皆さんこんにちは、税理士の秋山です。
今日は、相続税の相談の際に頻繁に聞かれる疑問点5選、という皆さんが勘違いされがちな相続の大事な基礎の部分のお話をします。
私は相続税専門の税理士として、日々お客さんからたくさんの質問を受けているんですが、今日は、その中でも相続税の基本のキの部分、相続について右も左も分からないというお客さんから頻繁に受ける五つの質問と、その答えについてお話ししていきます。
是非皆さんも一緒に考えてみてください。
まず一つ目の質問は、亡くなった家族には大きな財産はなく、生命保険金だけを1200万円受け取っていたんですが、相続税はいくらかかりますか?
二つ目は、10年前に亡くなった父の家を、私名義に登記したんですが、相続税の申告はどうしたらいいんですか?
三つ目は、父が亡くなってざっと計算したら、2500万円の財産があるんですが、申告はどうすればいいですか?
四つ目は、親から100万円の贈与を受けたんですが、来年の所得税の確定申告で税金をいくら取られますか?
五つ目は、母の相続財産から兄が1千万円、私の口座に振り込んでくれたんですが、来年の所得税の確定申告は、どう手続きをすればいいでしょうか?
皆さん答えは分かりましたでしょうか。
この質問の答えが全て分かりましたら、お見事!
相続税の基本をしっかりと理解されておられます。
今日は、この質問に対する答えの解説と、相続税の基礎について、これを合わせてお話していきますので、答えがわかった方も、おさらいとしてぜひお付き合いください。
まず質問の答えに入る前にですね、相続税の基礎について簡単にお話しをします。
相続税には、3000万円+600万円×法定相続人の数、という基礎控除がありまして、ご家族が亡くなってその方が亡くなった時点で持っていた財産が、この基礎控除の額を越すか越さないか。
これが相続の申告が必要なのか、そうでないのか、そして相続税がかかるのか、かからないのかのポイントなんです。
詳しく説明しますと、もし亡くなった方の財産が、基礎控除の額を超えていれば、相続人の方は家族が亡くなられた日から10か月以内に、亡くなった方の住所地の税務署に相続税の申告書を提出しなければいけません。
ただしですね、亡くなった方の財産が、基礎控除を超えるからといって、全ての方に相続税がかかるということはございません。
なぜなら相続税には、税金を控除できる特例というものがありまして、その特例を使えば亡くなった方にもし、基礎控除を超える財産があったとしても、その財産額を大きく減額したり、財産の評価を下げることができますので、結果的に相続税がかからないというケースもあるからです。
その特例と言いますのは、配偶者の税額軽減とか、小規模宅地の特例、未成年者控除、障害者控除などがあります。
しかしこういった特例を使って、結果的に相続税がかからなくなったとしても、この場合にはきちんと特例を使います、という書類を相続税の申告書と一緒に、家族が亡くなった日から10ヶ月以内に税務署に提出する必要がありますので、この部分は注意が必要です。
ですので相続税がかからないのは、財産が基礎控除以下の場合が特例を使って相続税がゼロ円になると申告をした場合だけです。
その上で相続税の申告書の提出すらもいらないというのは、財産額が基礎控除以下の場合だけです。
もう一度確認ですが、特例を使った結果、亡くなった方の財産額が基礎控除以下になった場合には、 特例を使う旨を記載した申告は必ず必要ですから覚えておいてください。
さてではここから、先程の質問の答え合わせを行っていきたいと思います。
まず質問1、亡くなった家族には大きな財産はなく、生命保険金だけを1200万円受け取ったんですが、相続税はいくらかかりますか?という質問の答えですが、亡くなった方が契約者として保険料を支払っていた死亡保険金でしたら、財産がこの生命保険金だけだった場合、相続税はかかりません。
理由としては二つありまして、生命保険金というのはみなし相続財産であることです。
どういうことかと言いますと、生命保険金には相続人一人につき500万円の非課税枠が設けられているんです。
ですので、質問者さんを含め、仮に法定相続人の方が3人いれば、非課税枠が1500万円になりますから、この1200万円の生命保険金には、相続税はかかりません。
また、法定相続人の方が一人であった場合は700万円が課税対象になりますが、先ほどもお話した通り、相続税には3000万円+600万円×法定相続人の数、という基礎控除がありまして、ご家族が亡くなってその方が亡くなった時点で持っていた財産が、この基礎控除の額を越すか、越さないか、これが相続税の申告がいる、いらない、相続税がかかる、かからないのポイントです。
そもそも相続財産がこの生命保険金の1200万円だけでしたら、相続税はかからないということになります。
噛み砕いて言いますと、生命保険金額から500万円×法定相続人の数を引いて、残りがなければ相続税はかからない。
もし残ったとしても、残りの金額が基礎控除以下なら相続税はかからない、ということになります。
次に10年前に亡くなった父の家を、私名義に登記を変更したんですが、相続税の申告はどうしたらいいんでしょうか、という質問については、これも先ほどお話した通り、相続税の申告がいる、いらない、相続税がかかるか、かからないかのポイントというのは、あくまでも基礎控除の額を超えるかどうかなんです。
相続税がかかるのであれば、お父さんが亡くなった10年前にすでにかかっていますので、この場合は、単に相続登記が遅れていたというだけで、亡くなった方の不動産の名義を新しく自分の名義に変更したとしても、一切相続税はかかりません。
では三つめの質問ですが、父が亡くなって、ざっと計算したら2500万円ほどの財産があったんですが、申告はどうすればいいんですか?
