墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬。近年では、「自然に還りたい」という思いや、費用を抑えられる点、環境への配慮といった理由から選ぶ人が増えています。
この記事では、そんな樹木葬のメリットとデメリットをわかりやすく整理し、ほかの埋葬方法との違いも交えながら詳しくご紹介します。
目次
樹木葬の基本とその特徴
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標として故人を供養する埋葬方法です。日本では比較的新しい供養の形として、自然回帰の思想や環境への配慮から選ばれることが増えています。
ここでは樹木葬の基本的な仕組みと、従来のお墓との違いについて詳しく見ていきましょう。
樹木葬の種類と仕組み
樹木葬には大きく分けて3つのタイプがあります。
- 里山型
自然の山林を活かし、もともとある木のそばに埋葬 - 公園型
整備された霊園内で、シンボルとなる木の周りに埋葬 - 庭園型
ガーデン風に整えられた区画で、それぞれの区画に木や花を植えて埋葬
どのタイプも、自然にやさしい方法で埋葬するのが特徴です。遺骨は土に還る素材の袋などに入れて埋葬し、時間をかけて自然と土に戻っていきます。その過程で、遺骨が木や花の栄養となり、自然と一体になることができます。
埋葬の形には、ひとりひとりの区画に埋葬する「個別型」と、シンボルツリーの根元などに複数の遺骨を一緒に埋葬する「合祀型」があり、多くの場合は永代供養がついています。
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従来の墓地との根本的な違い
従来のお墓は石でできた墓石が目印になりますが、樹木葬では生きた木がその代わりになります。また、一般的なお墓は「家族単位」で受け継がれるのが一般的ですが、樹木葬は個人や夫婦などで契約することが多いです。
墓石を建てる費用がかからず、永代供養料だけで済むため、経済的な負担も軽くなります。お参りのときも、線香やお花を供えるのではなく、樹木に手を合わせて故人を偲ぶという新しいスタイルです。
樹木葬が選ばれる社会的背景
最近は「自然に還りたい」という思いを持つ人が増えています。環境にやさしく、遺骨がいずれ土へと還る樹木葬はそうした願いを叶える埋葬方法として注目されています。
また現代社会では少子高齢化が進み、お墓を受け継ぐ人が少なくなってきています。さらに都市部に住む人が増えたことで、実家のお墓参りが難しくなるケースも多くなりました。こうした背景から、お墓を代々継ぐ必要がない樹木葬が、現代のライフスタイルに合った新しい選択肢として選ばれているのです。
なお、お墓を継ぐ人がおらず「墓じまい」を検討している場合は、「わたしたちの墓じまい
」のような離檀代行サービスを活用するとスムーズです。お寺との交渉から行政手続きまで一括で代行してもらえるので、手間と時間を大幅に省くことができます。
樹木葬は、生きた樹木をお墓の目印とする新しい供養の方法です。里山型、公園型、庭園型などいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。
従来のお墓とは、墓標の形や受け継ぎ方、費用などが大きく違い、今の時代に合った埋葬方法として広まっています。
樹木葬の5つのメリット
樹木葬には、従来のお墓にはないさまざまな良い点があります。費用の負担が軽いことや、自然環境にやさしいこと、継承者がいなくても安心なことなど、今の時代に合ったメリットがたくさんあります。
ここでは、樹木葬を選ぶことで得られる5つのメリットをご紹介します。
費用の負担が少ない
樹木葬の大きな魅力は、費用が抑えられることです。一般的なお墓は、墓石だけで100万円以上かかることもありますが、樹木葬では墓石が必要ないため、その分費用が安くなります。
多くの樹木葬は30万円から80万円ほどで、永代供養料も含まれている場合がほとんどです。また、年間の管理費がかからない霊園も多く、長い目で見ても経済的な負担が少なくてすみます。
継承者がいなくても安心
樹木葬は多くの場合、永代供養がついているので、お墓を受け継ぐ人がいなくても心配ありません。子どもがいない方や、家族に負担をかけたくない方にとっては大きな安心です。
霊園がしっかりと管理・供養してくれるため、無縁墓になる心配もなく、遠方に住む家族も頻繁にお墓参りに行く必要がありません。
自然環境にやさしい
