでは、基本的に遺灰カプセルは数年~数十年かけて地球を回った後、大気圏突入時に燃え尽きます。その期間中は人工衛星の追跡サービスや証明書発行など各社工夫を凝らしており、宇宙にいる故人を見守ることができるよう配慮されています。

月面着陸・深宇宙プラン

おおよそ 120万~300万円以上 と高額になります。月まで遺灰を運ぶ「月面供養」や、月・地球圏を離れ太陽系空間に送り出すようなプランは、ロケットの打ち上げ能力やミッション難易度が上がるため費用も跳ね上がります。例えばエリジウムスペース社は月面着陸による供養サービスを約120万円で計画していると報じられました。セレスティス社の場合、月面永眠プラン(Luna)や深宇宙航行プラン(Voyager)は基本料金が数千ドル規模となり、日本円で200~300万円以上になるケースがあります。日本のスペースNTK社も独自の月面散骨プランを用意しており、10グラムの遺灰を月まで運ぶコースが約220万円に設定されています。このように宇宙葬の最高額プランでは数百万円単位の費用がかかりますが、その分「人類の新たな一歩となる供養」を実現できるという特別感があります。

カプセルサイズと料金設定

各社とも遺灰カプセルの大きさや重さによって料金が細かく設定されている点も留意が必要です。多くの場合、「遺灰の一部のみ」を象徴的に宇宙へ送る形となり、手元には残りの遺骨を安置したり分骨したりできます。例として銀河ステージ社の宇宙葬プランでは、1gの遺灰を送る「シングルプラン」が66万円、7gまで送れる「ツインプラン」が198万円(税込)といった価格帯が提示されています。またスペースNTK社では手のひらサイズ(~50g)のカプセルが55万円、こぶし大(~200g)で110万円、ご遺骨全量(~2kg)を送る場合は770万円~といった設定です。全量を宇宙に送り出すケースは稀ですが、「骨壺を持たず故人を完全に宇宙に還したい」という希望にも応えられるよう、こうした大型カプセルも用意されています。なおペットの遺骨に対応するサービスも増えており、犬や猫の場合は一部プランで数十万円から利用可能です。

以上のように、宇宙葬の費用は最低数十万円から最高数百万円と幅広く、自分の希望や予算に応じてプランを選択できます。近年は価格競争や複数人の合同打ち上げによるコスト分散も進んでおり、「思ったより手の届く範囲」と感じる利用者も出てきています。とはいえ通常の葬儀やお墓に比べればまだ高価なため、家族と十分に話し合い、他の供養方法との費用対効果も比較しながら検討することが大切です。

宇宙葬の手続き・流れ(申込みから打ち上げまで)

実際に宇宙葬を申し込む場合、その進行は通常の葬儀とは大きく異なり長期的なスケジュールになります。一般的な宇宙葬サービスの手順は次のようになります。

1.情報収集と申込み – まず宇宙葬サービス提供会社(国内の代理店や直接海外業者)に資料請求や問い合わせを行い、プラン内容を確認します。納得できるプランが決まったら申し込み契約を結び、所定の代金を支払います。海外企業を利用する場合はクレジットカード払いが基本となり、カード種別など事前確認が必要です。申し込み時には故人のお名前・遺骨の状況・打ち上げ希望プランなどを伝え、必要書類を提出します。

2.遺灰カプセルの受け取りと遺骨発送 – 申込み後しばらくすると、宇宙葬用の専用カプセルキットが自宅に送られてきます。これは遺灰を入れる小型容器で、重量やサイズは選択したプランに応じたものです。遺骨(ご遺灰)は事前に粉末状にしておく必要があります(日本のお骨は火葬後に砕かず拾骨する習慣がありますが、散骨には粉骨が必須です)。同封の手順書に従い、指定された量の遺灰をカプセルに移し替えて封入します。その際、故人へのメッセージカードや写真などを同封できるサービスもあります。準備ができたらカプセルを所定の住所(多くは国内代理店か海外事業者の事務所)へ郵送または宅配便で返送します。国際輸送となる場合、業者が輸出入手続き(遺灰は「Burned human remains(焼骨)」として申告)を代行するので指示に従いましょう。