という質問については、もうくどいくらいに話していますが、基礎控除は相続人が一人でも3600万円ありますから、今回の質問者の方のように、相続財産の総額が基礎控除以下でしたら、相続税の申告は必要ありません。
相続人が複数人いらっしゃるなら、仲良く遺産を分割するだけです。
どうでしょう、ここまで皆さん正解だったでしょうか。
これくらいは当たり前、という方もいらっしゃると思います。
では次の質問は、ちょっと難しかったと思うんですが、質問4と5の解答は少し似ていますので、まとめて解説したいと思います。
四つ目の質問の、親から100万円の贈与を受けたんですが、来年の所得税の確定申告で、税金をいくら取られますか、と五つ目の質問、母の相続財産から兄が1000万円私の口座に振り込んでくれたんですが、来年の所得税の確定申告は、どうすればいいですか?
という質問ですね。
まず所得税というのは、どこかで働いて貰ったお給料なんかにかかる税金ですから、親から贈与を受けたとか、親の相続財産の配分を受けたとか、こういった場合には所得税の申告は、まったく必要ございません。
例えば極端な例ですけど、贈与や相続で1億円貰ったとしても、所得税の確定申告をする必要はありません。
必要なのは、贈与税の申告か、相続税の申告です。
個別に補足しますと、まず贈与税には、一年間の間に受けた贈与の額が110万円以下でしたら税金がかからないという、基礎控除がありますので、今回の100万円の贈与については、なにも申告する必要はありません。
しかし、この質問者の方が一年間の間に、親からの100万円の贈与以外にも、祖父母から50万円の贈与を受けていた。
こういった場合には、基礎控除である110万円を超えますから、この場合には、贈与税の申告と納付が必要になります。
最後に5番目の質問ですが、亡くなったお母さんの財産が、基礎控除を超えているようであれば、きちんと相続税の申告をして、質問者の方が相続した財産額に応じた相続税を支払う必要がありますけど、基礎控除を超えていないようであれば、相続税の申告は必要ありません。
質問者の方は、相続財産の配分を受けただけですから、もちろん所得税の申告も必要ありません。
一旦兄弟の口座に入った相続財産を自分が受け取った場合、それは贈与にはならないんですか?
という質問を受けることがあるんですが、問題はありません。
なぜなら、亡くなった方の銀行預金口座がいくつもある場合、それらを一旦兄などの預金口座に一つにまとめて、そのうえで最終的に遺産分割協議書どおりに配分することがありますが、それは便宜上そのようにしただけですから問題はありませんし、そのような行為を行ったからといって贈与税は課税されません。
ただし、相続財産でもらったのが、貸駐車場であるとか貸アパートなんかですと、相続した後は賃料の収入があなたに入るわけですから、その賃料に対して不動産所得として、所得税の確定申告が必要になりますので、忘れないようにしてください。
今日は、相続税の相談の際に頻繁に聞かれる疑問点5選、という皆さんが勘違いされがちな相続の大事な基礎の部分のお話をしました。
このチャンネルでは、税務調査で調査官によく指摘されるポイント、相続贈与についての節税策、税金で損をしないための情報などを週に3回、火曜木曜土曜日に投稿しておりますので、是非チャンネル登録をしていただければ幸いです。
以上です、ありがとうございました。
秋山清成
[ad-zeirishi]