樹木葬は環境に配慮した埋葬方法として注目されています。墓石を作るためのCO2排出もなく、土地をコンクリートで固めることもありません。
木が育つことで緑が増え、地域の自然環境を守ることにつながります。遺骨も土に還ることで、自然の一部となります。環境にやさしい供養を考えている方にぴったりです。
管理が簡単
樹木葬は、お墓の掃除や草取りなどの手間がありません。霊園側が樹木や周辺の手入れをしてくれるため、遺族の負担がとても軽くなります。お供え物の後片付けや、墓石の修理も必要ありません。
年を重ねてからの管理の心配がない点も、多くの方に選ばれている理由です。
宗教や宗派を問わず利用できる
多くの樹木葬は、宗教や宗派に関係なく利用できるのも特徴です。
従来のお墓では、お寺の檀家になる必要がありましたが、樹木葬にはそうした制約がありません。仏教、神道、キリスト教、無宗教など、さまざまな信仰を持つ方が一緒に利用できます。夫婦や家族で宗教が違っていても一緒に眠ることができるので、現代の多様な家族にも合った供養の形です。
なお、樹木葬は合同法要が一般的ですが、僧侶を手配すれば個別法要もできる場合が多いです。霊園によってルールが異なるため、事前に確認をしましょう。
個別法要で僧侶を手配する場合は、僧侶手配サービスを利用するのがおすすめです。たとえば株式会社よりそうの「お坊さん便」なら、全国どこでも定額料金で僧侶を派遣してもらえます。
樹木葬には費用の軽減や継承者問題の解決、環境へのやさしさ、管理の手軽さ、宗教を問わない自由さなど、今の時代に合ったたくさんのメリットがあります。従来のお墓で悩まれていた方にとって、新しい選択肢となっています。
知っておきたいデメリットと注意点
樹木葬にはたくさんの良い点がありますが、事前に知っておきたい注意点もあります。後悔のない選択をするためにも、こうしたポイントを家族とよく話し合っておくことが大切です。
ここでは、樹木葬を検討する際に気をつけておきたい注意点をご紹介します。
お参りの方法に制限がある場合がある
樹木葬は、従来のお墓参りとは違うマナーやルールがあることが多いです。たとえば、主に以下のような制限があります。
- 線香や火気の使用制限
山火事の防止のため火気が使えなかったり、決められた場所だけでしか使えなかったりすることがあります。 - お供え物の制限
生花のみOKで、食べ物や飲み物は禁止または持ち帰りが必要な場合が多いです。これは自然を守るための配慮です。 - 共同墓地でのお参り方法
個別の墓石がなく、シンボルツリーに手を合わせるため、故人の場所がはっきりしないと感じる方もいます。 - お参り時間の制限
開園時間が決まっていたり、季節によって入れる時間に制限があったりする場合があります。
従来のお墓参りと同じようにできないこともあるため、事前に家族で確認・理解しておくことが大切です。
一度埋葬した遺骨を取り出せないことが多い
樹木葬の多くは、一度埋葬した遺骨を後から取り出すことができません。特に合祀型の場合、他の方の遺骨と一緒に埋葬されるので、改葬（他のお墓に移すこと）はできません。個別型でも、契約によっては同じような制限があることがあります。
将来的にお墓を移す可能性がある場合は、納得できるまでよく確認してから決めるようにしましょう。
家族の理解を得るのが難しい場合も
樹木葬はまだ新しい供養方法なので、親族の理解を得るのが難しいこともあります。特に年配の方は「やっぱりお墓は石で」という考えが強いこともあり、反対されることもあります。
家族でよく話し合ったり、実際に霊園を見学してもらったりしながら、理解を深めていくことが大切です。
なお、こちらの記事では、樹木葬について「家族と納得して選択するためのヒント」も紹介しています。家族との話し合いで不安な方は参考にしてみてください。
樹木葬とは？お墓の代わりに選ばれる理由と種類・費用まで解説
立地や環境の変化のリスク
樹木葬は自然の木を使うため、木が病気や災害で枯れてしまうリスクがあります。また、霊園の管理が将来もきちんと続くかどうか、周辺環境が大きく変わらないかも心配な点です。
契約時には良い環境でも、何年も先には変わってしまう可能性もあるため、霊園の管理体制や将来の計画についても確認しておくと安心です。
このように、樹木葬にはお参りの仕方や遺骨の扱い、家族の理解、環境変化など、いくつか気をつける点があります。これらはデメリットというより、樹木葬ならではの特徴といえます。こうしたポイントを十分に考えたうえで、自分や家族に合った供養方法を選ぶことが大切です。
他の埋葬方法との比較