3.打ち上げ日まで待機・打ち上げセレモニー – 遺灰カプセルが事業者に届いてから、実際のロケット打ち上げまで数ヶ月~数年待つことも珍しくありません。各社は一定数の申し込みが集まった段階でロケットの打ち上げ枠を確保します。打ち上げ日は当初予定から延期されることもあるため、気長に待つ心構えが必要です。打ち上げが近づくと事業者から日程と場所の連絡があります。通常、ロケット発射はアメリカのフロリダ州(ケープカナベラル宇宙基地)やニューメキシコ州(スペースポート・アメリカ)などで行われます。現地での見送りイベント(打ち上げ見学ツアーや追悼式典)が用意される場合もあり、遺族は希望すれば参加可能です。旅費は自己負担ですが、一生に一度のセレモニーとして現地でロケットを見送りたいという遺族もいらっしゃいます。遠方で難しい場合でも、打ち上げのライブ中継映像が配信されるので自宅でリアルタイムに見守ることもできます。

4.宇宙への旅立ちとアフターサービス – ロケット打ち上げが無事成功し、遺灰カプセルが宇宙へ届けられたら、事業者より「打ち上げ証明書」が発行されます。証明書には打ち上げ日時やロケット名、軌道情報などが記載され、故人が宇宙に旅立った証としてご遺族に届けられます。また、多くのサービスでは追跡IDや専用アプリが提供され、打ち上げられたカプセルが今どのあたりの軌道を飛んでいるかを確認できます。例えばエリジウム社のアプリでは人工衛星軌道や地球を周回する様子をスマホ上で閲覧でき、家族は夜空を見上げながら「いまこの上空を飛んでいるんだ」と実感できるでしょう。また、打ち上げ当日のロケット映像やセレモニーの写真・動画データが後日共有されることもあります。その後、軌道上に留まった遺灰カプセルはプランによって決められた運命を辿ります。数年後に大気圏で燃え尽き流れ星となる場合もあれば、月面に静置され半永久的に月のお墓となる場合、あるいは深宇宙へ向けて太陽の周りを永遠に公転し続ける場合もあります。いずれの場合も、サービス提供会社からは定期的にレポートやメッセージが届き、遺族が宇宙にいる故人を感じ続けられる工夫がなされます。

以上が宇宙葬の基本的な流れです。通常の火葬・埋葬とは異なり、申し込みから完了まで長期間にわたるプロジェクトとなる点を踏まえ、スケジュールにゆとりを持って計画しましょう。また、宇宙葬は必ずしも従来の葬儀を完全に代替するものではありません。多くのご家庭では、火葬後すぐに宇宙葬の準備に入るというより、一旦手元にお骨を安置して四十九日などの法要を行い、その後改めて遺灰の一部を宇宙へ送る形をとっています。地上での儀式と宇宙での供養を両立させることで、親族や知人への周知・理解も得やすくなるでしょう。

技術的進化と将来の展望

ロケット

宇宙葬は近未来的なサービスですが、その裏には近年の宇宙開発技術の進化が大きく貢献しています。ここでは技術面から見た宇宙葬の進歩と、今後の展望について解説します。

低コスト打ち上げの実現

かつて宇宙に物を送るには莫大な費用がかかりましたが、民間ロケット企業の台頭により近年コストが大幅に下がりました。SpaceX社のように再使用型ロケットを運用する企業が増えたことで、人工衛星の相乗り打ち上げ(ライドシェア)が一般化し、小型の衛星やカプセルを安価に軌道投入できる時代になっています。宇宙葬サービス各社はこの機会を捉え、複数の遺灰カプセルを一度に打ち上げることで一人あたりの費用負担を抑えています。例えばスペースNTK社はSpaceXと直接契約を結び、ロケット上部に自社の遺灰搭載衛星を固定することで、打ち上げ後に残骸(スペースデブリ)を残さず安全にミッションを完遂しました。こうした技術的工夫により、宇宙空間への遺灰輸送が現実的かつ持続可能なビジネスとして成立しつつあります。

