身内がなくなったら、葬儀を開いて終わりではありません。多くの場合、お墓をどうするかということを考えなくてはいけませんよね。
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そこで、お墓の基礎知識、お墓の費用・建てる時期などについて解説していきます。
目次
火葬後の遺骨の3つの選択肢
現在、日本では遺体の99%が火葬されているそうです。土葬は法律的に違法ではないのですが、条例その他での規制があり、現実的にはほとんど全ての日本人が火葬されていることになります。
お墓を考える上で、まずは火葬後の遺骨がどうなるのかを知っておきましょう。
骨を納骨する場所は「墓地」のみ
実は墓地として行政の許可を受けた区域以外に埋葬や埋蔵はできません。
第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
なので自宅の庭先に埋めると死体遺棄罪に該当する恐れがあります。
したがって、行政の許可を得ている墓地・霊園にのみ埋葬することができます。
埋める以外の選択肢「散骨」には違法性はない
火葬後の遺骨について、近年では「散骨」という選択もできるようになりました。
これは1991年に法務省が「葬送を目的とし節度を持って行う限り、死体遺棄には当たらない」とする見解を、厚生省が「墓埋法は散骨を規制するものではない」という見解を述べたことから、散骨が一般的に行われるようになりました。(参考:散骨の法律的課題)
単純に合法というわけではなく、いずれも非公式ながら行政機関から違法性はないとする見解が出されてたので、現在では徐々に散骨を選ぶ人も増えてきています。
散骨については、海洋散骨・宇宙葬のページで詳しく解説します。
遺骨を手元に置いておくのは?
最終的な遺骨の行き先は墓地か散骨かです。
では手元に置いておく期限というものはあるのでしょうか?
じつは墓埋法はあくまで手元に置いておくことに関しての規定はありません。墓埋法は基本的には『埋葬するならちゃんと墓地に埋めなさいよ』という法律なので、散骨や手元供養などは墓埋法では想定されていないのです。
したがって、散骨がそうであるように、遺骨を手元に置くことを罰する法律はありません。
最近では、一時的に自宅に保管する他、ミニ骨壷などの自宅供養や遺灰を収納また加工してアクセサリーにして身に付ける手元供養の形態も現れています。
詳しくは手元供養のページを御覧ください。
先祖代々のお墓に入るには
家制度のお墓の原則
そもそもお墓はどういうシステムなのでしょうか。本来のお墓は「家制度」の考えが原則ですが、最近では家族の考えが重視され、墓地・霊園側も柔軟に対応しているようです。
先祖のお墓に入れるのは「お墓の継承者とその配偶者」
まず、「○○家之墓」「○○家先祖代々之墓」などに入ることが出来るのは「家の継承者とその配偶者」だけです。
例えば自分の父親が亡くなり、父親の両親のお墓がある場合は、父親が家の継承者であればそのお墓に入ることは可能です。
家制度では普通は「長男」が継承者となるので、故人が長男であるかどうかというのがひとつのポイントになります。
しかし次男や三男であった場合、祖父母のお墓を継ぐのは長男ということになるので、兄弟でそのお墓に入れるのは長男のみです。
次男や三男は一般に分家して新たに墓を建てる必要がある
次男や三男が結婚して独立した場合、家を分かれて別の所帯を持った(分家初代)ということになるので新たにお墓を建てる必要があります。
もしも次男であっても長男が未婚で子供もいないという場合、長男がお墓を継いでしまうとその後を継ぐ人がおらずに無縁墓となってしまいます。
この場合は、次男がお墓の継承者になり、次男はそのお墓に入ることが出来ます(長男も次男の承諾を得て同じお墓に入ることになるでしょう)。
家制度はあくまでも原則。今のお墓の実情
家制度も廃止された今日では、お墓の考えもだいぶ柔軟になってきています。
家族で合意が取れれば入れる
現在ではお墓の継承者の同意があれば可能な事が多いです。そのお墓に本来入るはずだったお墓の継承者の家族に加え、お墓に入ろうとする人達の合意も取る必要があります。
墓地・霊園の使用規則に注意
基本的には継承者の合意さえあれば続柄は関係ありませんが、墓地や霊園によっては使用規則で「〜親等まで」と明確に定めている場合があるので、霊園に確認することが必要です。
入れるお墓がないときは
先祖代々のお墓、入れてくれそうな身内のお墓がない場合はどうすればいいのでしょうか。
お墓を新しく用意する
先祖のお墓がない場合は、墓地や霊園に新たにお墓を建てる必要があります。
個別の◯◯家の墓を用意するためには一般に200万円程度の費用がかかると言われています。
最近では永代供養墓などの合同墓や樹木葬などの新しいお墓の形態もあります。
墓地ではなく「納骨堂」に収める
遺骨は墓地に埋蔵する以外に、納骨堂に収蔵することも認められています。
この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。
かつては「一時的に遺骨を預かる場所」という意味合いが強い納骨堂でしたが、最近では「お墓のように永代に渡って供養する場」としての意味合いが強くなってきています。
ロッカー式や仏壇式・位牌式・墓石式など遺骨を収める方法によって様々な種類があり、最近ではICカードによって遺骨が参拝スペースまで運ばれてくるようなものもあります。
もちろん、合祀で永代供養という選択肢もあります。
散骨・手元供養をする
墓地や納骨堂ではなく、散骨や手元供養による方法もあります。詳しくは、海洋散骨・宇宙葬・手元供養などを御覧ください。
新しくお墓を用意するとき
「墓地」は買うことができない
よく「お墓を買う」という表現が使われますが、実はお墓はマンションやクルマのように「買う」ことが出来ません。
お寺や霊園が「墓地分譲」のような広告を出すことが多いので誤解している人が多いですが、正確には墓石は買うものですが、お墓を建てる土地は借りるものです。
墓地の「永代使用権」をお金を支払って得る
一般に言う「墓地を買う」という表現はすなわち、墓地の一区画を永代に渡って借りることができる権利をお金を払って得ることを指します。
永代に渡って借りることが出来る権利を「永代使用権」、そのために支払うお金を「永代使用料」といいます。永代使用権は民法で定める所有権ではないので、売買や賃貸借の対象にはなりません。なお、永代使用権は自分から子へ、子から孫へと代々受け継いでいくことができ、これは多くの墓地で必須条件となっています。つまり自分が亡くなった後も永代使用権を引き継ぐ人が後継者が必要なのです。
墓石を購入する
お寺や霊園等から墓所の永代使用権を得ることが出来たら、初めてそこに墓石を建てることが出来ます。
墓石は「石材店」で購入することになります。
通常、お寺や霊園には出入りしている石材店がいくつかありますので、その中から業者を選んで墓石を建ててもらうことになります。
逆に言えば、お寺に出入りしている石材店でないとお墓を建てられない場合もあります。お墓を建てる際には寺や霊園の管理者によく確認しておきましょう。
まとめ
火葬後の遺骨の行き先として、もっとも一般的な「お墓」。仕組みとしては寺や霊園から墓地として使用する権利を買い、墓石を購入して、設置して初めてお墓として成り立ちます。
代々の家のお墓がある場合は、現在では後継者(多くは長男)の同意、また関係する家族の同意があれば入れるところが多いです。
新たにお墓を用意する場合は、後継者のことも考える必要があります。
昔と違い今は同じ場所に定住する人も珍しく、管理できずに無縁墓となることも多いので、お墓を建てるという選択は難しいものになっていると思います。