樹木葬を考えるときは、他の埋葬方法との違いを知っておくことも大切です。一般墓、納骨堂、散骨、手元供養など、それぞれに特徴があります。
ここでは、主な埋葬方法と樹木葬の違いを簡単にまとめます。
一般墓との比較
一般墓は昔からある伝統的なお墓です。家族で代々受け継いでいくことが多く、墓石を建てるための費用は200万円以上かかる場合もあります。また、毎年の管理費も必要です。個別のお墓があるので、お参りのしやすさや「ちゃんと供養できている」という安心感があります。
一方の樹木葬は費用を抑えられ、継承者がいなくても大丈夫です。ただし個別の墓標がない場合が多く、お参りの方法にも少し違いがあります。
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納骨堂との比較
納骨堂は屋内に遺骨を納める施設です。天候に左右されずお参りでき、駅近などアクセスが良い立地も多いため、ご高齢の方にも便利です。費用は50万円～150万円程度と一般墓より安めです。
納骨堂は建物の中なので自然を感じることはできませんが、お参りのしやすさや管理の手軽さでは優れています。樹木葬と同じく、継承者がいなくても利用できるプランが多いのも特徴です。
散骨・手元供養との比較
散骨は遺骨を細かくして海や山などに撒く方法です。費用は5万円～30万円ほどと最も安価ですが、お参りできる場所がなくなってしまいます。手元供養は遺骨の一部を自宅で保管し、いつも故人を身近に感じられますが、将来的に供養する人がいなくなった後のことを考える必要があります。
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樹木葬は、自然と一体になりながらもお参りできる場所があるという点で、これらの中間的な存在といえます。
埋葬方法の比較と選択ポイント
このように、各埋葬方法にはそれぞれ特徴や違いがあります。
- 一般墓は伝統的で満足感が高い分、費用や継承の問題がある
- 納骨堂は便利だが、自然を感じることはできない
- 散骨は自然に還れる反面、お参りできる場所がない
- 手元供養は個人を身近に感じられるが、将来の管理が課題
樹木葬は、これらの良いところをバランスよく取り入れた新しい供養の形として、注目されています。自分や家族に合った方法を選ぶための参考にしてみてください。
樹木葬を選ぶ際のポイント
樹木葬を選ぶ際には、いくつか大切なポイントがあります。霊園選びや契約内容の確認、家族との話し合いなど、事前にしっかり準備をすることで、納得のいく選択ができます。
ここでは、後悔しないための具体的なチェックポイントをご紹介します。
霊園選びで気をつけたいこと
まずは、霊園の場所とアクセスの良さを確認しましょう。年を重ねても無理なくお参りできるかが大切です。また、霊園の管理がしっかりしているか、運営している団体が信頼できるかもチェックポイントです。宗教法人や公営の霊園は安心感がありますが、民間霊園の場合は経営状況も確認しておくと安心です。
さらに、どんな樹木が使われているかや、今後の環境保全の取り組みについても質問してみましょう。実際に現地を見学して、雰囲気を感じることもおすすめです
契約前に確認しておきたいこと
契約する前には、費用の詳細をしっかり確認しましょう。永代供養料に含まれるサービスや、追加費用がかからないかどうかも大事なポイントです。また、何人まで埋葬できるか、遺骨はどのように納められるのか、合祀までの期間なども確認しておきましょう。
お参りのルールでは、供花や線香が可能か、開園時間なども事前に調べておくと安心です。契約書はよく読み、わからない点は納得できるまで質問しましょう。
家族との話し合いのすすめ方
樹木葬を選ぶときは、家族の理解と同意がとても大切です。まずは、なぜ樹木葬を選びたいのか、自分の気持ちを素直に伝えましょう。費用や管理の負担が少ないことなど、現実的な理由も合わせて説明すると納得してもらいやすくなります。
できれば家族と一緒に霊園を見学し、実際の様子を共有してください。もし反対意見があれば、その理由をよく聞いて、みんなが納得できる方法を一緒に考えましょう。じっくり時間をかけて話し合うことが大切です。
まとめ
樹木葬は、自然に還るという考え方を大切にした、現代に合った新しい供養のかたちです。費用の負担が少なく、継承者の問題も解決できる一方で、お参りの方法や家族の理解など注意したい点もあります。
大切なのは、それぞれの特徴をしっかり理解したうえで、自分や家族にとって一番良い選択をすることです。将来のために、じっくり検討してみてください。