宇宙葬専用衛星の開発

従来の宇宙葬は、大型衛星の一部スペースに遺灰カプセルを載せたり、ロケットの放出カプセルに混載する形が中心でした。しかし2020年代に入り、宇宙葬専用の超小型衛星が登場しています。スペースNTK社の「MAGOKORO号」は世界初の宇宙葬専用人工衛星の一つであり、人の遺灰だけを収めて軌道投入されました。衛星内部には遺灰のほか、故人への手紙や折り鶴といったメモリアルグッズも収納でき、単なる容器以上の役割を果たしています。将来的には、より多くの遺灰を収納できる「宇宙墓地」衛星の構想も考えられています。一例として、ある企業は地球高軌道上に小型衛星群を配置し、各衛星に多数の遺灰カプセルを格納して宇宙空間の慰霊碑とする計画を発表しています。技術が進めば、地球からレーザーでその衛星を照らし出し、夜空に故人の名前の星を描き出す――そんな演出も夢ではありません。

月・惑星への葬送ミッション

前述の通り、月面散骨や他惑星への遺骨送達も少しずつ現実味を帯びています。2024年1月には、NASAの商業月面輸送計画に合わせてアメリカの民間月着陸船が打ち上げられ、セレスティス社の月面永眠フライト(Tranquility Flight)が実行されました。残念ながら着陸船は技術的トラブルで月着陸に失敗し、搭載されていた遺灰は地球大気圏に再突入して消滅しました。しかし、これは「月をお墓にする」第一歩の試みでもあり、今後も改良を重ねて再挑戦されるでしょう。日本でも2020年代後半には月面着陸機を利用した宇宙葬が実現する可能性があります。また火星や小惑星への探査が進めば、火星に遺灰を届けるといった壮大な計画も議論されるかもしれません。スペースNTK社の葛西代表も「将来的には月や火星で宇宙葬を行うことも夢ではない」と述べており、人類の活動範囲の拡大とともに宇宙葬の舞台も広がっていくと期待されています。

環境・安全面での技術配慮

宇宙空間への遺灰放出というと、「宇宙ゴミ(スペースデブリ)になるのでは?」と心配する声もあります。これに対し現在の宇宙葬サービスは、環境に配慮した設計を重視しています。例えばセレスティス社やスペースNTK社では、遺灰を乗せたカプセルや衛星を地球周回軌道の中でも比較的低い軌道に投入します。これらは数年以内に自然減速して大気圏に落下・焼失するため、永久的なデブリ(宇宙ゴミ)とはならない仕組みです。さらにスペースNTK社はロケットの上段ステージ自体に遺灰衛星を取り付け、ロケット残骸ごと軌道投入→監視下で再突入させるという工夫を取り入れました。このように軌道上に不要物を残さないよう配慮することで、将来にわたって持続可能なサービスとなるよう努めています。また、安全面では打ち上げ失敗時の対策も技術的課題です。2023年5月にはニューメキシコでの打ち上げ直後にロケットが爆発し、120名分の遺灰カプセルが砂漠に散乱する事故がありました。しかしこの時は耐久性の高いカプセルが功を奏し、全カプセルが無傷で回収され再打ち上げが計画されています。各社とも万一の失敗時には無料で次回打ち上げに振替える保証を設けており、利用者が安心して任せられる体制を整えています。

新たな発想と未来像

宇宙葬の将来像としては、従来の「遺灰を送る」枠を超えたアイデアも登場しています。一つは生前参加型の宇宙体験です。スペースNTK社が試みる宇宙生前葬は、存命中に自分の髪や血液をカプセルに入れて宇宙に送り、その体験を本人自身が味わえるサービスです。自ら「宇宙に行った」証を得ることで、その後の人生をより充実させたり、最期への心構えにするという新しい終活の形といえます。またデジタル技術との融合も見逃せません。メタバース(仮想空間)上にバーチャル霊園を作り、宇宙にいる故人とアバターを介して対話できるサービスも検討されています。将来的には故人の姿を3Dホログラム化し、生前の声や思考パターンをAIに学習させて、孫やひ孫の世代が宇宙の彼と対話する――そんなSFのような展望も語られています。さらに、日本の計画では「流れ星を人工的に演出する宇宙葬」も提案されています。ロケットから特定のタイミングで遺灰カプセルを放出し、決められた日時・場所で流星として降り注ぐよう制御する技術です。これが実現すれば、ご遺族は「○月○日午後8時に○○の空を見上げてください。その星が故人です」というように、確実に故人の流れ星を見届けることが可能になるでしょう。こうした革新的なアイデアはまだ構想段階ですが、宇宙葬が持つポテンシャルは単なる供養の枠を超え、宇宙と人類をつなぐ感動的な体験へと広がりつつあります。

宗教的・倫理的観点と社会的な評価

宇宙と流れ星

新しい葬送スタイルである宇宙葬に対しては、宗教や倫理の面からさまざまな意見があります。ここではいくつかの視点を整理します。

宗教的観点

伝統的な宗教儀礼に照らすと、宇宙葬は従来の埋葬や納骨の形式から外れるため議論を呼ぶことがあります。例えば日本の仏教では遺骨をお墓に納め先祖代々供養することが一般的で、「散骨」は1990年代頃からようやく社会に受け入れられてきた経緯があります。宇宙葬はその延長にある究極の散骨とも言えます。仏教界でも公式な禁止はありませんが、「遺骨を手元に置かないと供養にならないのでは」という懸念を示す声も一部にあります。一方で「人もまた宇宙(大自然)の一部」という仏教思想や、「塵(ちり)に帰る」(キリスト教の「土に帰る」に相当)という捉え方から、宇宙への散骨を肯定的に解釈する宗教者もいます。キリスト教・イスラム教では土葬の伝統が強いものの、現代では火葬・散骨を選ぶ信者も増えており、一概に宇宙葬がNGとは言えません。ただ、厳格な宗派では遺骨は地上に埋葬すべきとされる場合もありますので、宗教的背景を持つ家族は事前に宗教者へ相談するとよいでしょう。日本の神道や民間信仰では、「故人の魂は自然界のあらゆる所に宿る」という考えもあります。宇宙葬であっても故人の魂は常に我々と共にあると捉えれば、大きな抵抗はないかもしれません。

倫理・法的観点

宇宙葬に法的な問題はあるのでしょうか。国際宇宙法上は、「宇宙空間への物体の持ち込み」は各国の管理下にありますが、少量の焼骨を打ち上げること自体を禁ずる規定はありません。各サービス会社は所定の手続きを経て打ち上げ許可を取得しており、違法な行為ではないことを強調しています。また遺灰は無菌かつ無害な物質であり、宇宙や地球環境に汚染を与えることもほとんどありません。ただし宇宙環境保護の観点から、宇宙空間にゴミを増やさない配慮が求められています。前述の通り、各社は遺灰カプセルがデブリ化しないよう軌道や再突入計画を立てています。倫理面では、「故人の遺骨をビジネスとして宇宙に捨てるのはいかがなものか」という批判もゼロではありません。しかしこれについて宇宙葬の提供側は、「決して捨てるのではなく敬意を持って宇宙へ送り出す儀式である」と説明しています。実際、打ち上げ前には他の葬儀と同様に献花や黙祷などのセレモニーが行われ、厳粛に故人を送り出しています。その意味で、宇宙葬も伝統的葬儀と同じく故人を敬い見送る儀礼であり、単なる派手な演出ではないと理解することが重要です。

社会的な評価・反応

日本において宇宙葬はまだ新しく利用者も少ないですが、徐々にメディアで紹介され関心が高まっています。宇宙葬を選択した遺族からは「悲しみが和らぎ、前向きな気持ちになれた」という声も聞かれます。ある女性は「夫婦でいつか宇宙旅行に行きたい」という亡き妻の夢を叶えるために宇宙葬を選び、実際にフロリダでロケットの打ち上げを見届けた際「悲しみより感動が勝った」と語っています。このようにロケットの打ち上げを見守る体験自体が、残された人にとって特別な思い出になる点は宇宙葬ならではです。一方で、「親族に理解されるか不安」「お墓が残らないことに抵抗がある」という意見も根強くあります。日本では菩提寺やお墓の継承を重んじる文化があるため、宇宙葬を選ぶ際は親族への説明と同意が欠かせません。多くのケースで、宇宙葬にするのは遺骨の一部だけに留め、残りは手元供養や従来のお墓に納めるなど折衷案が取られています。これにより「形見のお骨は手元にあるので安心」「墓参りも従来通りできる」というバランスを保っているのです。

総じて、宇宙葬に対する社会の見方は少しずつ好意的になりつつあります。高齢化や墓不足が問題となる日本では、「従来のお墓にとらわれない新たな供養」として宇宙葬を終活の選択肢に入れる人も増えてきました。環境負荷が少なく場所も取らないことからサステナブルな供養法と評価する向きもあります。ただしまだ多数派ではないため、周囲の理解を得る工夫や、万一自分に何かあった時に備えエンディングノート等で意思表示をしておくことが望まれます。宇宙葬は未来志向で自由な発想の葬送スタイルゆえ、社会が受け入れ成熟していくには時間も必要ですが、その革新性は確実に注目を集め、今後のスタンダードの一つとなる可能性を秘めています。

よくある質問(Q&A)

最後に、宇宙葬について皆さんが抱きがちな疑問とその回答をQ&A形式でまとめます。

本当に誰でも宇宙葬を利用できますか?

はい、基本的には年齢や国籍を問わず誰でも利用可能です。生前に本人が契約する場合もあれば、亡くなった後にご遺族が手続きを行う場合もあります。日本から申し込む場合、国内窓口(銀河ステージ社やスペースNTK社など)を通じて手続きできるので英語ができなくても安心です。ただし火葬をして遺骨が手元にあることが前提となります(生前契約の場合は将来の火葬を想定)。土葬の方や遺体そのものを送りたいというのは現実的に困難です。また、遺灰をロケットで打ち上げることに法律上の制限はありませんが、ご遺族の同意は必ず必要です。身内の理解を得た上で利用しましょう。


どのくらいの遺灰を宇宙に送るのですか?全部送り出すのでしょうか?

多くの場合、遺灰の一部(ごく一部)をカプセルに入れて宇宙へ送ります。1g程度から数十グラムまでプランによって様々で、カプセルに収まる量のみ宇宙に行きます。残りの遺骨はご自宅やお墓に安置することになります。ただし、希望すれば全量を宇宙へ送ることも不可能ではありません。スペースNTK社などでは2kg(人骨全量相当)まで搭載できる大型カプセルも用意されています。ただし全量プランは費用も高額(数百万円以上)で、また手元に遺骨が残らなくなるため慎重に検討しましょう。一般的には「一部を宇宙へ、一部は手元に」が現実的であり、形見分けの一環として宇宙へ送り出す方が多いようです。


ロケットの打ち上げに失敗したら遺灰はどうなりますか?

万一打ち上げ失敗が起きた場合でも、遺灰が無駄になることは基本的にありません。宇宙葬サービス各社は契約上、ロケットが失敗した場合は再打ち上げを保証しています。実際、2023年に米国で打ち上げ直後にロケットが爆発した事故では、搭載されていた120名分の遺灰カプセルが全て無傷で回収され、次回の打ち直しに回されることになりました。各カプセルには耐火・耐衝撃性があり、多少の事故では中身が損なわれない設計です。また万一カプセルが破損・散逸してしまった場合でも、事前に遺灰の一部は手元に残しておくことが推奨されています。打ち上げは慎重に行われますが、100%安全とは言えないため、「どうしても心配」という方は同じ遺灰で二度申し込む(別々のロケットで飛ばす)といった方法でリスク分散するケースもあります。


宇宙に撒かれた遺灰は最終的にどうなるのでしょう?

遺灰の行方はプランによって異なります。地球周回軌道の場合、遺灰カプセルは軌道上を一定期間回った後、数年~数十年で高度が下がり大気圏に突入して燃え尽きます。これが「流れ星供養」と呼ばれる所以で、夜空に輝く流星となって故人が地上へ還るイメージです。月面供養では、カプセルを月面着陸船で運び、月の地表に安置します。そのカプセルは半永久的に月面に残り、月がお墓代わりになります。将来、人類が月に基地を作った際にそのカプセルを訪ねる…ということもあり得るでしょう。深宇宙プラン(太陽周回軌道など)の場合は、遺灰カプセルは地球・月圏を離れて宇宙空間を旅し続けます。例えば2024年に実施されたセレスティス社の「エンタープライズ・フライト」は、遺灰やDNAを搭載したカプセルを地球の重力圏から放ち、恒星間空間へ向け旅立たせる計画でした。この場合カプセルは半永久的に太陽系を周回し、人類文明の記念碑のような存在になると言われます。いずれのプランでも遺灰そのものが地上に戻ってくることは基本的にありませんので、手元に遺骨を残さない場合は証明書や映像が唯一の形見となります。そのため、多くの遺族は写真や思い出の品なども合わせて大切に保存しています。


家族や親族の理解が得られるか不安です…。

宇宙葬はまだ新しい供養方法のため、最初は戸惑うご家族もいるかもしれません。大切なのは事前によく話し合うことです。宇宙葬を希望する理由(故人の夢を叶えたい、前向きな見送りをしたい等)や、費用負担の考え方、手元に遺骨をどう残すかなど具体的に伝えましょう。最近ではテレビ番組や新聞で宇宙葬が紹介され、「そんな時代になったのか」と理解を示す方も増えています。どうしても抵抗がある親族には、一部分だけ宇宙へ送り残りはお墓に納めることや、宇宙葬後に記念碑プレートを地上に設置するなど代替案も提案できます。「お墓が無くなると寂しい」という声には、たとえば故人の名前を刻んだ植樹や、自宅にミニ慰霊碑を置くなどの工夫で補うことも可能です。宇宙葬を実際に経験したご遺族からは「周囲の反対もあったが、終わってみれば皆『すごいね』『良い送別になった』と納得してくれた」という声もあります。宇宙葬は決して奇抜なだけの供養ではなく、故人を想う気持ちは従来と同じであることを丁寧に説明すれば、きっと理解が深まるでしょう。


宇宙葬に興味がありますが、まず何から始めればいいですか?

まずは情報収集から始めましょう。宇宙葬を取り扱う企業(銀河ステージ、スペースNTKなど)の公式サイトには詳細なプラン説明やFAQが掲載されています。資料請求をするとパンフレットや見積りを送ってもらえるので、家族と一緒に目を通してみてください。次に、終活ノートやエンディングノートに自分の希望として宇宙葬を検討している旨を書いておきます。生前に契約する場合は複数社から話を聞き、サービス実績や保証内容を比較しましょう。ご家族にもその資料を見せながら、金銭面・精神面の負担が少なくなる方法を考えてみてください。宇宙葬はまだ日程に余裕がある計画が多いので、「○年後に打ち上げ予定」など長期戦となる点も念頭に置きます。思い立ったが吉日、ぜひ一度専門会社に問い合わせをしてみることをおすすめします。宇宙葬という選択肢を知るだけでも、これからの終活の視野がグッと広がるはずです。

まとめ

宇宙葬は、21世紀ならではの革新的で夢のある供養です。広大な宇宙に旅立つ故人の姿は、悲しみだけでなく未来への希望を私たちに与えてくれるでしょう。終活を考える上で、「自分は最後にどんな旅立ちをしたいか?」という問いに、宇宙という選択肢が加わったことは大きな変化です。ぜひ本記事を参考に、宇宙葬という新しい送り方についてご家族と話し合ってみてください。夜空を見上げるたびに故人を感じられる——そんなロマンあふれる弔いが、これからの時代に広がっていくかもしれません。

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